もう若くない女の焦燥と性を描いた「情事」ですばる文学賞受賞、38歳でデビュー。
瞬く間に流行作家となり、52歳で逝去するまでの15年間に100冊を超える本を書いた森瑤子。
その華やかなライフスタイルで世の女性の憧れとなった、グラマラス作家の評伝。
芸大でヴァイオリンを学び、ハンサムなイギリス人の夫と美しい3人の娘を持ち、
六本木と三崎、そして軽井沢に居を構え、島やヨットを買い、パーティや旅行に明け暮れる。
英語を流暢に操り、性愛や夫婦関係、母娘の葛藤についても赤裸々に語る。
若い頃、彼女の新刊が出る傍から読みましたとも。
特に息子たちが小さくて家から出られなかった頃に、夢中で読んだ気がします。
彼女の小説は軽くてスタイリッシュで、育児に追われて閉塞感いっぱいの身には夢のようであり、また切れ端の時間に読むのに丁度よかったのです。
「自分に収入がないという状態は私を鬱屈させたが、何よりもまいったのは、社会から隔離され、置き去りにされ、忘れられてしまったように感じたことだった。不安や不満で鬱々とした毎日。それが影響して夫婦の関係も最悪だった。私はまず、強烈に、自分がここにいると世界に向かって叫びたかった」(プライベート・タイム)
という独白に痛く共感し、またその小説に描かれる洗練された生活、スノビッシュな、そして機知に富んだ会話に憧れずにはいられませんでした。
今回、彼女の周りの多くの人々の証言を丹念に取られており、森瑤子の著書からだけでは分からなかった、彼女の別の姿が浮かび上がって来ました。
驚いたことは沢山ありますが、その一つ。
彼女が学生時代に心酔していた同級生の林瑤子。
「私の親友だった。彼女のヴァイオリン演奏の清潔な甘美さと、誠実な正確さを愛してやまなかった。森瑤子というペンネームは彼女の名前からもらったのである」
とまで書いているのに、林氏にとって森は親友ではなかったらしい。
夫アイヴァンや森の母親との軋轢についても、かなりの脚色が入っていたらしいこと。
アイヴァンが頑固で保守的なイギリス人であることは間違いなく真実のようですが
新婚一日目からネクタイをして朝食の卓についたという有名な話は、脚色らしい。
まあ「小説とは根も葉もある嘘である」という佐藤春夫の言葉を何度も引用していた彼女ですから。
次女マリアの言。
「ポルシェを買ったのも、島を買ったのも(夫ではなく)自分が欲しかったから。母の友人に『あなたのママはね、林真理子さんにだけは負けたくなくて島を買ったのよ』と言われたことがあった」
三女ナオミの言。
「(インターナショナルスクールに通っている頃)ママのお弁当は白いご飯にお醤油がかかって海苔一枚のってるだけ」
あれだけ美味しそうにイギリス式家庭料理を作る様を描写し、料理本まで出しているというのに。
森瑤子の最初の婚約者であり、彼女がアイヴァンと結婚してからも、誰よりも理解してくれる男友達としてエッセイなどに度々登場する亀海氏について、北方謙三は
「正直な話、その時に思ったのは、亀海さんは森さんが面倒くさかったんだろうなということ。面倒くさいというか、2人きりになりたくないというのがあって、俺を森さんとの緩衝材にしようとしてるんじゃないかってことです」と。
これも、とても意外でした。
アイヴァンが幼少期に施設にいたことや、カナダ人の恋人のことなど、ここまで書いちゃっていいの?ということも多々。
しかし後味が悪くないのは、著者の森瑤子に対する敬愛の気持ちが根底にあるからなのでしょう。
あのバブルの時代に、最も売れた作家の一人と言われる森瑤子。
彼女が、実は脆いガラスのようなその性格を、ブランドの服や宝石やポルシェやヨットで武装していたのだろうということは、容易に想像がつくことではありました。
そしてあの大きな帽子で。
「森瑤子の帽子」
これも、とても意外でした。
アイヴァンが幼少期に施設にいたことや、カナダ人の恋人のことなど、ここまで書いちゃっていいの?ということも多々。
しかし後味が悪くないのは、著者の森瑤子に対する敬愛の気持ちが根底にあるからなのでしょう。
あのバブルの時代に、最も売れた作家の一人と言われる森瑤子。
彼女が、実は脆いガラスのようなその性格を、ブランドの服や宝石やポルシェやヨットで武装していたのだろうということは、容易に想像がつくことではありました。
そしてあの大きな帽子で。
「森瑤子の帽子」
とても興味深く拝読しました。
私の中の森瑤子という作家さんの
イメージを壊したくない・・・という気持ちからか
これまで避けていた彼女の実態?を
「著者の森瑤子に対する敬愛の気持ちが根底にある」という
一文で、とても読んでみたいと思いました。
私自身、屈折した少女時代を過ごしたので
彼女の中に同じ様な匂いを感じて
共感した部分があったのでは、と思うのですが
出来ればそこは蓋をしておきたい・・・って
何だか言ってること、支離滅裂ですね?笑
ともかく、早速購入しました。
届くのが楽しみです。
私はフルタイムで働きながら、
趣味でハンドメイド作品も販売しているので
なかなか時間を作るのが難しいのですが
zooeyさんの記事を楽しみに拝読していきたいと
思っております。
これからどうぞよろしくお願いいたします。
少女時代は私も結構屈折していましたよ。
というか、若い頃はある程度、誰でも屈折しているのじゃないかしら?
少なくとも、本が好きなような人間は。
なので、おっしゃること少し分かるような気がします。
私は自宅でトールペイント教室などしている他は遊んでいる、ヒマな専業主婦です。
コロナで思うように出かけられない今、話が合う人と知り合えることは嬉しいことです。
私もポンママさんのところの記事、色々拝見しました。
これからのお付き合いを楽しみにしています。
どうぞよろしくお願いいたします。