以前公開されて見損なっていた、ミニシアター系映画。
監督アモール・グプテ、2011年インド映画。
ムンバイに住むスタンリーは元気で利発な少年だが、学校にお弁当を持って来ない。
お母さんが今デリーに行っていないからなどと言って
昼食の時間になると、水を飲んだり外に出たりしてごまかしている。
それを知った級友たちが、自分たちの弁当を分け与えるのだが
意地悪な教師が「弁当を持ってこないなら学校に来るな」と怒鳴りつける。
そんな中、踊りが上手なスタンリーは学校代表としてダンス大会に出ることになって…
舞台となる"holly family shool"というのは、英語を日常的に使ったり、
クリスマスを祝ったりするので、おそらくインドでは限られた人が行く私立校か。
何故スタンリーの顔に痣があるのか、何故お弁当を持って来られないのか、
謎が明かされないままに話は進みます。
意地悪教師が退散し、ダンス大会での活躍でスタンリーが拍手喝采を浴びてハッピーエンドかと思いきや、
その後ラスト10分で話は急展開します。
インド映画に興味を持つ人がそうそういるとも思えないのでネタバレしますが
スタンリーは事故で親を亡くし、強欲な叔父さんに引き取られて
飲食店で下働きさせられていたのです。
働きが悪いといって殴られ、食べ物もろくに与えられず、台所の片隅で眠る日々。
でも彼はそのことを誰にも言わず、また学校に通い続ける。
そしてインドでの就労児童は五千万人以上というエンドロールが。
スタンリーはどうして本当のことを友だちや先生に言わないのか。
あんなに顔に痣があったり、毎日の弁当を持って来られないのに
どうして教師たちは気に留めたり、スタンリーの家を訪ねたりはしないのか。
色々と謎は残りますが、インドの旅行で気がついたことが少々あります。
現地人のガイド、アリ氏と1週間近く行動を共にしたので(しかも客は我々夫婦だけ)
私はインドに関する様々なことを根掘り葉掘り訪ね、
また彼は根気よく答えてくれたのですが…
自国のマイナス面や恥部に関することについては
どうも彼はあまり話したがらないのです。
それが段々と分かって、私もそうしたことについては訊きにくくなったのでした。
それはたまたま彼の気質であったのかもしれませんが
もしかしたら、インド人全体の気質に繋がるものもあるのかもしれない。
ガイド氏だけではなく、飛行機で隣に座ったインド人や
ホテルで話したインド人も、みんなそんな感じだったのです。
そういう人には失礼なのであまり訊けないことでも
ガイド氏にはいいだろうと様々に訊いたのですが、やはり嫌がられました。
この映画の冒頭で、"special thanks~"のクレジットが延々と続いて驚きました。
〇〇学校の校長、理事長、関係者、保護者などへの謝辞が数分も続くのです。
もしかしたら、この作品を作ったことで各方面で色々な抗議や反対が起きて
それに対する気遣いであったのかもしれない。
スタンリーが本当のことを言いたがらないのも、
子どもなりの彼の矜持、インド人としての気質であったのかもしれないとも
ちらりと思ったのでした。
「スタンリーのお弁当箱」 http://stanley-cinema.com/