藤沢周平の短編小説「花のあと」が映画化されて見てきました。
と言っても、原作を読んだ訳ではないのですが、過去の藤沢周平の作品が映画化され「たそがれ清兵衛」「隠し剣、鬼の爪」「蝉しぐれ」「武士の一分」を見て、それぞれの魅力を感じてきましたので、この作品も期待をもって見に出かけました。
残念ながら昨年に映画化された「山桜」を見逃しましたので、機会があれば見たいと思っています。
どの作品も映像が奇麗で、江戸時代の山里が見事に表されているのも、このシリーズの魅力なのではないでしょうか?
特に、四季を通じての自然の美しさは、心がなごみます。
「花のあと」も見事な桜の季節から、雪解け水が流れる小川の季節を過ぎ、蝉の季節から紅葉の季節、真っ白になった山と雪をかぶった傘の季節が過ぎ、そして再び、咲き誇った桜の季節が巡って、一つの物語が完結します。
元をただせば、この物語は、江戸時代という家父長制度のしきたりの中で、内に秘めた想いを精一杯遂げようとする女性を描いた恋物語です。
でも、単なる恋愛映画で終わらず、藤沢周平の「慎ましくも正しく生きる」というテーマがあり、終わった時になにかホッとしました。
東北の小藩、組頭の一人娘以登は、剣術の達人で、花見の席で、下級武士ながらこれまた若い剣術の達人と出会います。 彼の名は江口孫四郎。
映画ではそのまま別れるのですが、会いたいがために、父の許しを得て、一度だけ竹刀を交えます。
許婚の片桐才助(甲本雅裕)と・・・ 江口孫四郎(宮尾俊太郎)と試合を終えて
以登には、片桐才助という風采のあがらない許婚がいました。
この人物の登場で、この映画がグッと引き締まり、物語として進展がありました。
孫四郎は、藩の重鎮藤井勘解由から謀れ、自害してしまいますが、その死に不審をもった以登は、その重鎮と果たし合いをし、想いを果たすのですが、その以登のやるせなさ、切なさを暖かく見守り、手を差し伸べたのが、片桐才助でした。
再び桜の舞う季節を迎え、一年前、孫四郎と出会った桜のそばで、才助の数歩あとを歩く以登にも穏やかな微笑みが浮かんでいました。
以登役の北川景子の演技力はともかく、剣術の方は、かなり稽古をした様子が伺われます。
江口孫四郎役の宮尾俊太郎は、最近売り出し中のバレリーナです。
何よりも、この映画を盛り上げるのは、脇役陣で、才助役の甲本雅裕の風采は上がらないがなにか憎めない人物を好演していました。
藤井勘解由役の市川亀治郎は、さすが貫禄がありました。
なお、藤沢周平作品の次回映画化は「必死剣鳥刺し」で主演豊川悦司です。
7月10日公演されると、予告編をしていました。