【森の魚工場時代へ】
一次産業の高次化、言い換えれば、工業化はもはや避けられない。それは地球環境からの反作用
として、または慢性的な資源枯渇・食糧不足という側面からやって来る。前者に対しては「レジ
リエンス」(強靱性)強化という国内法整備の急務を迫る。あるいは、急速な少子高齢化や農林
水産物の国際競争に対する「レジリエンス」という二側面からやってくる。そして、それを実現
する条件、特に技術的側面からもかなり整備されてきている。具体的にいうと、デジタル革命に
象徴され科学技術工学の飛躍的な進歩により、各産業における土地不動産の空間的な価値は急速
に逓減し、その逆に土地不動産に付加された情報価値(=付加価値)のみが意味をなす時代にな
り、かっての不動産バブルの例や直近のニュースでは南鳥島の超高濃度レアアースの分布発見に
象徴される時代となっている。端的に言えば、一定の面積に収穫する自動車は年間当たりの投入
リソース量に比例するが稲作であれば年間1回、多くて2回の収穫しかなく、それも自然災害や
天候不順のリスクが普遍的に存在するというわけだ。農産物で言えば、農協が「レジリエンス」
を高めるための農地を買収・賃貸集約する民営会社を設立し加速的に進め、植物工場あるいは穀
物工場、果実工場の初期投資例えば長期減価償却期間下での低金利・無金利融資支援などの法整
備を行なえば早期に実現が可能だ。林業も『その後のへーリオス 』の‘オールバイオマスシステ
ム’の延長線上で考えればよいだろう。そこで、今夜は水産業の森のなかの魚工場について考え
てみた。
好適環境水とは、魚類の代謝に最低限必要な物質を含んだ水。魚の浸透圧調整に深く関わるナト
リウムやカリウムを含む一部の電解質を特定(ナトリウム・カルシウム・カリウムの三種類)。
わずかな濃度の電解質を真水に加えるだけで魚類の代謝に最低限必要な物質を含む水「好適環境
水」を岡山理科大学山本俊政准教授らは開発。その動機とは、彼らの研究室が海から35キロも離
れていて、ディズニー映画「ファインディング・ニモ」で一躍脚光を浴びたカクレクマノミの大
量繁殖に2005年、日本で初めて成功した際、汚れた海水を浄化・再生などは常に悩みの種で、あ
る学生が「海産のプランクトンを純淡水で育てたい」と大まじめな顔で相談に来たのがはじまり。
できないことを証明する体験をしてもらおうとゴーサインを出すが、その一週間後、彼が笑顔で
「できました」と報告に来る。その後の実験で再現できなかった。原因は海水タンクの洗い方が
不完全で、ごく微量の海水が残っていたためと判明。この時に「プランクトンは超低濃度の水で
も、ある一定のミネラルが支配していれば生きられるのでは」と気づき、「海水不足で苦労して
いる専門学校での魚類の飼育にも応用できるかもしれない」とひらめいたという。天然海水は60
種以上の成分を含み、人工海水にも20種以上の成分が必要とされるが、他社との差別化を図るた
め成分を増やすのではなく、必要成分は強化し、不必要成分は徹底して減らし、濃度や組成間の
モル比をダイナミックに変え実験を続ける。海水魚を飼育する上で必須とされる主要成分さえも
削った「究極の好適環境水」へと進化を遂げる。従来の海水の養殖より、好適環境水で飼育した
魚の方が代謝が良く、短期間で成長する。さらに、海での養殖には魚病や寄生虫に対応した抗生
物質やワクチンが欠かせないが、好適環境水ではこうしたリスクが皆無で抗菌剤や薬の類は一切
使わない養殖を実現しエサが100%管理できる。好適環境水は人工海水に比べて60分の1の低コス
トで済むという効果がある。
2012年12月8日には、岡山理科大生命動物教育センタ(岡山市北区)で好適環境水で養殖されたク
ロマグロの解体作業が報道関係者らに公開。試食会も行われ、専門業者は「養殖独特の臭みもな
く、脂が乗り、赤身の発色もいい」と太鼓判を押す。試行を重ね、これまでトラフグ、ヒラメ、
シマアジが出荷された。解体されたクロマグロは一昨年8月、愛媛県沖で捕獲された1匹。 当初
30センチ程度だったが、同センターの140トンの大型水槽(直径8メートル、深さ3メート
ル)で養殖され、 体長87センチ、重さ13.5キロまで育った。総合水産物元卸「岡山県水」
の長船宗員社長は 「岡山では赤身の魚を好む消費者が多い。十分、商品価値がある」と話す。
山本准教授は「内陸部での養殖産業の創出というイノベーションにつながる研究。今後、マグロ
の行動を24時間体制で観察し、夢の魚工場を完成させたい」と手応えを感じていると話している。
前もってデータを掴んでおけば、食餌による好適環境水の汚染状態をコントロールできるので、
高価な測定装置は不要となる。汚染物の除去は独自に個別開発するしかなく課題となる。将来は
ヒラメは青森、トラフグは秋田、シマアジは島根、滋賀県は?イワシがいいね。アンチョビ、ド
コサヘキサンとエイコサペンタエンの抽出、肥料、大形魚の食餌とレパートリーが広い。何より
もイワシの刺身は安くて上手い。それにしてもイワシの物流専用の空港はイワシだけでなく欲し
いね。
【新たな飛躍に向けて-新自由主義からデジタル・ケイジアンへの道】
1.タブーと経路依存性
2.複雑系と経路依存性
3.複雑系と計量経済学
4.ケインズ経済学の現在化
5.新自由主義からデジタル・ケイジアン
【ケインズ経済学の現在化】
- 政策に影響を与える思想の力
- 21世紀最初のグローバル経済危機を引き起こした思想と政策
- 将来を「知る」ために過去のデータに頼ること-資本主義システムにっいての古典派の考え
- 1ペニーの支出は1ペニーの所得になる-資本主義経済と貨幣の役割に関するケインズの考え
- 国債とインフレーションについての真実
- 経済回復のあとに改革を
- 国際貿易の改革
- 国際通貨の改革
- ケインズも誇りに思うような文明化された経済社会の実現に向けて
- ジョン・メイナード・ケインズー簡潔な伝記
- なぜケインズの考えがアメリカの大学で教えられることがなかったのか
【将来を「知る」ために過去のデータに頼ること-資本主義システム】
今回は、ポール・デヴィッドソンのケインズの考え方と古典派理論の相違について考察していく。
今日の古典派の効率的市場モデルはすべて、将来の成り行きは知られているというこの想定
を、何らかの形で基礎においている。古典派理論の主張するところによれば、将来の結果の
価値を知るという問題を解決済みと想定しているので、唯一重要な経済問題は、今日の経済
的意思決定が、将来生じたときに最も高い評価が得られるような結果を生み出せる資源配分
を確実にもたらすようにすることとなる。もしわれわれが、私利をはかる意思決定者は将来
の成り行きについて確実に「知っている」という想定を受け入れるならば、自由で競争的な
市場でなされるかれらの意思決定は、可能な限り最善の、資源配分をもたらすことになるで
あろう。経済学者たちは、効率的市場の働きに関する理論モデルを作り出すことに多くの歳
月を費やしてきた。それぞれのモデルは、今日の経済的意思決定者が将来の結果をどのよう
にして知ることになるのかを記述するための少しばかり異なったメカニズムを持っていると
いえるかもしれない。例えば、アロー=デブリューの一般均衡モデル(ケネス・アロー(Ke-
nneth Arrow)とジェラール・デブリュー(Gerard Debreu)は、ともにノーベル賞受賞者で
ある)は、ワルラスの一般均衡モデルといわれた19世紀の効率的市場モデルを精緻化したも
のである。これらの一般均衡分析モデルは,経済諮問委員会や連邦準備制度のような最も権
威のある機関で用いられている、現代の複雑・精緻で数学とコンピューターを駆使した経済
モデルの基礎となっている。
この一般均衡分析が想定していることは、将来の各時点で引き渡される予定のすべての財お
よびサーヴィスを売買することを市場参加者に可能にするような市場が、今日存在するとい
うことである。したがって、検討の対象となっている期首に、すべての市場参加者は、今日
の引き渡しのみならず期末に至るまでの将来の各時点での引き渡し予定のすべての財・サー
ビースおよび金融資産の売買取引についての意思決定をすることができると想定されている。
この複雑な数学的モデルは、極端に概念化を椎し進めた結果、次のようなことを意味するよ
うになっている。すなわち、今日のすべての意思決定者は、自分がどういう財やサーヴィス
を、今日、明日、そして自分の生涯の残りの期間のあらゆる時点で、市場において需要ある
いは供給しようとしているかを知っているばかりでなく、自分の孫やひ孫やすべての将来の
後継者が将来への数十年や数世紀にわたってなにを売買したいと考えているのかを、「知っ
ている」ということである。したがって、かれらはまた、これらの将来の世代のために、将
来のすべての時点での販売あるいは購入の契約を今日締結することであろう。
ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』
ごく平凡な勤労庶民感覚にとってこのような前提は“希望的観測”であることは百も承知で、ポ
ール・デヴィッドソンは、この古典派理論モデルが高度に数学化され抽象化されているため、古
典派の理論家たちは、その基礎をなしている信じがたいような公理、すなわち今日の意思決定者
が世の終末までの将来の成り行きについて知っているという公理を忘れさせることに成功してい
ると表現し、今日の主流派の古典派経済学者の多くは、世の終末までのあらゆる将来の時点向け
のすべての考えられる財やサービスのための1組の完全な市場が存在するという、アロー=デブ
リューの想定は、不可能であることを承知している。にもかかわらず、かれらは、現実の世界に
おいて、将来のすべての時点に対応する1組の完全な市場など存在するはずがないと認めつつも、
依然として自由市場の効率性を信じているのであるとし、自分たちの効率的市場の結論を守るた
めに、これらの経済学者たちは代わりに、今日の市場参加者は、今日なされた意思決定が将来に
もたらすと考えられるすべての結果に関して「合理的期待」をもっていると想定し、ともかくも
今日の意思決定者は、すべての考えられる将来の結果を支配する確率に関する統計的に信頼でき
る情報を所有しているということを前提としていると指摘し、統計学における外延の危うさを指
摘する。
もし市場が効率的でわずらわしい恒久的な政府の規制や介入によって抑制されていないなら
ば、政府の施策によって引き起こされたどのような外的ショックに対するこれら効率的市場
の参加者の反応も、ちょうど重力の法則が小石が当たるという外的ショックの後振り子の振
動を元の状態に復元させるように、経済をあらかじめ決定された効率的経路に復帰させるで
あろう。言い換えれば、政府の施策が経済システムにショックを与えるときはいつでも、自
由市場への合理的参加者による行動が、(メロン財務長官の格調高い言葉遣いを用いれば)
「この体制から不健全なものを」一掃することによって、ある期間(長期間)の経過後、シ
ステムをあらかじめ決定された効率的経路に引き戻すであろう。 したがって、例えば、政
府が、すべての労働者に少なくとも最低限の賃金を保証する法律を制定し、たとえ失業労働
者が飢え死にするくらいなら最低限より低い賃金ででも働きたいと思ったとしても法定最低
賃金以下での雇用を認めないとき、民間部門における失業を創り出していることになるとは
しばしば主張されるところである。同様に、もし政府が労働組合の結成を保護し奨励する法
律を承認するならば、その効果は、賃金をあまりにも高い水準にまで押し上げるので、最終
的に利潤機会が失われ労働者の失業が確実に増えるであろうといわれる。したがって、古典
派理論によれば、政府ではなく市場こそが、どのような賃金水準が労働者の受け取るべき最
低額であるかを決めるべきであるとされる。その結果、論理の一貫性を尊ぶのならば、政府
は企業の最高幹部の報酬に制約を加えるべきではなく、経営者の価値の決定を市場に任せる
べきであると主張する必要があるであろう。
ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』
信仰という言葉は、これら現代の有能な評論家たちによって、今日の[金融危機]破局をもたら
した、多次元のピラミッド・ゲームの核心に位置する数学にふさわしい言葉であると信じられて
いる。盲目的信仰は、数学的モデルにおける質の堕落やリスク概念の濫用と相挨って、貪欲と無
責任がその破壊的なやり方を存分に発揮するのを可能にした。第3番目の毒物混合体を形作って
いる。・・・数学は最初、技術にコンピューターの使用を可能にした。それから、制御が利かない
ほどの投機を正当化するもっともらしい定理を提供し、最後に、価値とリスクと質に関するモデ
ルによって、架空の産物を数量的に明確化するやり方を考案した。それによって、数学は、著名
な投資家のウオーレン・バフェット(Warren Buffet)が「大量破壊兵器」と呼ぶ、比類なく毒性
のあるものとなった。とのオックスフォードの数学者であるジェローム・ラヴィッツ(Jerome
Ravitz)が、『オックスフォード・マガジン』誌2008年春季号に掲載した「金融危機にかかわっ
た数学に対する信仰と理性」と題する論文を引用し「想定の現実昧に関する古典派理論家とケイ
ンズのちがい」を次のように指摘する。
もしケインズが今日生きていたら、この効率的市場理論を、大量破壊兵器の一例と呼んだか
も知れない。これほど害悪をまき散らかしたにもかかわらず、経済学者ルーカスは、古典派
経済学の根底にある公理が「不自然で、抽象的、かつ明らかに非現実的」であることを、むし
ろ誇りに思っている。またルーカスは、サムエルソンと同じく、そのような非現実的な想定
こそが、経済学を研究する際の唯一の科学的方法であると力説している。ルーカスは、「経
済学的思考における進歩とは、現実世界についての観察結果を言葉によってよりよく表現す
ることではなく、抽象的でアナログ方式のより良いモデルを得ることを意味する」と主張し
ている。この主張の背後にある根本的理由は、これらの非現実的想定が問題をより扱い易く
するということである。そのため、分析者は、コンピューターの助けを借りて将来を予測す
ることができるとされるのである。その予測が悲惨なほどに誤っていることがあるかもしれ
ないが、そんなことは気にかける必要がない、というわけである。
何千もの変数と各変数当たりそれぞれ1本の方程式を含む、コンピューターを駆使した古典
派の効率的市場理論の数学的改良版は、われわれの経済システムについてのハードな科学と
しての叙述として公表されており、そこでは経済システムで取引されるすべての品目の価格
と生産量をある時点で一斉に決定することができるとされている。多くの経済学者にとって
は、こわれた数学的な破片の下に埋もれている基本的公理を確認することすら不可能な作業
となっている。さらに、コンピューターはすべての数学的計算を処理することができるとい
う事実が、その結果にあたかも科学的真理であるかのごとき雰囲気をかもし出している。コ
ンピューターから打ち出された結果にどうして誤っている可能性があるだろうかというわけ
である。
-中略-
過去30年の間ウオール街の陰謀を支配してきた。これら「経済的宇宙の精通者たち」によっ
て設計されたすべてのモデルが現に失敗したという事実は、少なくとも古典派理論を、その
数量化と数学化の装いにもかかわらず、われわれの経済世界に適用できることに関して疑問
を生み出しているものと思われる。グリーンスパンでさえ、なお自分の見解を完全に変えて
しまっているわけではないが、考えを改めつつあるように見える。
ケインズの考えは、意思決定を主観的な信念に基づかせる。バーンスタインのいう後者のグ
ループの人びとを支持している。とくにケインズは、経済的将来の不確実性が過去の統計パ
ターンに注目することによっては解決され得ないと主張した。ケインズは、支出と貯蓄に関
する今日の経済的意思決定が、将来起こりうる事象についての人びとの主観的な信念の度合
いに左右されると信じたのである。次の章でわたくしは、古典派の効率的市場理論という思
考様式に取って代わりうるものを提供する。ケインズの考えについて論じるつもりである。
わたくしの狙いは、ケインズの考えの方が現代の資本主義経済により当てはまるものである
ことを、読者に納得してもらうことである。そうなれば、現代の経済問題に封するケインズ・
ソリューションーわれわれの子供やすべての将来の世代のために真に文明化された経済社会
を作り出そうという、政府と民間企業との間の連携の合意を必要とするひとつの解決策-を
展開することが可能となるであろう。
ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』
【1ペニーの支出は1ペニーの所得になる-資本主義経済と貨幣の役割に関するケインズの考え】
ケインズは、『一般理論』において、「古典派の経済学者たちは、非ユークリッド的な世界にあ
って、一見したところ平行な直線が 経験上しばしば交わることを発見して、現に起こっている
不幸な矛盾を解決する唯一の救済策として、まっすぐになっていないことの責任は線にあると非
難するユークリッド幾何学者に似ている。しかし、本当は、平行の公理を放棄して、非ユークリ
ッド幾何学を構築するよりほかに救済策はないのである。これと同じようなことが今日経済学に
おいて要求されている」と述べ、ケインズは、こうした比喩を用いて、将来の成り行きが知られ
ている古典派の分析においては、自由な市場が完全雇用(上記引用文の「平行な直線」に対応す
る)を生み出すから効率的であるとされているという事実をさりげなく説いていたのである。し
かし現実の世界においては、かなりの永続的な失業(「不幸な矛盾」に対応する)が発生してい
る。したがって、まっすぐになっていないことの責任は線(「賃金」を意味する)にあると非難
する古典派の経済学者たちは、労働者の失業問題の責任は、より低い賃金を受け入れないかれら
自身にあると非難しているのに等しいのであると説明し、ケインズは、なぜこれらの失業という
「矛盾」が現実の世界において発生するのかを説明できる非ユークリッド経済学を創り出すため
に、いくつかの古典派の公理が現実世界の理解にとって適切であることを否定し、公理を放棄し
なければならなかったのであり、これこそが、将来の成り行きが知られており過去の統計的投影
として算出できると想定する古典派のエルゴード性の公理を拒否したケインズの主張のひとつで
あったとポール・デヴィッドソンは解説する。
この項つづく
北陸新幹線が米原に接続とか。あとは日本海経済圏構想が実現すること。これには朝鮮半島の政
治体制のチェンジが最大の課題。もうひとつ、多賀-伊勢高速道路(トンネル)建設による日本
海と太平洋をむすぶ構想の早期実現。これで決まり。
それにしても、時間が経つのがはやいね~ぇ。