極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ジャズバイオリンを聴くケインズ

2013年03月27日 | 時事書評

 

 

ビバップ (bebop) は1940年代初期に成立したとされていてジャズ形式の一様。モダン・ジャズの起源は
この音楽にある。最初に決まったテーマ部分を演奏した後、コード進行に沿っで、やがて自在に変調させ
ていく自由な即興(アドリブ)を順番に行う。基本的には、コード構成音や音階に忠実にアドリブ演奏し
ながらも、テーマのメロディーの原型をとどめないくらいデフォルメされた演奏となっていく。具体的に
は、さまざまな代理和音でリハーモナイズしたり、頻繁な内部転調を行うか、あるいはテンションノート
を用いられる。このため調整が希薄になり調性そのものを自己目的した演奏もみられたという。ジャズバ
イオリンの世界ではステファン・クラッペリー、レイ・ナンスなどスウィンギー(揺動)でグリッサンド
(滑奏)を特徴とした演奏が多いなか、寺井尚子はビバップをベースに即興演奏する日本のトップに立つ
神奈川は藤沢市出身のジャズバイオリニスト。

 

 

【新たな飛躍に向けて-新自由主義からデジタル・ケイジアンへの道】

1.タブーと経路依存性
2.複雑系と経路依存性
3.複雑系と計量経済学
4.ケインズ経済学の現在化
5.新自由主義からデジタル・ケイジアン


【ケインズ経済学の現在化】

前回と同様、新自由主義批判とケインズ主義の系譜をたどり未来志向の展望について、ポール・デ
ヴィッドソン著、小山庄三・渡辺良夫訳 『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』
を基に考察を進める。




【政策に影響を与える思想の力】

さて、本日は第1章の「政策に影響を与える思想の力」に戻り、第4章の「1ペニーの支出は1ペニーの
所得になる-資本主義経済と貨幣の役割に関するケインズの考え」を大急ぎで考察する。ところで、読み
進めていくうちに、まったくといって違和感のないことにある種の偶然の恐ろしさなのか、鳥肌が立つぐ

らいの感動を覚えた。「これはわたしの考えていたこととまるっきり同じではないか」と。いいかえれば
日本の大学での研究はおろか、米国での大学留学の経験がないにもかかわらず(もっともケインズ思想の
本質的なことは教えられていなかったのだが)、そういうことが自分の身に起こるとはという驚嘆だ。し
かし、少しフォーカシングを遠ざけると、特許出願や研究開発での新しいひらめきのたぐいでは、しばし
ば経験することで先達が既に考えていたとか、同時代性においても同じことを考えている人間はこの広い
世界でも最低三人はいるものだし、こんな高度情報化社会にあっては、独自の考えという気づきは、実は
すでに外界から得た情報の焼き直しの錯覚であることも充分に考えられると、思いとどめることとした。


 政治家やテレビの解説者たちがひっきりなしに国民に警告していることは、米国でのささいなサブプ
 ライム住宅ローンの債務不履行が原因で2007年に始まった現在の経済危機が、1930年代の大不況以来
 の最も重大な経済的破局をもたらしたということである.しかしながら、あまり指摘されていないこ
 とであるが、この現在のグローバルな経済・金融危機に関して注目すべきことは、その原因が自由な
 (規制のない)金融市場の慟きにあるということである。ところがここ30年以上もの間、主流派の経
 済学者、政府内の政策立案者および中央銀行家とその経済顧問たちが主張してきたのは (1)政府に
 よる市場規制も大掛かりな政府支出政策もともに現代の経済問題を引き起こすもととなっており(2)
 大きな政府をやめ市場から政府の規制やコントロールを撤廃することが現代の経済問題の解決策にな
 るのだということであった。

 2008年の秋には、この21世紀型の自由化された金融市場は、自らの引き起こした悲劇的な大惨事を修

 復できないことが明らかとなった。2008年10月には、米国財務長官でありかつてある大手投資銀行の
 トップを務めたヘンリー・ポールソン(Henry Paulson)は、民間金融機関を救済するために前例のな
 い 7,000億ドルもの資金供与を議会に要請したが、これら金融機関は最近まで、自由化された金融市
  場での活動によって莫大な利益をあげていた。そしてこれら金融サービス機関の首脳部は、わずか10
 年前ですらおとぎ話の中の王様の所得に相当すると思われる程の金額を、給料やボーナスとして受け
 取っていたのである。 

 その年の秋を通じて状況が日々悪化していくにつれて、この金融機関救済策では経済の繁栄を取り戻
 すのに十分ではないことが明らかになった。世界中の各国政府は、自国の経済が回復するのを助ける
 ため、ないしは失業の増加を抑え不振の企業業績がいっそう悪化するのを防ぐため、巨額の財政措置
 が必要であることに気付き始めた。そのような経済回復のための財政支出は、20世紀の英国の経済学
 者、ジョン・メイナード・ケインズの名前に因んで、しばしばケインズ的経済刺激策と呼ばれている。
 2008年10月23日付『タイム』誌に掲載された「ケインズの復権」と題する〔ジャスティン・フォック
 ス(Justin Fox)氏の〕論文の中で、自由市場こそが現代のどのような経済問題に対する解決策をも
 提供できるとの信念の基礎となった合理的期待理論を展開したノーベル賞受賞者ロバート・ルーカス
 (Robert Lucas)の「わたくしは,すべての人が隠れケインジアンであると思う」という言葉が引用
 されている。

 
                                 ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
                    『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』


これで、米国の主要なマスコミの論調は、一旦はケインズをこぞって殺しておいて、今度はあっけなく『
ケインズの復権』させた。まことに「事実は小説より奇なり」である。そればかりではない、1987年から
2006年まで連邦準備制度理事会(FED)の議長であったアラン・グリーンスパン(Alan Greenspan)ほど、
金融市場からどのような形の政府規制をも撤廃すべきだと主張した重要人物は他にいなかったのだから。
グリーンスパンがFEDにいた時代は、国民も政治家もかれが過ちを犯すなどとは思ってもみなかった。グ
リーンスパンは、何年にもわたり理解し難いあいまいな言葉で議会の委員会での証言を行ない、規制のな
い洗練された金融システムから必ず繁栄が生まれると説明してきたとポール・デヴィッドソンはそう評し
ている。実は
この経済成長と繁栄の多くが、1990年代の「情報通信技術バブル」と「住宅バブル」による
ものだが、それまで、グリーンスパンの政策を絶賛していた多くの「専門家」は、これら「バプル」の原
因が、グリーンスパンの在職中の連邦準備制度によって採られた金融緩和と低金利政策にあるとし今回の
問題発生の責めをグリーンスパンに負わせ、かくして 強い経済と小さな政府についてのこのような楽観
論にもかかわらず、数十年にわたる。グリーンスパンの擁護した市場の規制緩和と(軍事支出を除く)よ
り小さな政府の支出計画の結果として、米国のみならず世界の経済が大不況以来最大の経済危機に陥った
ことは今や明らかである。いわんや英米流金融資本主義、新自由主義×新古典派ミクロ経済学の尻馬に乗
っていた日本の学者、政治家、評論家やマスコミの為体ぶりの喩えようのアホさ加減をみるにつけ(後に
中谷巌の「竹中くん僕は間違っていた」発言に象徴される)、まことに「事実は小説より奇なり」。

  

グリーンスパンは、2008年10月23日に行なわれた下院の銀行監督および政府規制改革委員会で自己の過失
を認めるという驚くべき証言の中で、自分は自由な金融市場の自己矯正能力を過大に評価していたこと、
および規制緩和が経済に対しこのように破壊的な力を及ぼすことを全く見逃していたことを認めた。グリ
ーンスパンは、金融危機を論じたあらかじめ用意された証言の中で、「しかしながら,今回の危機は,わ
たくしの想像をはるかに超えた広範囲な影響を及ぼすものであることが明らかになっている。…貸出機関
の私利追求が株主の持分を保護するであろうと期待していたわれわれ(とくにわたくし自身)は、あまり
のことにショックを受け信じられぬ思いでいる。・・・最近数十年の間に、コンピューターと通信技術のすば
らしい発展によって支えられた数学者と金融専門家の最も優れた考え方を融合して、膨大な危機管理と価
格設定のシステムが開発されるに至っている。[経済学での]ノーベル賞が、[金融]派生商品市場の発

展の多くを支える[自由市場での]価格設定モデルの発見に対して、授与されている。この斬新な危機管
理の枠組みが、過去数十年にわたって支配的であったが,今やこの全知的体系が崩壊しにしまっ]ている。
・・・世界がどのように動くかを規定する重大な機能構造であるとわたくしが考えるモデルの中に、ある欠
陥を見出したのである。それが、まさにわたくしがショックを受けた理由である。・・・わたくしは、それが
なぜ起きたのかを依然として完全には理解していないが、それがなぜ起こったのかを理解できた程度に応
じて、わたくしの従来の考えを改めることとしたい」とまで述べている。


 【21世紀最初のグローバル経済危機を引き起こした思想と政策】

 
第2章で、ポール・デヴィッドソンは、ケインズは古典派経済学者としての教育を受けており、第1次世
界大戦前はケンブリッジにおいてまさしく古典派の経済分析を教えていたが、戦後の経済事象がかれをし
て古典派理論の考え方を疑問視させるにいたったのである。大英帝国は、米国とは異なり、失業率が9.7%
と推定された1927年を除けば、1920年代を通して2桁の失業率を伴った大幅な景気後退に苦しんでいた。
これらの事実は、ケインズをして、労働者がより低い賃金を受け入れないことが失業の原因であると主張
する古典派理論とその哲学を考え直させることとなった。ケインズは、15年の歳月をかけて、古典派の一
連の考えに取って代わるひとつの考えを展開し、それをかれの1936年の書物である『雇用・利子および貨
幣の一般理論』の中で説明したことを紹介している。
ケインズはこの書物の中で、貨幣を使用する市場志
向の資本主義的経済システムの主なる経済的欠陥とどのような政策が資本主義システムの利点を維持しな
がらこれらの欠陥を防ぐことができるのかについて詳細に述べていると。ケインズはこの貨幣的経済分析
こそ、自由市場がすべての経済問題を解決するという主流派の古典派経済学の哲学、すなわちほとんど2
世紀にわたり英国や米国における経済学者の思考を支配してきた哲学に代わり得るものであると信じたの
だと。そして、
ケインズは、1935年の元日にジョージ・バーナード・ショウ(GeorgeBemard Shaw)に宛
てた手紙の中で次のように述べたと。


 わたくしの新しい心境を理解していただくためには・・・わたくしがいま、世界の人々の経済問題に対
 する考え方を、おそらくいますぐにではありませんが、今後10年間のうちに、大きく変革すると信じ
 ている経済理論書を書いているということを、あなたに知っていただかなければなりません。わたく
 しの新しい理論が政治や感情と十分に混ぜ合わされたとき、その最終結果が行動と事態にどのような
 影響を及ぼすか、いまわたしは予見することができません。しかし、大きな変化が起こり、とくにマ
 ルクス主義のリカード的基礎は打ちこわされるでしょう。わたくしはあなたが、あるいはまた他の人
 たちが、このことをいまの段階において信じてくださるとは思っておりません。しかし、わたくし自
 身としては、わたくしのいっていることをたんに希望しているのではありません、わたくし自身の心
 のなかではまったく確信しているのです。

そして 13ヵ月後の1936年2月に、ケインズの書物『雇用・利子および貨幣の一般理論』は出版され、ケイ
ンズのいくつかの革新的な政策についての考え方は、大不況と第2次世界大戦の期間をつうじて政府の財
政支出の意思決定に確かに影響を及ぼすこととなると。そして後に、ケインズは、失業が好況期よりも不
況期においてより大きく顕著に増加すること、したがって失業の原因となっているのは労働者の反抗では
ないことを承知していた。ケインズは、「労働者は好況よりも不況においていっそう強硬であるというこ
とはない-そのようなことはけっしてない。また彼らの物的生産力が不況においてより低いということも
ない。これらの経験的事実は、古典派の分析の妥当性を疑うに足る明白な根拠である」と指摘しているが、
その古典派の分析においては、ケインズとは異なり、失業率の上昇に直面した労働者は働きたいと思うす
べての者が職を得れられるような賃金を設定する自由市場の働きに断固として反抗するであろうと主張す
るが、これは、失業の基本的原因が、完全雇用を確かなものとする自由市場の働きを妨げるような賃金・
価格の固定性にあるのではなく、「貯蓄者が自分の貯蓄を蓄えておくために用いる資産として、より流動
性の高い金融資産を需要しているためだ」と主張。失業の問題は、金融市場の慟きと貯蓄者の貯蓄動機の
と中に探し求められるべきだとしている。しかし、1970年代に入ると、ケインズの主張を誤用した見方は、
その輝きを失い始め、
ケインズの誤用版の衰退は、経済学に関する公の議論にある空白状態を創り出し、
フリードマンは古典派経済学の考えを積極的に、もしわれわれが大きな政府の規模を縮小し、ルーズヴェ

ルト政権時代に制定され自由な市場の働きを制限してきた規則や規制を取り払ってしまうならば、大きな
政府が障害となってなし得なかったやり方で経済に繁栄をもたらすことができる」と主張したため、銀行
制度および金融市場の規制緩和は加速し、自由市場論へ回帰し、グラスースティーガル法が、1999年にク
リントン大統領の支持を得て議会は、グラスースティーガル法を無効にする。ひとたびグラスースティー
ガル法が骨抜きにされるや、本来の貸付業務とその貸付債権の引受業務との間の法律上の障壁はなくなっ
てしまった。

 
 住宅ローンの最初の組成者たちは、融資を受ける資格の十分ある借り手を見つけることができないと

 き、所得を稼ぎたいあまり、住宅ローン債権を転売し組成手数料を取得し続けるために、信用度の低
 い(サブプライムの)借り手を積極的に探し出そうとするようになった。また、住宅ローン組成者た
 ちが、借り手に住宅ローンを受ける資格があると見せかけるため、借り手についての情報(ないし誤
 った情報)を提供する際に、詐欺的行為をはたらく場合も少なくなかった。そうこうしている裡に、
 住宅ローンの借り手、特にサブプライムの借り手や偽りの情報を使って融資を受けていた借り手たち
 は、その元利金返済義務を怠り始めた。もちろん、これら債務不履行に陥った住宅ローンの借り手の
 ほとんどは、おそらく旧来の住宅ローン貸付銀行の設定した3つの特性という条件を満たしてこのよ
 うにして(サブプライム)住宅ローンが組成され、それらが引受業者である投資銀行に売却されたが、
 
投資銀行はそれらを他の住宅ローンと混ぜ合わせひとまとめにして、債務担保証券CDOと呼ばれ
 る金融資産とか、投資運用会社SIV扱う特殊な金融資産とか、その他収益源が最初に実行され
 た住宅ローンであることには変わりはないものの、少数の専門家にしか分からないような複雑な金融
 資産とかを、生み出した。そしてこれらの金融派生商品を信用度に応じて切り分けた各部分は、警戒
 心の薄
い年金基金、地方・州の税収ファンド,個人投資家および国内・海外の他の銀行に売却された。
 投資家は、こ
れら派生商品が、キヤツシュフローを生み出すはずのどのような住宅ローンによって組
 成されているのか
を知らなかった。それどころか、投資家は、これらの複雑な金融証券が民間の格付
 機関から得ていた
高い格付に惑わされて、それらが安全な投資であると信じたのである。

 歴史を学べば、今日の住宅バブル問題を解決する糸口を得ることができるかもしれない。というのも
 ルーズヴェルト政権が1930年代の住宅関係債務不履行の危機をどう取り扱ったのかは、2007年に始ま
 った米国住宅バブルの災難に対処するための前例を指し示してくれているからである。1933年に、米
 国議会は住宅所有者リファイナンス法(Home Owners RefinancingAct)を可決し、同法に基づき住宅所
 有者資金貸付公社(Home Owners'Loan Corporation、 HOLC)が創設された.HOLCの主たる役割は、住
 宅差し押さえの実行を防ぐため住宅借入金の低利借り換え融資を行ない、住宅ローン貸付債権を保有
 している銀行を緊急に救済することであった。
HOLCは、すばらしい成功例であった。その業務計画
 は、しばしばもともとのローンの返済期限を延長し月々の返済額を住宅所有者が支払えるような額に

 大幅に滅らすような、低利融資を百万件実行することであった。どのように合理的に返済条件を改定
 しても、住宅所有者に住宅ローンを維持できる経済的余裕がない場合には、HOLCがその資産の所有
 権
を取得し、それを以前の住宅所有者に1ヵ月単位で賃貸することとしその賃料を前所有者が支払い
 うるような
水準に設定したのである。このようにして、HOLCは、住宅を空室のままに置くことを避
 けることができ、劣化
や考えられる破壊にさらさずに済むと安心していられたのである。HOLCが、
 その住宅を、移り住みたいとい
う家計に売却できたとき、前賃借人は引越ししなければならなかった。
 HOLCは、1933年から1951年までの業務執行期間中に、すべての借金を返済したばかりでなく、若干

 の利益をも生み出すことができたのである。

 政府が企ててもよいと思われるもうひとつの方策は、返済が滞っている住宅ローンやその他のいわゆ
 る有毒資産を、民間のバランスシートから簿外に落とし、それによって格付機関に誤り導かれて住宅
 ローン市場で売買を行なってきた投資家にとっての破産の脅威を取り除くような、ある政府機関を設
 立することである。そうすることは、すべての金融市場で金融的苦境を引き起こす恐れのある更に深
 刻な投げ売りを阻止することになるであろう。
歴史は再び、そのような方策が経済危機を防ぐという
 証拠を提供してくれている。例えば、1989年に米国政府によって設立された整理信託公社は、1980年
 代の貯蓄貸付組合(S&L)の経営危機を受けて、同組合のバランスシートから、利払い不履行の住宅
 ローンを取り除き、金融面での損失がいっそう広がるのを阻止したのである。

 
 不幸なことに、住宅バブルの混乱が2007年にはじめて明らかになったとき、議会はそれの解決を手助
 けするのに必要な政府機関を創設するという速やかな行動を取らなかった。ワシントンの当初の反応
 は、「解決を市場に委ねる」というものであったが、このやり方は、クルーグマンによって、解決に
 数年を要するとされていたものである。しかも「市場に委ねる」という解決策は、(例えば,住宅差
 し押さえが盛んに行なわれている地区の住宅所有者や、建設および関連産業の労働者や企業など)多
 くの罪のない経済的被害者に副次的な損害を与えてきたし、今後も与え続けるであろう。

 
                      ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
                    『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』

 

このように縷々歴史的な分析を述べ、最近の経済危機は、適切にも大不況以来の最も深刻な経済問題であ
ると評されているので、不況時代の歴史を学ぶことから得られる教訓は、それらがどのように現在の状況
に当てはまるのかという観点から、判断されるべきであろう。政府は、営利企業の生産物に対する市場の
需要を増加させ、それによって企業により多くの雇用機会を創出するよう促す利潤獲得の機会を生み出すこ
とによって、現下の不況からのできるだけ早い回復を確かなものとする上で重要な役割を担っている。こ
の役割の
ために政府にとって必要なことがただ、回復を始動させるための若干の呼び水ないしジャンプス
タートだけである、
という考えは拒否されなければならない。財政赤字や総国家債務の大きさにさほど心
配することなく、力強く永続的な回復を確実にするような財政支出政策をとることが、最も肝要である

ひとたび力強い回復が定着したのち、
行政府は、市場における行動を真の文明社会を生み出すような行動
のみに限定するため規則・規制の面でどの
ような改革が必要であるのかを、決断しなければならないと、
デヴィッドソンは「大不況の歴史の教訓」としてこのようにむすぶ。

                                        この項つづく 

日曜のトレッキングの筋肉痛が増長している。これで懲りたか?いやいや、そんなものではないのだ。滋
賀県は恵
まれている。南北に手頃で格好のトレッキング空間が広がる。二時間もクルマを走らせばほとん
どの登山口に着いてしまう。トランクを開けリックとカメラとステックを背負い込み、入・下山には最寄
りの神社に参拝すればこころはリフレッシュだ。そんなふうなことを考えながらわたしの知らないケイン
ズを自由自在に研究する。そう、それはさながら「ジャズバイオリンを聴くケインズ」のように?!
 

コメント
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