極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ご当地キャラ博2022

2022年10月23日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひ
こにゃん」

 


 2034年 地球温暖化は 1.5℃に到達
パリ気候協定で合意された 1.5℃制限の一時的な違反は、最近
のエルニーニョの間にすでに観察された。この現象は、太平洋
で 4~7 年ごとに発生する自然温暖化サイクルの一部であり、
特に暑い年となる。2034年までに、世界の平均気温は定期的に
このしきい値を超えている***。上昇が鈍化する兆しはない。




【再エネ革命渦論 058: アフターコロナ時代 257】
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コンパクトでスマートでタフな①光電変換素子と②蓄電池及び③水電
解に④水素系燃料電池、あるいは⑤光触媒由来有機化合物合成と完璧
なシステムが実現し社会に配置されようとしている。誰がこれを具体
的に想定しただろうか。その旗手に常に日本や世界の若者達の活躍が
あった。
技術的特異点でエンドレス・サーフィング
   再生可能エネルギー革命 ➢ 2030 57


完全クローズド太陽光システムノート Ⅲ
定置用蓄電池の市場が急拡大 2022年は2兆円規模
10月20日、士経済が電力貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)・
定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場に関する調査結果を発表。
2022年の同市場は2021年比141.5%の2兆26億円、出荷容量ベースでは
同128.0%の69.9GWhとなる見通しで、今後も市場拡大が継続すると予
測する。2022年は新型コロナウイルス感染症の流行や半導体などの関
連部品の調達不安がありながらも、再生可能エネルギーの普及拡大や
導入補助政策の整備、データセンターや5G通信への投資活発化、自然
災害への備えや電気代上昇などを背景に蓄電システムの需要が拡大し
た。特に系統用・再エネ併設分野のESS・定置用蓄電池向け二次電池の
市場は、2022年に1兆円を突破し、今後も市場をけん引する見通。今後
もカーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの導入が
増加し、これに伴う変動電源比率の高まりにより、出力変動への対応
や需要変動に対する供給力の確保などを目的に、調整用電源として二
次電池市場が大きく拡大すると予想。2035年に同市場は2021年比3.8倍
の5兆4418億円に、出荷容量ベースでは同4.7倍の255.2GWhに拡大する
見込みとしている。



1.蓄電システムは、系統側では需給調整市場や卸電力市場での活用
 を見越した調整用電源としての設置、太陽光発電および風力発電シ
 ステムの出力平滑化のための設置が進んでいる。
2.一方、需要家側では、太陽光発電システムなどの自家消費やピー
 クカット用途、レジリエンス性の向上を目的に非常用電源としての
 設置が進んでいる。  
3.住宅用や小容量の業務・産業用は、パッケージ製品で供給され、
 系統用や大型の業務・産業用は、システムインテグレーターが案件
 ごとに電池やパワーコンディショナーなどを調達することが多い。
4.近年海外では、導入の容易さ、迅速さ、コスト削減などを目的に
 周辺部品の設置や据付工事を含む導入が増えており、MWクラスの場
 合でもパッケージ製品をラインアップする動きがみられる。  
5.また、電池メーカーやパワーコンディショナーメーカーが、部材
 供給にとどまらず、自らシステムインテグレーターとなり蓄電シス
テムとして供給し、事業領域を拡大させる動きもみられ、蓄電システ
ムの業界構造が多様化していることから、市場拡大とともに事業者間
の競争も激化していくと予想。


出所:Buildings - paXos Solar

 太陽光発電・熱ソーラータイル
ドイツの Paxos社は現在、空気ヒート ポンプに接続された試験施設で
ソー ラー タイルを試験。 このパネルは、熱と電気を同時に供給で
きると同時に、ヒートポンプの成績係数を約25%向上させる。同社は、
THケルン応用科学大学と提携して、電気と熱を同時に生成するために
使用できるソーラールーフタイルを開発。太陽光発電 - 熱 (PVT) タ
イルの外観は、従来の屋根瓦とほとんど変わらないため、住宅所有者
にとって魅力的なものになる可能性がある。Paxos社 と TH Köln は、
温度、歩行性、環境の影響に対する高い耐性、および安全性のテスト
するために、タイルのプロトタイプを作成。また、ガラスを分析して、
反射または散乱による光損失を最小限に抑ええた。彼らは、マイクロ
インバーターと空気ヒートポンプを備えた試験施設でプロトタイプを
試験した。「実際の屋根瓦に加えた調整のおかげで、物理的特性とエ
ネルギー収量が大幅に改善された。このようにして、システムは実際
の条件下で継続的に使用できる。10月より実機での性能試験を開始。
このシステムは、従来の高架ソーラーモジュールを使用した参照シス
テムとして、電気的性能に関して同等の値を示す。陽電池を冷却する
ためのエアダクトがソーラールーフタイルに組み込まれているため、
従来のシステムの後部換気と同様に、動作点が改善された。これらの
データは、同等の電気的性能が期待されることを示す。彼によると、
最初のデータでは、熱要件と一般的な気象条件に応じて、ヒートポン
プの性能係数が約4分の1増加したことも示された。 


出所:Paul Seeger, Paxos

この結果は、ソーラー・ルーフ・タイルが建物の暖房供給にも貢献し、
システム全体の効率を向上させることができることを示す。リストに
掲載されている建物と、以前は光学系のためにソーラーを避けていた
人々に、提案した。Paxos社はすでに、ソーラールーフタイルの特許
を非公開の太陽光発電メーカーに売却している。連続生産を引き継ぐ。
Paxos社は、Meyer Burger社が販売するPVルーフタイルの背後にもあり、
現在、シリーズ生産に入っている。


透明な木材がプラスチックを駆逐する
近年、多くの飲食店で紙製のストローが採用されるなど、脱プラスチ
ックの動きが進んでいる。プラスチックの代替素材としては紙の他に
「透明で丈夫な木材」なども開発されてきているが、新たにインド工
科大学の研究チームが「プラスチックから透明な木材への移行は環境
保護に有効である」とする分析結果を公開(※1)。木材を透明に加
工する技術は複数の研究機関ですでに開発されているが、当初は木材
を透明化するために有害な化学物質を用いる必要があったが、比較的
安全な物質を用いて木材を透明化できるようになる。例えば、メリー
ランド大学が2021年に発表した木材透明化技術(※2)では、過酸化
水素水を用いて木材を漂白し、エポキシ樹脂を浸透させるという手法
を採用されている。件の研究チームは、木材透明化技術の手法ごとに
環境にかかる負荷を分析。その結果、水酸化ナトリウムや亜硫酸ナト
リウム、過酸化水素などの物質を用いる木材透明化技術は、亜塩素酸
ナトリウムやアクリル樹脂を用いる技術と比べて地球温暖化係数(※
3)が24%低く、酸性化係数が15%低くなることを突き止め、さらに、
過酸化水素などの物質を用いる木材透明化技術の生産規模を工業規模
に拡大した場合、実験室規模の生産と比べて電力消費量が98.8%低く
なることも判明。同チームはこれらの結果から「プラスチックは壊れ
やすいガラスの代替品として利用されており、生分解性を持った透明
な木材はプラスチックよりも優れた代替品として利用できると透明な
木材の有用性を強調する。



Graphical abstract

【関連情報】
1.Science of The Total Environment, Volume 846, 10 November 2022,
     Life cycle assessment of transparent wood production using emerging tech-
     nologies and strategic, https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2022.157301
2.ガラスよりも軽くて丈夫な透明の木材が開発される, 2021.02.08, GIGAZ
   INE

3.地球温暖化係数(global warming potentia]、GWP)とは二酸化炭素
 を基準に、各種気体が大気中に放出された際の濃度あたりの温室効
 果の100年間の強さを比較して表したものである。2016年10月15日、
 キガリで採択された、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオ
 ール議定書の改正(モントリオール議定書2016年改正)で、「百年
 地球温暖化係数」として再定義された。 via  フリー百科事典『ウ
  ィキペディア(Wikipedia)』

✔ 『オールバイオマスシステム』も商用段階に突入しました。 




 スピン熱伝導物質のナノシート化
熱伝導可変材料の開発や、熱制御デバイスへの応用に期待
10月14日、東北大学の研究グループはアルカリ溶液を用いる手法で、
スピン熱伝導物質をナノシート化することに成功したことを公表。
研究グループは、熱伝導可変材料の開発に取り組む中で、スピン熱伝
導物質の「La5Ca9Cu24O41」(以下、LCCO)に注目してきた。熱キャリア
として機能する「マグノン」によって、室温におけるスピン熱伝導率
を「高い状態」や「低い状態」に制御できると予想されているからだ
が、電気的制御が可能な領域は、厚みが数nmの範囲に限られている。
同グループは、スピン熱伝導物質のナノシート化に取り組み、①LCCO
微結晶粉末を合成。②この粉末と10種類近くの酸性、中性および、ア
ルカリ性水溶液との反応性と反応生成物が、ナノシートを含んでいる
かを調べた。この結果、アルカリ性のNaOH水溶液を用いれば、厚みが
3nm以下という短冊型シート状物質を作製できることが分かった。③
透過型電子顕微鏡を用いた検査により、この物質がLCCOナノシートで
あることを確認。
同グループによれば、厚み3nm以下のナノシートが形成される機構につ
いては、完全に解明されていない。今回の研究では、数mm角の単結晶
試料を機械研磨して、厚みが約100nmの短冊形シート状物質を形成すこ
とにも成功。



尚、
スピン熱伝導物質は、ラマン分光でマグノン由来の特徴的な幅広
いピークを示す。

 電気機械的穿孔法による 細胞への分子導入促進
細胞膜穿孔技術は、細胞内で発現した生体分子の活性を可視化するだ
けでなく、遺伝子操作を可能にする技術でもある。しかしながら、巨
大なゲノム情報を持ちうる大きな分子を細胞へ導入することは困難。
本研究では、この技術を見直すことで、誘電体材料で覆われた微細電
極からなるコアシェル構造のマイクロバブルインジェクター(下図)
を用いて、エレクトロメカニカルポレーションで細胞に穿孔をつくり、
巨大なゲノム情報を持つ大きな分子を細胞へ導入できることを示す。
電極にパルス電圧を印加することで、電極の先端にマイクロバブルが
発生し、細胞に電気と機械的刺激を同時に与えることができるように
なった。このような独創的な手法を用いることで、一般に分子の導入
が困難とされている骨芽細胞やクラミドモナスにも、数メガダルトン
の分子を導入することを可能にした。特に、細胞懸濁液の粘度を高め
ること(下図B)で導入効率が向上することを見す。これは電界誘起
気泡の繰り返しの膨張・収縮(振動波)によって達成されたと推定さ
れる(下図)。さまざまな種類の細胞への適用が可能であることから、
新たな遺伝子工学への応用が数多く期待されている。


図1.研究成果の概略図
(A)バブルインジェクター。(B)エレクトロメカニカルポレーションの
概念図。低濃度または高濃度の細胞の懸濁液は、電界と力学の両方の
刺激に同時に曝されます。濃度が低い場合、細胞への機械的刺激が小
さいと考えられます。一方、高濃度懸濁液の場合、細胞はバブル周辺
に集積し、マイクロバブルの持続的な振動に曝され、膜の穿孔を促進
しする。
【要点】
1.誘電体で覆われた微細電極からなるコアシェル構造※2のバブル
 インジェクターを応用し、前例のないエレクトロメカニカルポレー
 ションを提案し、指向性電界誘起気泡※3の生物医工学へのユーザ
 ビリティを例証。
2.細胞懸濁液の粘度を調整し、マイクロバブルを繰り返し膨張・収
 縮させることで、細胞への遺伝子導入を促進させ、さまざまな種類
 の細胞に大きな分子を導入することに成功。
3.本操作技術は、創薬研究・遺伝子工学・流体医工学など、多くの
 分野での貢献が期待されている。


図2.システム構成とバブルの発生。赤い矢印:細胞導入ユニットの
 拡大図。プラスミド導入に使用したシステムの構成:電源、2台の
 マイクロマニピュレーター、バブルインジェクター。
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【概要】 提案した遺伝子導入法の有効性を実証する前に、電源の出
力パワーの最適化を行いました。2.1×105 cells/μLのNIH/3T3細胞
懸濁液(分子導入の実験では7 μLで実施)を用い、出力パワーを4~
15 Wまで変化させ、エレクトロメカニカルポレーションによるプラス
ミド(pEGFP-N1、導入すると細胞が蛍光を示すもの)の導入効率を比較
した。出力を12 Wまで上げると、遺伝子導入された細胞数が増加し、
さらに15 Wまで上げると導入された細胞数が減少することが分かった。
12 Wでは約60%の細胞生存率。一方、15 Wでは細胞の生存率が約25%
に減少。さらに、12 Wでのプラスミドの状況を確認したところ、大き
な損傷はなかった。これらの結果から、12 Wの出力が最も細胞遺伝子
導入に効果的であると考えられ、以降の実験においては12 Wの出力パ
ワーを適用した。続いて、粘度の上昇が力学刺激の増強に有効かどう
かを調べる実験を行った。異なる細胞濃度の懸濁液の粘度を評価した
結果、せん断粘度は細胞濃度が高くなるにつれて増加することが分か
りました(上図2)。次に各種濃度においてマイクロバブルの挙動を
観察したところ、低細胞濃度では生成したバブルによって循環流が生
じるのに対し、細胞濃度が高い場合には、バブルは装置先端で振動し
循環流は発生しなかった。これらの結果は粘性がバブルの挙動に影響
することを示し、溶媒条件を変化させることで分子導入のための力学
刺激を調整できることを示す。高細胞濃度では、低細胞濃度に比して
多数の細胞に遺伝子が導入され(図2)、これらの結果は、力学刺
激とエレクトロポレーションの組み合わせが導入効率に与える影響を
示しており、エレクトロメカニカルポレーションのコンセプトを実証。
また、増粘剤の添加による粘度変化を評価した結果、細胞懸濁液の粘
度はいずれの場合も上昇し、増粘剤を低細胞濃度の懸濁液に投与する
ことで遺伝子の導入効率が向上し(図2)。マイクロバブルによる細
胞への遺伝子導入効率を高める上で、懸濁液の粘度が重要な因子であ
ることが示唆された。 開発したエレクトロメカニカルポレーション
を、さまざまな種類の細胞への導入に応用。具体的には、ラットの骨
肉腫細胞株(UMR-106細胞)と微細藻類(クラミドモナス、Chlamydo-
monas reinhardtii)を用いた実験を行った。まず、異なる細胞濃度
または増粘剤を添加したUMR-106細胞の懸濁液を調製し、細胞懸濁液
の粘度を評価した。図4に示すように、UMR-106細胞の細胞濃度が高
い場合は、低い場合に比べて粘度が高いことが確認され、高濃度懸濁
液(2.1×105 cells/μL)では、バブルが装置先端で振動する様子が
観察されました。導入実験をした結果、高粘度の細胞懸濁液の場合、
低濃度の細胞懸濁液よりも高い導入効率が実現)。もうひとつのクラ
ミドモナスは将来の再生可能なバイオ燃料の供給源として示唆されて
いる微細藻類が、厚い細胞壁を持つために遺伝子操作が困難とされて
いる。巨大分子の例として、2000-kDaのFITC-dextranをクラミドモナ
スへ導入することを目指した。2000-kDaのFITC-dextran分子と混合し
て静置したサンプルでは、緑色の蛍光を発する細胞がほとんど観察さ
れず、低濃度の懸濁液にバブル処理を実施しても、細胞にわずかにし
か導入されないことを確認。一方、高濃度の懸濁液を用いた場合では、
バブル処理においてFITC-dextranの導入は顕著に上昇することが確認
された。このように、本システムは細胞壁を持つ細胞への高分子導入
にも適用可能であり、植物細胞であってもサンプルの粘度は遺伝子導
入に重要なパラメータであることが分かりました。以上により、エレ
クトロメカニカルポレーションによってさまざまな細胞種への遺伝子
導入が可能であることが確認された。

【関連情報】
1.タイトル: Viscosity-aided electromechanical poration of cells for tran-
    sfecting molecules,
著者:Wenjing Huang, Shinya Sakuma, Naotomo Tottori,
    Shigeo S. Sugano and Yoko Yamanishi,
掲載誌:Lab on a chip.
    DOI:10.1039/d2lc00628f
2. コアシェル構造:電気により発生する真っ直ぐに進む気泡のこと。
3.指向性電界誘起気泡電気により発生する真っ直ぐに進む気泡。
4.メガダルトン:原子や分子の質量を表す慣用的に使われる単位で、
 質量数12の炭素原子、12Cの1/12を1ダルトンとしたとき、その106
 
倍の単位。
5 エレクトロポレーション:短パルスの電流を利用して、DNAやRNA
 などの高分子を細胞内に導入する技術。
6.CRISPR-Casシステム:ゲノム中で任意の領域を切断できる遺伝子
 改変ツール
7.発現ベクター:遺伝子組み換え実験に使われるウイルスやプラス
 ミドなどで、組み込み部位の上流部分に遺伝子発現に必要なプロモ
 ータ配列などを持たせ、形質転換後の細胞で遺伝子が発現するよう
 に構築したベクターの総称。



中世期最大の詩人のひとりであり、学問と識見とで当代に数すくない
実朝の心を訪れているのは、まるで支えのない奈落のうえに、一枚の
布をおいて坐っているような境涯への覚醒であった。本書は、中世初
期の特異な武家社会の統領の位置にすえられて、少年のうちからいや
おうなくじぶんの〈死〉の瞬間をおもい描かねばならなかった実朝の
詩的思想をあきらかにした傑作批評。

Ⅱ 制度としての実朝 ①
                            吉本隆明著『源実朝』
                                      Ⅱ 制度としての実朝
                           筑摩書房刊

  坪内逍遥の実朝をテーマにのせた戯曲「名残の星月夜」は、な
 かなかの力作である。実朝の謎の渡宋計画についてあたえられて
 いる独特の解釈がこの戯曲のやまばといえようか。おおざっぱに
 いえば、北条義時と決定的に離反するようになった実朝は、陳和
 郷の言葉にのせられたとみせかけて渡宋計画をうちだし、義時や
 母政子の反対をおしきって陳和卿に造船を命じ、北条氏には渡宋
 とおもわせてその船を途中で畿内にちかく寄港させて上洛し、後
 鳥羽隠ら律令王権の勢力に合体して、北条一族を倒滅させるつも
 りであったというのである。逍遥にこういう空想をゆるしたのは、
 ひとつには理解にくるしむような実朝の渡宋計画であったが、も
 うひとつは実朝が「太上天皇御言下預時歌」を詠んでいることで
 あった。ところで逍遥は、もし実朝が世間の風評どおりに計画を
 強行すれば、北条氏だけではなく頼朝将軍がっくりあげた武門勢
 力の府が瓦解してしまい、けっきょく京都の王権の思うつぼには
 まるだけだと母政子に諌められて、この計画をおもいとどまり、
 船が浮ばなかったことにして、みずから計画を座礁させるという
 ように筋をはこんでいる。逍遥の解釈はうがちすぎの空想にすぎ
 ないが、実朝の生涯の傾向のなかに、こういう解釈をゆるすもの
 がなかったとはいえない。ただ逍遥は、北条義時の専横と据え人
 形のように名目だけの将軍職として、身ゆるぎもできない実朝の
 不満の僻積という常識的な解釈から出発している。実朝にたいす
 るこういう理解は、ドラマをつくるには都合がよいかもしれない
 が、たぶんあまりに通俗的にすぎている。『吾妻鏡』や『北条九
 代記』のような北条氏一族の急がかかっているとみられる筆縁者
 の筆をもってしても、領家にたいするものとちがって、実朝には、
 いやおうのない威力を認める筆つきになっている。これから推し
 ても逍遥のような解釈が成立ちにくいことがわかる。逍遥にまっ
 たく欠けていたのは鎌倉幕府という〈制度〉の象徴としての実朝
 という観点であった。一個の人間は一個の人間であり、ひとりの
 詩人はまたひとりの詩人である。しかしひとりの人間はひとりの
 詩人であるとともに、ある共同体の象徴として威力でありうる。
 そしてこの威力は、かれがその威力をふりまわしたがゆえに威力
 なのではなくて、かれが共同体の象徴であるということ自体が威
 力なのである。実朝はみだりに威力をふりまわすていの人物では
 なかった。また、北条氏を頂点とする武門勢力にかつぎあげられ
 た、たんなる人形であったとみられなくはない。しかしこのこと
 は実朝が鎌倉幕府の徴として威力であったという理解をさまたげ
 ないのである。
  太宰治の『右大臣実朝』や小林秀雄の「実朝」論を、当時どう
 しても読み破ることができなかったとすれば、わたしが〈制度〉
 としての実朝という観点をまったくもちえなかったからであった。
  詩人実朝の全体像に迫るには、どうしてもこの視点を逸するわ
 けにはいかないのである。 鎌倉幕府の創立は、わが国の歴史を
 形どおりに大和王権の全国制覇以後に限定してみるかぎり、もっ
 とも奇妙なものの成立であった。そして実朝は幕府の創設者であ
 る頼朝の二男として、また三代目の将軍として、この奇妙な〈制
 度〉の渦中におかれたのである。そしてこの奇妙な政府の成立の
 意義がどんなに誇張してもしきれないとすれば、〈制度〉として
 の実朝の存在の意義もどんなに誇張してもしきれないかもしれな
 いのである。
  鎌倉幕府の象徴的な統領としての実朝の意味をはっきりさせる
 ためには、幕府そのものの性格をはっきりさせなければならない。
 すくなくとも実朝の横死は、頼朝によって創始された幕府そのも
 のの必然的な帰結というよりほかない側面をもっているからであ
 る幕府そのものの性格は、まず、創始者である源頼朝の律令王権
 にたいする態度のうちに象徴的に看てとることができる。
  義経、範頼ら弟たちの統率する兵力によって、平家を瀬戸内海
 一帯に追いおとしたとき、頼朝はまず京都にある律令朝廷に書状
 をもって申入れを行った。『吾妻鏡』の元暦元年(一一八四年)
 二月二十五日のところに、この申入れの大要は記載されている。
 廿五日、甲申。頼朝は政治むきのこと、軍事むきのことで朝廷で
 承認し実行してもらいたい意向を記し、その箇条を泰経朝臣のも
 とにつかわした。その文面はつぎのごとくである。
   言 上
   条 々
 一、朝務の事
  右のように従来の法規を守り、徳政を施されるべきと存じます。
  ただし諸国の受領等はもっとも計らい御沙汰あるべきとおもわ
  れますが、東国、北国画道の国々は、謀叛のものたちを追討す
  る間に、農民、庶民たちは進数して荒廃しています。今春から
  浪人たちを、もとの村郷に帰住させもとのまま安堵できるよう
  にはからいます。そうすれば来秋のころは、国司を任命さて、
  官公務を執行して宜しいとおもいます。
 一、平家追討の事
  畿内や近国で、源氏とか平氏と号して、弓矢をとって兵火をこ
  ととしているもの、および住人等は、弟義経の指図にまかせて
  従うべき由を発令してください。海路のたたかいは容易ではあ
  りませんが、早急に平家を追討すべき旨は弟義経に申し伝えて
  あります。勲功の恩賞については、そのあとで頼朝がこれを定
  めたいと考えています。
 一、諸社の事  
  わが国は神国です。往古よりの神領はそのまま安堵するつもり
  です。そのほか、こんどはじめて新しく加えられるべきものも
  あるかもしれません。ことに、鹿嶋大明神が京洛に勧請せられ
  ることを風聞に及んでいます。賊徒の追討は神慮が加わって加
  護するところによるものでしょうか。その上またもし諸社を取
  りつぶしうちこわしの必要があれば、功程にしたがって申しつ
  けられるべきですが、功をなして後に裁許されるようにして下
  さい。恒例の神事は、儀式をまもって、怠ることなく勤行させ
  ることを、ことに調えて下命あるよう願います。
 一、仏寺の間の事
  諸寺諸山の領地は、もとのままとし、恒例の変更をしてはなり
  ません。近年は僧侶たちがみな武勇を好んで仏法を忘れてしま
  い、慈悲の徳行もきいたことがなく、肝じんの有用もなく、か
  かることはきつく禁ずべきとおもいます。それに加えて、濫行
  不信の僧侶にたいしては、法会または講説のため召しだしては
  なりません。今後からは、頼朝の命令として僧侶たちの武装は
  法によって剥奪し、朝敵を追討する官兵たちに給与される旨を
  御承知おき下さい。
  右に申述べた箇条を言上する次第です。
     寿永三年二月日            
                        源 頼朝

  これらの条々は、強力な武装を背景に匂わせてはいるが、律令
 体制の象徴的な権力である朝廷にも、公家に帰属する社寺勢力に
 も根低から変革を加えるつもりがなかったことを暗示している。
 ただ、頼朝は瀬戸内海とその沿岸地帯をまだ制圧している平家の
 勢力が残存しているうちに、すでに在地の領主である武家居を義
 経を介して幕府の統制下に組織しようとしていることが推察され
 る。律令体制は、国管領地と荘園領地をふたつの柱にして、すで
 に錯綜をきわめていた。たとえば中央に〈本所〉と称する不在支
 配者かおり、その強力を代行する〈領家〉があり、そのしたに〈
 預所〉がいて〈下司〉と称する下廻りの差配がいるといった有様
 で、どこを抑えれば全体を制圧できるのかは、ひとことではつく
 すことができない状態にあった。頼朝がかんがえたのは、いわば
 〈下司〉から発達して在地の独立領有者になった武土層や〈下司〉
 たちの頭部にあった在地の族党を幕下に直接に組織することであ
 った。そして律令体制の上層に手を触れるにさいしては、きわめ
 て慎重で、むしろかれらの不安をなだめるのに気をつかいすぎた
 といってよい。あるいは幕下の領袖から入れ智慧されたかもしれ
 ないが、自身も律令体制の頂点にのぼりつめ、国家の在りどころ
 である朝廷を牛耳るという発想をとらなかった。むしろ関東の武
 家居を直接の基盤に、その頂点に位して惣領体制をととのえると
 いう方法を重くみた。この意味では、鎌倉幕府は、拡大された惣
 領制といってもよかった。在地の武家訓はそれぞれの地域で惣領
 を中心に一族一門を形成している。秤財、年貢などを吸いあげる
 のは、在地の惣領に任せればよかった。そしてこれらの惣領を幕
 府に仕侯させ、その所領を安堵させれば、営中にあって武家層を
 掌握することができたのである。それゆえ、比喩的に頼朝の鎌倉
 幕府の性格をいえば、武家層以下の庶民にたいしては〈国家〉で
 あり、律令国家にたいしては一種の水平な二重権力であったとい
 ってよい。頼朝個人も律令国家の与えようとした位階のうち征夷
 将軍のほかは、あまり歯牙にかけず、もともと受けるつもりはな
 かった。ただ、頼朝もまた、武力を背景に実力で全土を平定した
 ものであり、朝廷から発せられるどんな下命も幕府統領の視野の
 外にでたり、視野に反することは許さなかったが、これとても公
 的な制度としてではない。

                        この項つづく

 風蕭々と碧い時代



Jhon Lennon  Imagine



曲名: チャンピオン 1978年 唄: 谷村 新司
作詞/作曲: 谷村 新司

つかみかけた熱い腕をふりほどいて君は出てゆく
わずかに宸える白いガウンに君の年老いた悲しみを見た
リングに向う長い廊下で何故だか急に君は立ち止まり
ふりむきざまに俺にこぷしを見せて寂しそうに笑った
やがてリングと拍手の渦が
一人の男をのみこんで行った(Youlre King of Kings)
立ち上がれもう一度その足で立ち上がれ
命の炎を燃やせ

君はついに立ち上がった血に染まった赤いマットに
わずかに開いた君の両目に光る涙が何かを語った
獣のように挑戦者はおそいかかる若い力で
やがて君は静かに倒れて落ちた疲れて眠るように
わずかぱかりの意識の中で
君は何を考えたのか(Youlre King of Kings)
立たないでもうそれで充分だ
おお神よ彼を救いたまえ......


チャンピオン(King of Kings)」は、アリスの楽曲で、14枚目のシ
ングル。1978年12月5日に東芝EMIからリリースされた。 アリスのシ
ングルでは唯一のオリコン1位を獲得し、最大のヒット曲となる。曲
調は、これまでの楽曲のフォークよりも、むしろロックに近い。TBSテ
レビ「ザ・ベストテン」でも、当曲で最初で最後の第1位(4週連続)
を獲得した。2020年10月28日にMEG-CDで再発された

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