彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと伝えら
れる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦国時代の軍団編成
の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体さ
せて生まれたキャラクタ。
Anytime Anywhere ¥1/kWh era
【再エネ革命渦論 197 アフタ-コロナ時代 185】
● 技術的特異点でエンドレス・サーフィング
✺ ペロブスカイト太陽電池で「ビル屋根メガソーラー」
世界初!ペロブスカイト太陽電池メガソーラー発電実装高層ビル
11月15日、積水化学工業のペロブスカイト太陽電池が、東京都内に建設予定の高
層ビルに採用。世界初の「ペロブスカイト太陽電池によるメガソーラー発電機能
を実装した高層ビル」となる予定としている。サウスタワーは内幸町一丁目街区
開発の南地区に、2028年に完成を予定している地上46階、地下3階、高さ約230mの
高層ビル。
ここに定格発電容量1000kW以上のペロブスカイト太陽電池をスパンドレル部に設
置する計画で、世界初の「ペロブスカイト太陽電池によるメガソーラー発電機能
を実装した高層ビル」となる予定としている。従来、高層ビルの壁面における太
陽電池の設置については、荷重や風圧への対応や更新時のコストが多額になるな
どの課題が多く、採用が進んでいなかった。
一方、ペロブスカイト太陽電池は薄型かつ軽量で、曲面への設置が可能といった
特徴があり、これまで設置が難しかった場所にも導入が可能な太陽電池として今
後の普及が期待されている。なお、積水化学工業では、大阪本社が入居する堂島
関電ビルに自社開発のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を実装する計画。こち
らは2025年に完成予定で、日本国内における建物外壁へのフィルム型ペロブスカ
イト太陽電池の常設設置としては、国内初の導入事例になるとしている。
焦点距離を変えられるメタレンズ 光の偏光でレンズの焦点距離を制御
11月20日、理化学研究所(理研)は,光の偏光で焦点距離を制御できるメタレン
ズを開発。
焦点距離を変化させることが可能なレンズは,可変倍率のカメラのズームレンズ
や双眼鏡,光学顕微鏡,プロジェクターなどさまざまな光学機器に利用されてい
る。最近では,スマートフォンのカメラのような小型の光学ユニットにも可変倍
率の光学レンズが搭載されている。これまでは複数枚のレンズで光学系を構成し,
レンズ間の距離を機械的に変化させて実効的な焦点距離を定める手法が主流だっ
た。しかし,機械的にレンズを動かすため,すばやく焦点距離を変えることは困
難で,レンズの駆動機構が必要になるなど,光学システムそのものが複雑化,大
型化するといった課題があった。一方,メタレンズの中には,MEMS技術を利用す
るものも提案されていたが,同様に応答が遅く,機構が複雑化する課題を有して
いた。
【手法と成果】
特定の光の偏光にのみ応答するナノ構造を利用して、光の偏光を変えるだけで焦
点距離を変えられる、新しい焦点距離可変メタレンズを開発。
この焦点距離可変メタレンズでは、特定の方向の偏波を持つ光(偏光)にのみ応
答する異方的な特性を有するナノ構造が鍵となります。このナノ構造は直方体の
窒化ガリウム(GaN)で構成され、横幅(W)や奥行き(L)などのサイズを変化
させると、光波が照射された際にその光波に与える位相を変えることができる(図
1a)。さらにWとLが異なる非対称な構造を特定の方位に配列させることで、ある
方向の偏光のみに位相ずれを与えることができる。
図1 焦点距離可変メタレンズの構造
(a)メタレンズを構成する基本素子のナノ構造。サファイア(Al2O3)基板と基板
表面に形成された直方体の窒化ガリウム(GaN)とから構成されている。 (b)偏
光角θ=0°(x偏光)を入射した場合の集光スポットとその時の焦点距離fx。
(c)偏光角0°<θ<90°を入射した場合の集光スポット。 (d)偏光角θ=90°(y
偏光)を入射した場合の集光スポットとその時の焦点距離fy。
そこで、x方向の偏光に対してはレンズの形状と同じような位相ずれを与え、そ
れと直交するy方向の偏光にはランダムな位相ずれを与えてレンズとしては機能
しないようなメタレンズを設計します(図2a)。このような特殊な光学特性を付
与できるのはメタレンズの最大の特徴で、従来のガラスなどを研磨して作ったレ
ンズでは実現できない。このメタレンズにx偏光を照射するとレンズ内の位相ず
れによって光は焦点距離fxの位置に集光される。一方y偏光を照射しても光は集
光されずそのまま透過します(図2c)。このメタレンズを構成するナノ構造一式
をGroupAとします。一方、x偏光にはランダムな位相ずれ、y偏光には焦点距離fy
を持つレンズとして機能するナノ構造を設計することもできる(図2b、d)。こ
のメタレンズを構成するナノ構造一式をGroupBとする。
図2 焦点距離可変メタレンズの位相特性と生成される光スポットの強度分布
(a)x偏光(青)には凸レンズと同様の位相ずれがメタレンズによって加えられ集
光されるが、y偏光(赤)にはランダムな位相ずれが加わり光は集光されない。
(b)(a)とは反対にx偏光(青)にはランダムな位相のずれを与え、y偏光(赤)に
は凸レンズと同様の位相のずれを与えて光が集光される。
(c)(a)のメタレンズによって生成される集光スポット。x偏光は焦点距離fxで集
光される。
(d)(b)のメタレンズによって生成される集光スポット。y偏光は焦点距離fyで集
光される。
これらGroupAとGroupBの2種類のナノ構造を互いに影響し合わないように一つの
基板表面に集積化したメタレンズを設計。すると、このメタレンズにx偏光を入
射させると、焦点距離fxの位置に光が集光され、y偏光を入射させると焦点距離
fyの位置に光が集光。そして、斜め方向の偏光を入射させると、その偏光成分が
x方向とy方向に分解され、x方向の偏光成分はfxの位置に、y方向の偏光成分はfy
の位置へと二つの光スポットが形成される。トータルの光強度分布は二つの光ス
ポットの強度を足し算したものになる。このとき、足し算後の光強度分布の中に
元の二つのスポットのピークが現れないような、すなわち二つのピークの間にく
ぼみが発生しないような距離になるように、あらかじめfx、fyの値を設計してい
くと、足し合わされた光スポットは、fxとfyの間に一つだけピークを持つ光スポ
ットになります。そして、偏光方向をx方向からy方向に回転させていくと、スポ
ット位置もfxからfyへと連続的に変化する(図3)。
図3.焦点距離可変の原理
二つのスポットが足し合わされて一つの光スポットが形成される。(a)偏光角
度30°の場合の集光スポットの強度分布。(b)偏光角45°の場合の集光スポッ
トの強度分布。いずれの場合もx偏光とy偏光の二つの集光スポットの間にくぼみ
ができないように設計すると一つの集光スポットになる(黒実線)。
実験では、膜厚750nmの窒化ガリウム(GaN)層がサファイア(Al2O3)基板の表
面に形成された基板を使って、GaN層を電子ビームリソグラフィ法[3]ならびに反
応性イオンエッチング法[4]などを用いて成形し、開口数[5]0.1と0.01の2種類の
メタレンズを試作(図4)。
図4 試作した焦点距離可変メタレンズの構造
(a)メタレンズの電子顕微鏡写真。左下は光学顕微鏡写真。 (b)メタレンズの電
子顕微鏡写真を拡大したもの。GroupAの構造がピンク、GroupBの構造がブルーに
塗り分けられている。
試作した焦点距離可変メタレンズの光学特性の測定結果が図5です。図5aは光の
偏光方向を変化させた際に、光スポットの形状と位置がどのように変化するかを
示したもの。また図5cは偏光方向がx方向(θ=0°)、y方向(θ=90°)ならび
にその中間の斜め方向(θ=45°)の三つの場合について、光スポットの強度分
布を測定した結果です。図5aのグラフからは、偏光方向をx方向(θ=0°)から
y方向(θ=90°)へ変化させるにつれて、光スポット位置が24.5mmから28.6mmへ
と4.1mm変化していること、ならびに光スポットのサイズは大きくは変化してい
ないことが分かります。図5bは図5aの結果を基に偏光方向と光スポットの強度ピ
ーク位置(焦点距離に相当)の関係をプロットしたものです。赤線の実験結果は
偏光方向の変換に対してほぼ線形に焦点位置(焦点距離)が変化している。図5b
の青線は、理論計算で求めたスポット位置です。二つのグラフを比較すると試作
したメタレンズのスポット位置が理論計算結果とほぼ一致していることが分かっ
た。 また、焦点距離を変化させてもスポットの形状は常に円形でスポット形状
の崩れがないことも確認した。試作した焦点距離可変メタレンズの構造は、波長
532nmの緑色光を基準に設計したものだが、赤色から紫色の異なる波長の光に対
し焦点距離可変メタレンズとして機能することも確かめた。
図5 試作した焦点距離可変メタレンズの光学特性
(a)光の偏光方向を変化させた場合に生成される光スポットの強度分布。 (b)偏
光方向と光スポットの位置(焦点距離に相当)関係。赤線は実験結果の値、青線
は理論計算値。 (c)偏光角0°、45°、90°の場合に生成される光スポットの強
度分布。
【展望】
本研究により、小型かつ極薄で高速に焦点位置やズーム率を変化させられるレン
ズが実現された。このようなレンズは、スマートフォンのカメラや拡張現実ディ
スプレイ、顕微鏡、双眼鏡や内視鏡などの医療用光学機器など幅広い分野に適用
できる。人工構造の形状を設計すれば光機能を制御できるというメタレンズの設
計の柔軟性と併せて、特定のアプリケーションの要求に合わせて精密にカスタマ
イズされた高性能な光学機器が実現できると期待される。
【脚注】
1.Micro-electromechanical systems(MEMS):マイクロメートルスケールの微小な電
気機械素子から構成される部品で、アクチュエーターやセンサー、電子回路など
をシリコンやガラスなどの基板表面に集積化したシステムの総称。
2.メタマテリアル、メタサーフェス:メタマテリアルは、光の波長よりも細かな
構造を人工的に導入して、その構造と光との相互作用を利用して実効的な物質の
光学特性を人工的に操作した疑似物質。"メタ"は超越したという意味。メタサー
フェスは、物体表面のみにナノ構造を形成した2次元版のメタマテリアルで、人
の髪の毛の直径の数百分の一という極薄のナノ構造だけで光波を巧みに制御する
技術。
3.電子ビームリソグラフィ法:電子ビームが照射されると分解する樹脂を塗布し
た基板上に、電子ビームを集光して照射し、この電子ビームを任意のパターン形
状に走査することでパターンを感光性樹脂上に転写する。感光性材料を現像処理
すると、電子ビームで描いた通りの樹脂パターンが基板表面にできあがる。この
樹脂パターンをそのまま利用することもできるが、この樹脂をマスクとして基板
表面をエッチングして基板にパターンを転写することも行われる。
4.反応性イオンエッチング法:エッチングガスにマイクロ波などを照射してプラ
ズマ化し、このプラズマを被加工物質と化学反応させながらエッチングする手法。
単にプラズマで物質をエッチングするのではなく、化学反応を介在させることに
より、特定の物質のみを選択的にエッチングすることができる。
5.開口数:レンズの場合、そのレンズが円すい状に集光する光のうち最も外側の
光の入射角をθ、光が伝播している空間の屈折率(空気なら1.0)をnとしたとき
n×sinθで定義される量。レンズの明るさや分解能に直接関係し、開口数が大き
いほどそのレンズは明るく、分解能が高い。
【掲載論文】
Po-Sheng Huang, Cheng Hung Chu, Shih-Hsiu Huang, Hsiu-Ping Su, Takuo Tanaka, and
Pin Chieh Wu, "Varifocal Metalenses: Harnessing Polarization-Dependent Superposition f
or Continuous Focal Length Control", Nano Letters, 10.1021/acs.nanolett.3c03056
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世界最高!GaN HEMTの出力密度実現
11月17日、住友電気工業は、新たに開発した結晶技術を用いることで、出力密度
を従来の2倍に高めた窒化ガリウムトランジスタ(GaN HEMT)を開発。ポスト5G
基地局向け増幅器の小型化と高性能化が可能となる。
NEDOの委託する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の一環で
住友電気工業株式会社は、新規結晶技術を用い従来比で2倍となる高出力密度を
実現した窒化ガリウムトランジスタ(GaN HEMT)を開発しました。開発した
GaN HEMTは、新規結晶技術により、窒素(N)極性でGaN結晶の高品質化を実現
し、さらにn+ GaNの採用やハフニウム(Hf)系のゲート絶縁膜の形成技術を組み
合わせた。この結果、2A/mm超の最大電流と60V超の高耐圧を両立させ、N極性
GaN HEMTとして世界最高値である、周波数28GHzでの最大出力密度12.8W/mmを達
成した。本技術の開発成果は、ポスト5G情報通信システムの中核をなす、基地局
向け増幅器へ実装されることで、小型化・高性能化に貢献する。
【手法と成果】
新たに開発したN極性GaN HEMTについて、その電流電圧特性や高周波特性、出
力密度などを調べた。この結果、2A/mmを超える最大電流で60V以上の耐圧を達
成するなど、大電流と高耐圧を両立させた。また、高周波特性は測定周波数28G
Hzにおいて最大出力29.8dBmが得られた。トランジスタのゲート幅換算だと12.8
W/mmの最大出力密度になる。
図1.左はGa極性を用いたGaN HEMT、右はN極性を用いたGaN HEMTの構造
出所:住友電工、NEDO
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メチルアンモニウム鉛ハロゲン化物ペロブスカイトの中間相および膜形態
に対する塩化物の導入の影響 ②
高度に配向したペロブスカイト中間相の出現は、最終的なペロブスカイト膜の結
晶性の向上と相関している可能性がある。 図 66(a) に示すように、さまざまな
量の MACl を含む前駆体溶液から調製された最終ペロブスカイト膜の XRD 回折
パターンは、正方晶系 MAPbI3 構造によく一致する回折パターンを一貫して示し
た。46 FTO 基板に起因するピークは観察されたが、MAI、PbI2、MACl、または
PbCl2 などの中間相または前駆体材料に関連するピークは観察されなかった。明
らかに、前駆体溶液またはスピンされたままの膜内に存在する塩化物種の大部分
は、熱アニーリングプロセス中に効果的に除去された。 その結果、図 66(b) に
示すように、すべての膜はピーク位置に観察可能な変化がなく、ペロブスカイト
への変換に成功した。この現象は、図66(c)のTaucプロットでも確認されたよう
に、すべてのペロブスカイト膜が約800 nmでほぼ同一の吸収端を示した光吸収分
光法(図S1)によってさらに裏付けられている。0.0、0.2、および0.4モル当量の
MAClを使用して調製されたペロブスカイト膜のバンドギャップエネルギーは、そ
れぞれ1.600、1.601、および1.604 eVと推定されました。 これらの値はバンド
ギャップの変動が最小限であることを示すが、MACl 誘起膜ではわずかなブルー
シフトを観察したが、これはおそらくペロブスカイト格子内に微量に残っている
塩素原子に起因すると考える。
図6 (a) XRD パターン、(b) (110) 格子面に対応する XRD ピークの拡大図、
(c) Tauc プロット、(d) ペロブスカイト膜の熱アニーリングに関するヨウ素お
よび塩素原子と鉛原子のモル比 0.0、0.2、0.4モル当量のMAClを用いて調製。
さらに、図66(d)および表S6に要約されている誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-M
S)を使用した分析により、スピンしたままのペロブスカイト膜中に塩素原子が存
在しており、その濃度は最初は膜中の濃度と同等であったことが確認された。
前駆体溶液。 しかし、熱アニーリングプロセス後、塩素原子の量は大幅に減少
したが、ヨウ素原子の含有量は最小限の変化を示す。 同時に、MACl によって誘
導された最終ペロブスカイト膜中の塩素原子の量がわずかに増加した。これは、
図 66(c) の Tauc プロットで観察されたバンド ギャップ エネルギーのわずか
なブルー シフトの原因となる可能性がある。 これは、これらの膜のペロブスカ
イト格子内に非常に少量の塩素原子が残っている可能性があり、前駆体溶液中の
MACl 濃度が高くなるとこの量が増加する可能性があることを示唆している 13,17。
塩素の導入が考えられる場合、この問題は、アニール温度やアニール時間を長く
するなど、塩素誘起ペロブスカイト膜のアニール条件を最適化することで解決で
きる可能性がある。 それにもかかわらず、これらの観察は、ペロブスカイト製
造の初期段階で塩素を含む中間相が形成され、その後、アニーリングプロセス中
に塩素種が除去されてペロブスカイトに変態することを明確に示す。
ペロブスカイト組成の差異は無視できるほどであるにもかかわらず、MACl 誘起
ペロブスカイト膜は顕著な優先配向を示しました。 対照的に、MACl を含まない
ペロブスカイト膜は、貧溶媒堆積技術によって引き起こされる急速な結晶化特性
により、ランダムに配向した正方晶系 MAPbI3 によく対応する回折パターンを示
した。 逆に、前駆体溶液に過剰な MACl を導入すると、正方晶系 MAPbI3,46 の
(110) および (220) 格子面に対応する約 14° および 28° の 2 つの反射ピー
クが他の反射ピークよりも顕著になりました。 図S2に示すように、この独特の
特徴はMAClの量が増加するにつれて強化された。 図11(a)に示すように、MAClを
組み込んだペロブスカイト膜で観察されるこの強い優先配向特性は、中間膜で観
察される優先配向度の増加と一致。 基板に対して垂直に配向したペロブスカイト
中間相内の [020] 面の実質的な優先配向は、おそらく b 軸に沿ったハロゲン化
鉛八面体内の末端ヨウ素原子による塩素原子の置換によるものであり、熱処理中
に MAPbI3 に変態する。その結果、これにより、熱アニーリングプロセス後に、
立方晶系MAPbI3の(010)格子面の顕著な優先配向、続いて正方晶系M
APbI3の(110)格子面の顕著な優先配向をもたらす可能性がある。
MAClを組み込んだ前駆体溶液から得られる高結晶性ペロブスカイト膜の形成は、
各ペロブスカイト膜の表面形態の比較によってさらに確認された。 図77(a)は
MAPbI3に対して0、0.2、および0.4モル当量のMAClを含む前駆体溶液で調製され
たペロブスカイト膜の上面SEM画像を示す。ペロブスカイト膜の粒径分布は、組
み込まれた MAClの量が増加するにつれて顕著な向上を示し、ペロブスカイト形
成における塩化物の取り込みに関する先行研究と一致している。16,29,38。
MACl を含まない膜は約 300 nm の平均粒径を示した。0.2モル当量のMACl
を用いて調製された膜は、500nmを超える拡大された粒径を示した。0.4
モル当量のMAClを含む膜の場合、粒径は1.00μmを超えた。 この観察
は、図66(a)の初期のXRD結果を裏付けており、前駆体溶液にMAClを含めることに
より、より高い結晶化度を備えたペロブスカイト膜が得られることを示す。
図7.(a) 0.0、0.2、および 0.4 モル当量の MACl を使用して作製したペロブ
スカイト膜の上面 SEM 画像。 (b) 塩化物を含む場合と含まない場合の、ペロブ
スカイト中間相のペロブスカイトへの変態の概略図。
高度に配向した中間相から生じる塩化物誘起ペロブスカイト膜によって結晶性の
向上が達成されるということは、中間相の成長方向の制御がペロブスカイトの形
態に影響を与える上で極めて重要な役割を果たすことを意味します。前述したよ
うに、ペロブスカイト中間相結晶における Pb-I 鎖の水平方向の配向は、優れた
形態を備えたペロブスカイト膜を製造するための重要な要素として浮上する。
34 図 7(b) に模式的に示されているように、塩化物含有物のないペロブスカイ
ト膜とは対照的に、より小さな結晶子で結晶化する場合、整列した塩素原子は、
基板表面に対して垂直に配向した中間相の成長をさらに促進しする。 次に、熱
アニーリング中にヨウ素原子が徐々に置換されることにより、ペロブスカイト中
間相からペロブスカイト膜への変態が起こり、この変態が最終的に高度に結晶化
したペロブスカイト膜の形成につながる。 最後に、デバイス性能に対する塩化
物混入の影響を調べるために、フッ素ドープ酸化スズ (FTO)/コンパクト TiO2/
メソポーラス TiO2/ペロブスカイト/Spiro-MeOTAD/Au のアーキテクチャのPSCデ
バイスを作製し、特性評価した。ペロブスカイト層は、前述の測定で膜が実証し
たプロセスで調製された。
最後に、デバイス性能に対する塩化物混入の影響を調べるために、フッ素ドープ
酸化スズ (FTO)/コンパクト TiO2/メソポーラス TiO2/ペロブスカイト/Spiro-
MeOTAD/Au のアーキテクチャの PSC デバイスを作製し、特性評価した。ペロブ
スカイト層は、前述の測定で膜が実証したプロセスで調製された。 図88(a)は、
MAClを含む場合と含まない場合のペロブスカイト膜で調製された最良のPSCデバ
イスのI-V特性を示しています。 各デバイスの対応する光起電パラメータを表 1
にまとめます。MACl を導入せずに調製したデバイスは、ヒステリシス付きで
15.8% の電力変換効率 (PCE) を示した。 ペロブスカイト前駆体溶液に過剰な
MACl を追加すると、デバイスの性能が向上し、0.4 モル当量の MACl を含むデ
バイスで 20% を超える最大 PCE が達成された。 対応する MACl 比を持ついく
つかのバッチの PSCデバイスの各光起電力パラメータの詳細な分布も図 S3に示
す。短絡電流密度(Jsc)値の分布は、ペロブスカイト堆積に含まれるMAClの量
の間に明らかな違いを示さず、これは図S4に示すEQE測定によっても確認された。
これは、前述の UV-vis 吸収および XRD の結果で観察された傾向とかなり一致
しており、ペロブスカイト膜間の吸収端または格子定数のいずれにも顕著なシフ
トはほとんど観察されず、すべての膜がペロブスカイト膜の間で最も顕著な変化
を示した。 MAPbI3 に変換されます。 開回路電圧 (Voc) 値の分布は、0.0、0.2
、および 0.4 モル当量の MACl で調製したデバイス間で同様の傾向を示したが、
1.0 モル当量の MACl で調製したデバイスの Voc 値は比較的劣っていた。 一方、
フィルファクター (FF) 値の分布は、PCE 分布の分布に近い傾向を示した。 M
AClを含まないデバイスと比較して、0.4モル当量のMAClを組み込むこ
とにより、FF値が0.65から0.80に顕著に改善されたことが示された。
しかし、MACl をさらに追加すると、1.0 MACl のデバイスでは FF 値が減少した。
これは、PCE 値で現れた低下とよく一致している。これらの結果は、ペロブスカ
イト前駆体溶液への MAClの組み込みがデバイスの性能に大きな影響を与え、デ
バイスの性能の向上は FF 値の改善に起因する可能性が最も高いことを示唆す。
図8.( a )MAClを使用した場合と使用しない場合のペロブスカイト膜を使用
して製造されたPSCデバイスのIV曲線。 (b) MACl を使用しない場合と 0.4 モル
当量の MACl を使用して製造された PSC デバイスの断面 SEM 画像。
表1 MAClを使用して調製した場合と使用せずに調製した最高性能のPSCの
光起電力パラメータ
図8(b)は、MAClを含む場合と含まない場合のペロブスカイト膜で製造されたPSC
デバイスの断面SEM画像を示しす。 他の組成の追加の SEM 画像を図 S5 にまと
める。 すべてのデバイスにおいて、各ペロブスカイト膜の厚さはほぼ一定で、
通常は約 500 ~ 550 nm。 しかし、MACl の量が増加すると、ペロブスカイト膜
の表面の均一性が低下。 特に、1.0 モル当量の MACl を含むデバイスの場合、
その後の Spiro-OMeTAD層の厚さにばらつきが見られ、これが前述のデバイス性
能の低下の原因となる。これは、高レベルの MACl の取り込みによって結晶成長
が遅くなり、貧溶媒の堆積により通常引き起こされる急速な結晶化が妨げられ、
それにより均一な結晶化が妨げられることに起因すると考えられる。しかし同時
に、ペロブスカイトの微細構造には明らかな違いが現れた。MACl を導入せずに
ペロブスカイト膜を使用して製造されたデバイスは、さまざまな方向に小さな粒
子と顕著な粒界を示した。 逆に、MAClを組み込んだデバイスでは、主に垂直方
向に配向した粒界が減少し、ほとんど無視できまた。MACl誘起ペロブスカイト膜
を備えたデバイスで観察された粒界の減少は、図7(a)の上面SEM画像で観察され
た結果と一致して、ペロブスカイト粒子の拡大と密接に関連しているようだ。
粒界がトラップ中心として機能し、好ましくない電荷再結合を引き起こす可能性
があることは十分に確立される。したがって、それらはデバイスの性能に大きな
影響を与える。47,48 したがって、粒界の少ないペロブスカイト膜で製造された
デバイスは優れたキャリア輸送を示し、デバイスの性能が向上すると期待される。
さらに、さまざまな量の MACl を使用して調製したペロブスカイト膜のフォトル
ミネッセンス (PL) スペクトルと対応する減衰曲線の分析を実行しました。 TiO2
への電子注入による潜在的な影響を排除するために、石英基板上にペロブスカイ
ト膜を堆積しました。 図 S6(a) に示されているように、PL ピークは MACl を
含めると短波長側にわずかにシフトした。 これは吸収スペクトルで観察された
結果と一致しており、少量の残留塩素原子の存在によるものと考えられる。 さ
らに、MACl を導入していないペロブスカイト膜は、MACl を含む膜に比べて広い
PL スペクトルを示し、非発光再結合の可能性が高いことを示す。この観察は、
全体的な PL 量子収率 (PLQY) によってさらに実証され、MACl を含むペロブス
カイト膜は著しく高い PLQY 値を示す。これは、ペロブスカイト膜内のトラップ
や欠陥が少なく、より効率的な放射再結合プロセスを示唆。 表S6(b)に詳述され
ている対応する減衰曲線は、ペロブスカイト堆積中のMAClの取り込みがキャリア
寿命を延長することも示し、これはMAClの組み込みの有無にかかわらず製造され
たデバイスで観察されるデバイス性能の大幅な向上を効果的に説明している。
高品質の膜は PL寿命の延長に関連している一方、粒界ではPL 強度が低く、非放
射減衰速度が速くなる傾向があると提案されている。48 粒界の少ない高結晶性
ペロブスカイト膜の製造により、これらの非放射経路が減少するようだ。 ペロ
ブスカイト製造における塩化物導入の利点を強調する。
以上
スマートウォッチを利用して心不全の早期発見をめざす臨床研究開始
シンプレクス・ホールディングス(HD)が出資するSIMPLEX QUANTUM(シンプレ
クスクオンタム、東京・渋谷)と東京大学医学部付属病院(東大病院)は共同で、
腕時計型端末「Apple Watch」を用いた大規模臨床研究を2023年10月に開始した。
Apple Watchで計測する心電図のほか、身体活動能力や既往歴、生活習慣に関す
るアンケートを基に、心不全を検知する人工知能(AI)の有効性を検証する。
5000人の参加を目指す。
東大病院が研究への参加者の募集を開始した。研究に使うスマートフォンアプリ
「Heart Health Monitor(ハート・ヘルス・モニター)」や心電図解析用のAIプ
ログラムをシンプレクスクオンタムが提供する(図1)。 参加者はハート・ヘ
ルス・モニターを使い、Apple Watchで心電図波形を計測したり、身体活動能力
などに関するアンケートに回答したりする。こうして収集したデータから、研究
グループが息切れやむくみの症状などと心電図の関係を分析し、心電図から心不
全の重症度を解析するAIプログラムの有効性を評価する。研究期間は最長で24年
12月31日まで。心不全は心臓のポンプ機能が様々な原因で正常に機能しなくなる
状態を指す。患者数は増加を続けており、発症を未然に防いだり早期に発見した
りする対策が求められている。
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