A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

アメリカン・ポップ・アート展@国立新美術館 2013.9.22(sun)

2013年09月24日 00時33分35秒 | アート!アート!アート!


アメリカン・ポップ・アート展

2013年8月7日(水)~10月21日(月)
国立新美術館 企画展示室2E

1960年代ニューヨークを震源地に世界を席巻したポップ・アートの重要作を網羅した展覧会。すべてコロラド州を本拠地とするジョン・アンド・キミコ・パワーズ夫妻の個人コレクションである。出版業を営むパワーズ夫妻はポップ・アートがまだ評価を確立する以前からその真価を見抜き、作家を直接支援することによって、個人コレクションとしては世界最大級のポップ・アート・コレクションを築き上げた。今回展示されたウォーホル、リキテンスタイン、オルデンバーグ、ローゼンクイスト、ウェッセルマン、ラウシェンバーグ、ジョーンズらとはプライヴェートでも親しく付き合い、誕生日などにプレゼントされた作品もある。206点に上る膨大なコレクションは殆どすべて、コロラドの邸宅の壁に飾られて普段の生活を彩っているという。その邸宅たるや、日本では考えられない広大な敷地の豪勢な建築で、夫妻が相当の資産家でありセレブであることは間違いない。芸術のパトロン&コレクターになるには、潤沢な財産と社会的地位が必要なのである。パワーズ夫妻を見習って、芽が出る前の新進芸術家に先行投資しよう、と思われる向きもあろうが、都内のマンションの一室に住む身ならば無理しない方がいい。分不相応という言葉はアナタのためにある。



音声ガイドで小林克也のナレーションを聴きながら鑑賞するうちに、美術評論とは妄言虚言と紙一重であることに気づいた。例えばジャスパー・ジョーンズのアメリカ地図を素材とした絵については「画家の出身地ジョージア州を含む右下4分の1が違う素材で描かれているのは、人種差別が根強いこの地帯を他の地区と分けて強調するため。絵を逆さにするとアメリカ国旗に見えることに画家の強烈な糾弾精神が反映されている」といった具合。一瞬なるほど!と頷いてしまうが、ジョーンズが果たしてそこまで意図して描いたのかどうか? 音楽の場合、評論家やリスナーが深読みの挙げ句の妄想分析をしても、アーティスト本人に尋ねると、よっぽど計画性がある作為的なミュージシャン、例えばロバート・フリップやフランク・ザッパならいざ知らず、大方が「やってみたらこうなった」とか「このほうがカッコいいじゃん」とかと言うのが事実。間章や阿木譲にしろ、北村昌士や秋田昌美にしろ、竹田賢一や山崎春美にしろ、『ブリティッシュ・ロック 思想・背景・哲学』の著者:林浩平やこの私にしろ、リスナーは勝手に膨らませた妄想について、持てる知識を総動員して、如何に説得力のある妄言虚言を加えられるか、というのが音楽評論の醍醐味と言って良かろう。現実を表現者が独自に解釈・咀嚼し抽象化するゲージュツに答えは存在しない。だから評論する際に、作者の意思は不必要、いや邪魔である、と言い切ってもいい。評論自体がゲージュツから独立した表現行為なのである。弁が立てば誰でもなれる音楽評論家に比べ、美術評論家は美学・芸術学を専攻したエリートが多いから偉そうに見えるが、内実はもっともらしい学理を振りかざして自分勝手な妄想に権威を与える独裁的偏執狂に違いはない。すなわち目くそ鼻くそなので、鵜呑みにしてはならない。



この展覧会の目玉はポップ・アートの「モナ・リザ」と呼ばれる、アンディ・ウォーホルの最高傑作「200個のキャンベル・スープ缶」だと謳われている。ひとつひとつ筆で描いたウォーホルの努力は買うが、ぶっちゃけコピペした方が楽じゃね?と思う者は多いに違いない。ごもっとも、オレも手書きはゴメンである。コンピュータと100,000,000,000,000桁の計算問題のスピードを競うようなもので、絶対勝ち目は無い。手書きの方が味があると言い張るのは前時代的な石器人だけだ。キャンベル・スープ缶から半世紀も経った現代では、ポップ・アートの意義も方法論も異なるのが当然だろう。




●その夜、池袋で開催された山崎春美トークショーの現場にポップ・アートが応用されていたことは偶然ではない。





ポップとは
ポピュラーなのだ
ポップコーン

This Is Pop Is This?



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裸のラリーズが鳴り響くファッション・ショー~LAD MUSICIAN「MINIMAL ART ROCK 77」

2012年11月21日 00時37分38秒 | アート!アート!アート!


このブログでファッション・ショーの紹介とは読者の方には意外かもしれない。実際書いている本人にも想定外である。

今朝ツイッターをチェックしていたら「裸のラリーズからイメージしたファッション・ショー」についてのツイートを発見しリンク先へ飛んだら何と!!水谷孝さんと灰野敬二さんのコスプレのオンパレードで思わず電車の中でひっくり返りそうになった。

LAD MUSICIAN(ラッド・ミュージシャン)という創立12年目のユニセックス・ストリートブランドで、コンセプトは「音楽と洋服の融合」だという。ファッション音痴なので下手なことは書けないが、音楽、特にロックとファッションは切り離せない関係にあることはいうまでもない。山本寛斎、三宅一生、ミチコロンドン、マリー・クワント、ポール・スミス、ヴィヴィアン・ウェストウッドなど音楽と関わりのあるファッション・ブランドは数多い。プラスチックスはファッション・デザイナーやスタイリストによるバンドだった。「ファッションと音楽」でググったところ、ファッション系サイトの記事が見つかった。また高橋幸宏さんとユナイテッド・アローズ顧問の対談も面白い。

こうしたファッション業界からのラヴコールに対してロック界からは「ファッション野郎にロック・スピリットが分かってたまるか!」という意固地な思い込みがあることは確かである。多くのロック・ミュージシャンとファンにとってファッション業界はハイソな別世界であり、心の中ではファッション・モデルに憧れながらも、ロック・セレブ以外には無縁の人種として排斥する方向にあった。サイケもパンクもグランジもファッション界との相互作用により世界的ムーヴメントになったのは事実なので、ロック界の最後の砦がフリージャズとアングラ音楽だったのではないだろうか。しかし遂にコアなロック・ファンの聖域である裸のラリーズがファッション界に取り込まれてしまった!こうなったら潔く負けを認めよう。リッチな異母兄弟であるファッション界に頭を垂れて許しを乞うしか無かろう。



ファッション・デザイナー黒田雄一氏によるLAD MUSICIANは今までもフェンダーとコラボしたり、ファッション・ショーに若手ロック・バンド、ノーヴェンバーズの生演奏をフィーチャーしDOMMUNEで配信したりとコンセプト通りの革新的試みを実行している。裸のラリーズにインスパイアされ「MINIMAL ART ROCK 77 Les Musician Denudes」(!)とタイトルされた2013年春夏コレクションも黒田氏のロックへの拘りが結実したものである。興味深いのは入手が容易なブート音源ではなく、ラリーズの数少ない公式音源「'77 LIVE」を使ったところだ。黒田氏が音楽を本当にリスペクトしていることが良く分かる。氏は間違いなく灰野敬二ファンでもある。一見無縁な暗黒のロッカーと華やかなファッション・セレブの出会いが化学反応を起こし音楽を超えて世界的カルチャーに影響を与えることになれば痛快至極である。




▼女性アーティストの世界ではファッションと音楽の関係は常に密接であった。



漆黒が
スポットライトに
照らされる

単行本「捧げる 灰野敬二の世界」が発売された。ウラゲツさんの書評をご一読いただきたい。
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この絵の画材は何かわかる? ブラジル・アーティストのマリファナ・アートが話題に

2012年09月24日 00時26分24秒 | アート!アート!アート!


ここに1枚の絵がある。セピア色が美しいステンシル画だ。色にムラがあるのがまたノスタルジックで味わいがある。

一体どんな画材を使ったらこのような味が出せるのだろう。なんとこの絵は、マリファナ(大麻)の煙で描いたというのである。

マリファナ・アートを試みているのはブラジルのアーティスト Fernando de la Rocqueさんだ。彼は世の中にマリファナについての議論を巻き起こしたいとしているそうだ。

絵の描き方は以下のとおり。まずステンシルの板を紙の上に置き、そこに煙を吹きかける。1週間置いておくとアートが完成するという。Fernando de la Rocqueさんの作品を報じたメディアは「マリファナの煙の成分からして1週間放置しただけで紙に色が定着するというのは考えにくい。恐らく特殊加工された紙か薬品など彼の "企業秘密" があるのでしょう」としている。

この"画材"については、いくら違法でない地域だったとしても賛否は両論だ。「彼の議論を巻き起こす」という点では成功したと言えるのではないだろうか。元手もかなりかかるので同じ手法を用いる芸術家が今後現れるかどうかもわからない。しかし、彼の作品は1枚2500ドル(約19万5000円)の価値がつくほど評価されているそうだ。
(Rocket News 24)



大麻吸い
ラリって描く
ラリアート

うらやまし、合法トリップ芸術家。

▼"キャプテン・トリップ"の芸術的演奏

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灰野敬二/東野祥子/山川冬樹etc.~DANCE TRUCK PROJECT@横浜 新港ふ頭入口前 特設会場 2012.9.9 (sun)

2012年09月11日 00時33分06秒 | アート!アート!アート!


"トラックの後部を使用するモバイルの「ダンス・トラック・プロジェクト」。
港湾都市・横浜の水際に、ダンスを軸に、美術や映像、照明のインスタレーション、LIVE演奏/DJなど、3日間出現する特設の異空間。独自の身体感でダンス/音楽/映像/美術を創りだすアーティストたちが、トラックの極小スペースの特異な上演状況や都市の景観からインスパイアされたパフォーマンスを展開します。
ポートランドの総合芸術祭「TBAフェスティバル2011」で同プロジェクトに参加した東野祥子とOffsite Dance ProjectとのCo.キュレーションにより、2009年に米国ジョージア州アトランタ市のNPOと連携し、日本で初開催します。"(DANCE TRUCK PROJECT HPより)

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横浜は毎年恒例のジャズ・プロムナードや横浜トリエンナーレなど文化事業が盛んに行われている街だが、今年の7月12日~10月6日の約3ヶ月に亘って「ダンス・ダンス・ダンス at ヨコハマ2012」と銘打った大規模なファスティバルを開催中である。100を超えるイベントが市内各地で開催され横浜をダンスの街に変える。バレエ/コンテンポラリー/ストリート/ワールド/チア/ソシアル/ワークショップなど様々なジャンルのダンスが展開される。

その一環でダンス・カンパニーBaby-Qを主宰する東野祥子嬢を中心として開催されたのが「トラック・ダンス・プロジェクト」。説明にある通りトラックの中でアーティストがパフォーマンスするという企画だが、実際に会場に行くまでどういうものか想像がつかなかった。

10年位前は赤レンガ倉庫のジャズ・クラブ「モーション・ブルー」によく通ったものだが、みなとみらい線が出来て以来この界隈に来ることは滅多に無くなった。馬車道を海の方へ歩いて10分、暗くて足元もおぼつかぬ空き地に不思議なオブジェが浮かび上がる。係員が懐中電灯で地面を照らして観客を誘導している。説明にあるように正に水際に突如出現した異空間。


好天にも恵まれ50人以上の若者で賑わっている。舞踏/ダンス公演では"観客全員知り合い"的な雰囲気があり多少のアウェイ感を感じることがあるが、東野嬢主宰のイベントはとても開放的で初めてでも寛げて居心地がいい。しかも野外で海辺の風が頬に当たり最高の気分。地面が石だらけだったので簡易チェアを持参して正解だった。出演者は所謂舞踏家ではなく、灰野さんを始め幅広い活動をしている個性派パフォーマーばかりだ。

一番手が灰野さん。事前にスタッフのツイートでパーカッション&ダンス・ソロだと判っていたのでシビアな音との対峙ではなく、リラックスして灰野さんの動きを楽しむ気持ちで観れた。真っ暗な中にぽっかり空いた四角い空間でパフォーマンスする姿はまるで映画を観ているようだが、実際にその場で生で演じているのが不思議で幻想的。タンバリン、シンバル、ウォーターフォン、鉄琴など様々なパーカッションを叩き舞う20分間。数年前横浜トリエンナーレのイベントで美術館でパーカッション&ダンス・ソロを観たことを思い出した。



2番目は東野祥子嬢の「the VOID」と題された演目。何度観てもキビキビした動きとしなやかなバネに感心するがこの日も四角い舞台一杯に使っての弾け飛ぶようなダンスが素晴らしかった。月並みな表現だが正に"元気をもらえる"ダンスである。



インターミッションとしてoff-Nibrollによる映像インスタレーションがあり、その間にビンゴ・カードが観客に配られる。プレゼント大会でもやるのかと思ったら、続いて登場した鉄割アルバトロスケットのパフォーマンスの小道具だった。3人のメンバーによるシュールなショートコント6連発。ギャグがかなりスベッていたので売れないお笑い芸人かと思ったら、意外に真面目なパフォーマンス集団のようだ。



4番目は白井剛/Dillによる「ツキワクモノス」。Dill氏がキーボードとギターを演奏し白井氏がパフォーマンス。コンセプトがあるようなないような微妙な展開。即興アンビエント・ダンスとでも呼ぼうか。音響・照明効果を活かした演出が良かった。



最後は山川冬樹氏。灰野さんと共演したり日本の前衛音楽シーンを描いた映画「WE DON'T CARE ABOUT MUSIC ANYWAY」に出演したりと現代アート界の注目株である。上半身裸で胸にライト灯を付けセッティングを完了すると音を鳴らしたまま会場の外へ駆けて行ってしまった。観客が戸惑う中、何食わぬ顔で戻ってきてステージへ。ホーメイを歌いながらのギターを2台使ったパフォーマンスは観て良し聴いて良しの素晴らしいものだった。



灰野さん目当だったが、これほど開放感があってバラエティに富んだイベントなら誰が出演しても面白いに違いない。横浜という異国情緒たっぷりの街に相応しいイベントだった。

ダンスとは
踊るだけでは
ありません

唯一の心残りは屋台のカレーが品切れで食べられなかったことである。




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田名網敬一 個展~新作アニメーションとドローイング@NANZUKA 2012.7.13 (fri)

2012年07月14日 01時05分50秒 | アート!アート!アート!


日本を代表するサイケデリック・アートの巨匠、田名網敬一さんの新作個展が今年も渋谷のアート・ギャラリーNANZUKAで開催されている。今年の個展は、来週21日には76歳の誕生日を迎える高齢ながら、年々エスカレートしていく色彩と異形が"不可避的に爆発するプラスティック(The Exploding Plastic Inevitable by Andy Warhol & Velvet Underground)"状態で壁一面を覆い尽くしている。昨年は大きな金魚少女のオブジェがギャラリーの真ん中に鎮座していてそれに神経を集中することが出来たが、今年は田名網さんの脳内のジャングルに迷い込んだような圧倒的な脅迫空間にただ呆然とするしかない。どの絵が特別いいかではなく100枚近く貼り巡らされたドローイング全てが一体となって最新の田名網ワールドを形成しているのである。


奥の部屋では新作アニメーション「Red Colored Bridge」が上映されている。時間が早かったので一人きりで目くるめく映像美を堪能することが出来た。「この世とあの世を渡すクロスポイントとしての橋」は金魚と少女と並ぶ彼の長年のテーマであるがその複雑怪奇な世界は何度観ても迷宮巡りで飽きることがない。幻視者特有の狂気に満ちた眼差しは我々凡人には理解できない物事の本質の裏の裏を垣間見てしまった者だけに備わったものである。



会場では田名網さんの素晴らしい画集が数冊販売されているが、毎年買おうと思いつついつも諦めてしまう。日常生活に田名網さんの世界を持ち込むことで今の生活全般が大きく変質してしまうかもしれない、という懸念が頭から去らないのである。草間彌生さんの7歳年下であるが、どちらも日常を裏返す危険に満ちた芸術家である。"芸術は現実を映す鏡"と言われた時代からもはや100年以上経ち、シュールレアリズムもダダイズムもポップアートも歴史の1ページに収まってしまった現代に於けるアートの意味とは何なのか、そんなことをつらつら考えてしまう展覧会だった。

「私にとってドローイングすることは食べることと同じことかもしれない。色鮮やかな食卓をながめながら、空腹が満たされてゆく時のなんともいえない満足感と幸福感、ちっぽけな悩みなど一瞬にして消し飛んでしまう。筆から放たれた線描は、私の意志とは関係なく空間を自由自在に飛翔し、想像外の展開をみせるのである。目の前に散乱した多彩なドローイングをみていると、御馳走のならんだ食卓をみているような幸せな気分になる」。-----田名網敬一

田名網さん
脳裏のスクリーン
見せてケロ

田名網敬一 新作個展
日程 : 2012年7月7日(土) - 8月5日(日)
会場 : NANZUKA [ACCESS MAP]
営業時間 : 火曜日-日曜日 11:00 -19:00(月祝定休)

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贋作と再創作~フェルメール光の王国展@フェルメール・センター銀座

2012年05月11日 00時43分57秒 | アート!アート!アート!


先日銀座ヘ行く機会があったのでフェルメール・センター銀座で開催されている「フェルメール光の王国展」を観てきた。

17世紀オランダの人気画家ヨハネス・フェルメールの全37点の作品が一堂に会した作品展として話題になっているものである。GWという事もあり会場はかなりの人手で、この展覧会の為に制作された宮沢りえと小林薫による音声ガイドが聴けるヘッドフォンを耳に展示作品をゆっくり観て回る人が多かった。

もちろんオリジナルではなく監修者である分子生物学者の福岡伸一氏により"リ・クリエイト"という最新デジタル技術を駆使して蘇らせた作品である。ホームページの解説によれば"「re-create」とは、複製でもなく、模倣でもない。あるいは洗浄や修復でもない。「re-create」とは、文字通り、再・創造である。作家の世界観・生命観を最新のデジタル画像技術によって翻訳した新たな創作物である。"とのことである。

しかし!"リ・クリエイト"には「本物=オリジナル」のありがたみが全くない。所詮はやはり複製なのである。例えば油絵特有の絵の具の匂いがしない。美術展を観に行く理由はただ単にその絵画を鑑賞するだけではなく、本物にしかない「重み」を味わうことではないだろうか。例えそれが観る者の自己満足的な思い入れであっても。絵を見るだけだったら画集やCD-ROMやDVDで充分である。主催者のフェルメールの全作品を展示したいという熱意には敬意を払うが、お金を払って偽物を観せられるのには納得がいかなかった。

フェルメールは贋作事件で有名でもある。ハン・ファン・メーヘレンという男が敵国ドイツにオランダの至宝を売却したことが1945年に発覚して国を挙げての大スキャンダルになった。しかもメーヘレンはそれが自分が描いた贋作だと告白したのである。彼の手による贋作「エマオのキリスト」はオランダの美術館に過去最高額で購入されていたともいう。また1970年以降は度重なる盗難事件にも見舞われており、この類い稀な才能を持った画家の作品は幾多の試練を経験してきた。そんな伝説的な作品群であるから"再創作"による作品展というのが成り立つのだろう。

ロックやポップスではアマチュアによる「コピー=贋作」とプロによる「カヴァー=再創作」は別次元のものと受け止められる事が多い。それならば初音ミクなどボーカロイドによるカヴァーはどうなのか、というとそれはそれで別のジャンルと呼べる創作物だ。

美術の世界では森村泰昌氏による自らが有名な絵画や有名人に成りきるセルフ・ポートレイトは手法的には音楽で言えばカヴァーだが、森村氏のオリジナルな表現法として高く評価されている。

デジタル技術の進歩によりどんなものでもクローン的なコピーが可能な時代に本当のオリジナルを表現する事は難しくなった。コピペやリツイートにより本来誰の創作だったのかが限りなく不明瞭になっていく。



捏造と
贋作に満ちた
この世界

このブログだってどれが本物でどれが偽物なのか分かりませんよ!



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鼠派演踏艦Ω公演・宮下省死「人間・魔苦辺主」@目白庭園内・赤鳥庵 2012.5.6 (sun)

2012年05月08日 00時42分58秒 | アート!アート!アート!


昨年12月に続く鼠派演踏艦Ω-舞踏シリーズ・百八の煩悩ソノ弐-「人間(ひとま)・魔苦辺主(まくべす)」(赤鳥版)。
61歳の舞踏家、宮下省死さんの108回予定されているシリーズ公演の第2回目である。原作はウィリアム・シェイクスピア、音楽は何と阿部薫だという。フライヤーによれば宮下さんが土方巽さんのもとで舞踏を始めた19歳の頃、街路で踊っていた時に阿部さんと知り合い、20歳の時早稲田大学の屋上で阿部さんがバスクラリネットを吹き、牛の生首を背負って踊ったのが宮下さんの最初の公演だったという。写真は1971年の三里塚幻野祭で阿部さんのハーモニカ演奏中に牛の生首を背負って舞台で踊る宮下さんである。終演後宮下さんに聞くと、三里塚でのパフォーマンスは予定されていたものではなく、知り合いだった阿部さんのステージに飛び入りしたのであり、この写真も宮下さんとは知らず撮影されたものだそうだ。このフェスティバルの模様を収録した『幻野 幻の野は現出したか~’71日本幻野祭 三里塚で祭れ』というアルバムには阿部薫の名前はクレジットされているが演奏は収録されていないのでこの写真だけでも日本のロック/ジャズ史上とても貴重なものである。

シェイクスピアの四大悲劇のひとつである「マクベス」は勇猛果敢だが小心な一面もある将軍マクベスが妻と謀って主君を暗殺し王位に就くが、内面・外面の重圧に耐えきれず錯乱して暴政を行ない、貴族や王子らの復讐に倒れる、というストーリー。宮下さんの演出はマクベスの人間的な内面に焦点をあてており、その心境の変化に応じて阿部さんの7種類の楽器の即興演奏が使い分けられ、衣装もその度に着替える。前回の同じくシェイクスピア原作による「瓦礫の森のリア」では石と木の枝と急須を小道具に使った舞台だったが、今回は仮面と刀がマクベスの狂気の象徴として使われた。場面展開のための着替えもうすら赤い光の中で観客に見せるという曝け出し方が宮下さんらしい。最後に閉めてあった雨戸を全開にし、まぶしい陽光の中断末魔の絶叫を聞かせるシーンでは例えようも無いカタルシスに恍惚となった。



マチネとソワレの昼夜2回公演で私が観たのはマチネだが、夜はまた違った感動のある舞台だったに違いない。私はそのまま新大久保で灰野さんの出演するイベント(明日のブログでレポ予定)ヘ行ったのだが、宮下さんと阿部さんと灰野さんという同時に幻野祭に出演していた三者を一日で体験するのも何かの符号だろうと思い感慨ひとしおだった。

四十年
踊り続けて
留まらぬ

宮下さんの次回公演は11月に「子規の四季の死気と、S骨とM肉の奇妙なる恋愛関係。」というタイトルのオリジナル舞踏になるとのこと。



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土方巽命日~深遠なる舞踏の世界

2012年01月22日 00時43分28秒 | アート!アート!アート!


1/21は舞踏家の土方巽(ひじかたたつみ)氏の命日。それにちなんで暗黒舞踏やモダンダンスをご紹介したい。パフォーマンス面でロックやジャズにも影響を及ぼした身体芸術の世界をお楽しみいただければ幸いである。最初は土方巽氏出演の映画「江戸川乱歩全集~恐怖奇形人間」。



明治39年に生まれ100歳を過ぎても踊り続けた故・大野一雄氏は土方氏とともに暗黒舞踏の誕生に貢献した。



1972年麿赤兒氏を中心に結成された大駱駝艦は金粉ショーでセンセーションを巻き起こした。現在麿赤兒氏はテレビ・ドラマや映画で悪役俳優としてもお馴染みである。



1975年大駱駝艦のメンバーだった天児牛大(あまがつうしお)氏により結成された山海塾は、80年代から積極的に海外公演を行い、世界中に「Botoh」の存在を知らしめた。



土方氏、大野氏と共に前衛舞踏活動を推進してきた笠井叡氏も重要な舞踏家のひとり。密教、神道、古インド神秘思想、キリスト教神秘主義、グルジェフ、パタイユなど神秘主義にも造詣が深く「天使論」などの著作を発表している。



暗黒舞踏の流れとは別に登場した田中泯氏は80年代に舞塾を主宰し若手舞踏家/表現者を育成すると共に他ジャンルとの共演を積極的に行い舞踏表現の幅を広げた。山梨県の農村で農業と舞踊の同時実践を行いつつ、最近は「場踊り」と題する街頭パフォーマンスを行っている。俳優としても活躍中。映像は”即興の鬼”=故デレク・ベイリー氏との共演。



最近の舞踏の動き1:1989年に不破大輔氏を中心に結成された大所帯フリージャズバンド、渋さ知らズは舞踏ダンサーも帯同した祝祭的パフォーマンスでジャズを超えた超音楽バンドとして国内外で大きな人気を誇っている。



最近の舞踏の動き2:ダンスカンパニーBaby-Qを主宰する東野祥子嬢の踊りはスピード感と感情表現に満ちた新感覚派。Hair Stylistics、Doddodoなど日本の若手ミュージシャンとの共演も多く要注目。


(この記事は1/21 Facebookのコミュニティー「ロックっていいね!倶楽部」への筆者による投稿をまとめたものです。)

舞踏とは
意識の解放
目指してる

その他にも当ブログで紹介した元グンジョーガクレヨンの園田游氏、鼠派演踏艦Ωの宮下省死氏、工藤丈輝氏などユニークな舞踏家は数多い。その深遠な世界にぜひ触れてほしい。



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宮下省死「瓦礫の森のリア」@目白庭園内・赤鳥庵 2011.12.9 (fri)

2011年12月11日 00時29分44秒 | アート!アート!アート!


以前ブログに書いたが、私は高校~大学時代、鼠派演踏艦というアングラ劇団の公演を定期的に観に行っていた。池袋駅東口から歩いて5分の木造民家を改築した劇場でひっそりと上演される暗黒劇は怪しい秘密の香りがして溜まらなく魅力的だった。しかし就職してからは観に行くこともなく25年の時が過ぎてしまった。

先日観に行った園田游さんの舞踏公演の時配布されたチラシで宮下さんが鼠派演踏艦Ωの名の下で公演を行うことを知り、その場で関係者の女性、たぶん当時アルチュール絵魔の名前で活動していた奥さん、に予約を申し込んだ。

鼠派演踏艦Ω公演ー舞踏シリーズ・百八の煩悩ソノ壱ー「瓦礫の森のリア」。現在61歳の宮下さんが始めた新しい舞踏シリーズの第一回である。何とタイトル通り108回の公演を企画しているというから凄い。年二回のペースで公演しても114歳までかかる事になる。何と無謀で壮大な計画....

赤鳥庵は日本庭園の中にある純和風の建築である。その20畳くらいの広い日本間を舞台に上演される。どこにこんなにファンがいたのか客席は満席。舞踏マニアや関係者が多いのかあちこちで「久しぶり」という挨拶が聞かれる。中には静岡からわざわざ観に来た人もいるようだ。

部屋が真っ暗になり仄かな照明の中に頭に月桂樹の冠を被り羽織を着た宮下さんの姿が浮かび上がる。安っぽいラジカセから流れる音楽はエスニックなフリージャズ。これは30年前と同じだ。今回の舞踏はシェイクスピアの「リア王」が題材でリア王と三人の娘の話をベースにしているが、これを奇怪な暗黒劇にアレンジする手腕はさすが舞踏歴40年の宮下さん。石と木の枝と急須を三人娘にたとえた一人芝居だ。グロテスクな踊り、ユーモアを含んだ語り、観る者を煙に巻く展開、と鼠派ならではのユニークなパフォーマンスに酔い痴れた。



次回ソノ弐は来年5月「マクベス」を題材にした演目を予定しているとのこと。今度は大学の同級生で鼠派に役者として参加した友人も誘って観に来よう。帰りに宮下さんに挨拶をしたらその友人のことを覚えていた。

舞踏家は
絶滅危惧種と
言われてる

舞踏の創始者、土方巽さんの意志を引き継ぐ宮下さんの舞踏はアングラ文化が好きなら観に行って損はない。

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園田游「ごめんください」@中野テレプシコール 2011.11.13(sun)

2011年11月15日 00時41分22秒 | アート!アート!アート!


[テレプシコール企画]舞踏新人シリーズ第14弾3daysの最終日に園田游さんの舞踏ソロが開催された。
グンジョーガクレヨン解散後舞踏家として何回か公演を重ねてきた園田さんだが、舞踏家に専念してまだ1年なので、舞踏の世界では「新人」という訳だ。

「27年福岡生まれ。ごめんなさい 此処にはなにもありません。舞踏家表明一周年皆さんとの鏡面効果で自分の偶像を仕立てています。ごめんください。全てをオーディエンスとし、そこに加わることで完成する、責任のようなモノ。いや そうじゃない。24時間365日踊り続ける。テルプシはイカ天か?オレは馬に蹴られて死んでしまうのか?」(公演フライヤーより)

「『場』の中心で生け贄にとなるのは私ひとりです。さらにしかし、『場』を創るのは其処に居合わせた人々ということになります。」(私信より)

『場』を創るために集まった観客は50人くらい。円形に並べられた座席は満席である。舞踏ファンというのは年齢50代半ばくらいで男性が圧倒的に多い。一眼レフカメラ持参の人も結構いる。その中に異形人のRenka嬢の姿も。観客に囲まれた円形舞台の真ん中で生け贄が踊る。

照明が落とされ4人の男性に担ぎ上げられた裸の園田さんが登場する。僅かな光の中でフロアに寝転がってゆっくりした動き。枯れ枝のように細い身体だが極限まで鍛え上げられているのがよく分かる。皮膚が痺れるような緊張感が伝わってくる。30分ほど暗闇で蠢いたところで5分間の休憩。

後半は女物のスリップをまとって客席の後ろから登場。その前に座った客は園田さんの後ろからの登場に気が付かず笑いを誘う。前半の冷徹さとは打って変わって僅かにユーモラスな動きで円の中を舞う。時々観客に触れたり問い掛けたりする。私も園田さんが差し出した木の枝を受け取りまた渡すという形でパフォーマンスに参加。後で園田さんが「テレパシーが通じたように受け取ってくれたから良かった」と褒めてくれた。決してスピードのある踊りではない。情念の蝋燭の火が燃えるように時間感覚を忘れさせる舞踏である。後半は1時間のパフォーマンス。満席の観客から盛大な拍手。観客と一体となった見事な『場』が現出した。園田さんは素晴らしい表現者である。



舞踏家の
信念通じ
場ができる

配布されたチラシの中に鼠派演踏艦Ωの宮下省死さんの舞踏公演の告知を発見。以前書いたが私が高校~大学時代に通った劇団のリーダーである。30年ぶりの邂逅。これまた楽しみが増えた。
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