A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【地下ジャズDiscReview】『ドットエス(橋本孝之&サラ)/ カタストロフの器』~是は行動主義者の瓦礫の未来か?

2021年03月21日 00時03分46秒 | ネコ動画


『.es (Takayuki Hashimoto & sara) / Vessel of Catastrophe』
text by 剛田武 Takeshi Goda

レーベル:Nomart Editions
品番: NOMART-119

.es(ドットエス)
Takayuki Hashimoto 橋本孝之
– Alto Saxophone, Harmonica, Guitar
sara
– Piano, Percussion

01 Catastrophe #1
02 Catastrophe #2

Recorded live at Gallery Nomart, Osaka, 2020.9.12
The solo exhibition “Vessel of Catastrophe” by Nana Kuromiya
黒宮菜菜個展 “カタストロフの器” 会場にて
Art direction & Produce: 林聡 Satoshi Hayashi
Art work: 黒宮菜菜 Nana Kuromiya
Text: sara
Translation: 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Design: 冨安彩梨咲 Arisa Tomiyasu

https://www.nomart.co.jp/dotes/

崩壊の先にある”行為としての即興音楽”

イギリス、ロンドンのテムズ川沿いにある現代美術館テート・モダーンの常設展に「The Disappearing Figure : Art After Catastrophe(消失する形象:カタストロフの後の芸術)」と名付けられた展示室がある。第二次世界大戦という壊滅的な出来事の後、いかにして作品を作り続けるか、という20世紀半ばの芸術家にとって最大の問題に取り組んだ作品を集めた展示である。欧米そして日本中心の社会的・政治的な秩序が崩壊し、すべての価値観の大変革を経験した世界に於いて、ある者は非西欧的文化を参照し、ある者は作為を排除し自然発生的な手法を取り入れ、ある者は特殊な素材を使って実験し、芸術の大変革を推し進めた。メインの展示のひとつにアメリカのジャクソン・ポロックの「Number 14」(1951)がある。床に置いたキャンバスに塗料を滴らせる”ドリッピング(Dripping)”と呼ばれる手法でカラフルな抽象絵画を発表していたポロックが、黒の塗料を棒や注射器で注ぐ”ポーリング(Pouring)”という手法で描いた白黒の作品である。これは1951年から1954年の間に制作されたBlack Pouringsと呼ばれるシリーズのひとつで、成功のプレッシャーでアルコール依存症に陥り1956年に自動車事故で44歳の生涯を閉じるポロックの最後の傑作と言われている。

新型コロナウィルスという災禍がもたらしたカタストロフ(崩壊)と再生への希望をテーマにしたアート展 「カタストロフの器」最終日での演奏で、橋本はエレクトリックギターの爆音ノイズとハーモニカのディレイ効果で、saraはエレクトリックとアコースティックのピアノ演奏で、ギャラリー・ノマルの空間をこれまでになく厚い音の壁で塗りつぶそうとしている。四方を囲む壁に飾られた黒宮菜菜の絵画(ジャケット参照)は、手法は異なるかもしれないが、ポロックの抽象絵画を思わせる混迷と激情を感じさせる。

以前橋本は自分の演奏メソッドをジャクソン・ポロックを引き合いに出して語ったことがある。”即興演奏はその場のエモーションから生まれるが、そこに感じる自分と考える自分がいる。そこにあるあらゆる感覚を使って受け取ったものに、蓄積した経験や感情が反応した時に音が生まれる。ポロック同様、無為と有為のスパークだ”(2019年7月27日(土)東京・国分寺gieeでのソロ公演での配布プリントより)。

音楽とアート、無形と有形、抽象と具象、無意識と有意識、無為と有為、消失と出現、Catastrophe(崩壊)とCreation(創造)。聴き手の感覚を音でスパークさせるドットエスの表現行為は、ジャクソン・ポロックの「アクション・ペインティング」に倣って「アクション・インプロヴァイジング・ミュージック(行為としての即興音楽)」と呼ぶのが相応しい。(2020年12月31日記)
初出:JazzTokyo #273 2021年1月2日

即興之
精神崩壊
再生術

[Close-Up] 黒宮菜菜/Nana Kuromiya Image-終わりし道の標べに



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【JazzTokyo#275更新】『マイケル・グレゴリー・ジャクソン / 周波数平衡公案』『リューダス・モクツーナス、アルヴィーダス・カズラウスカス / 湿地』

2021年03月07日 01時55分18秒 | ネコ動画

音楽情報サイト『JazzTokyo - Jazz and Far Beyond』最新号が更新された。追悼特集はデヴィッド・ダーリング、チック・コリア、ミルフォード・グレイヴス。剛田武は下記の記事を寄稿した。

●マイケル・グレゴリー・ジャクソン / 周波数平衡公案

#2061 『Michael Gregory Jackson / Frequency Equilibrium Koan』『マイケル・グレゴリー・ジャクソン / 周波数平衡公案』

世界の混迷を吹き飛ばす70年代ロフトの自由なジャズ旋風
自らの原点であるロフト・ジャズ時代の音源を掘り起こして世に問う意図は、経済的な見返りを求めることなく、自分たちが望む音楽を一途に追求した希望に満ちた日々を今こそ取り戻そう、という決意表明なのかもしれない。

"FREQUENCY EQUILIBRIUM KOAN" (Album Snippets)

https://www.michaelgregoryjackson.com/


●リューダス・モクツーナス、アルヴィーダス・カズラウスカス / 湿地

#2062 『Liudas Mockūnas / Arvydas Kazlauskas / PURVS』『リューダス・モクツーナス、アルヴィーダス・カズラウスカス / 湿地』

音楽の精霊を呼び起こす祈りの即興デュオ演奏
二人の即興サックス奏者による、古代の記憶と共に眠れる精霊を呼び覚ますかのようなデュオ演奏は、音楽の原初の形を取り戻す試みに違いないのである。

Liudas Mockūnas / Arvydas Kazlauskas PURVS Teaser

https://jersikarecords.com/


屋根裏から湿地まで
即興ジャズの
桃源郷

Michael Gregory Jackson "Steel Your Heart" Berlin Jazz Fest 1981


Jersika records chronicles. Episode 6. Recording session / concert in the bog.

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【2021年地下音楽への招待】分水嶺 Bunsuirei『夢のよう Dreamy』/落穂の雨 Ochibonoame『山猫軒 Yamanekoken』

2021年02月19日 01時34分28秒 | ネコ動画


2020年から引き続きコロナ禍だ自粛だ緊急事態宣言だなどと心も体も経済も停滞しそうな世の中であるが、溢れ出す表現欲求の迸りは止められない。2021年の最初の40数日が過ぎたいま、筆者の手元に届けられた地下音楽の宝玉を紹介しよう。

●分水嶺 Bunsuirei『春のよう Dreamy』 越子草Tall Grass Records


Yonju Miyaoka 宮岡永樹Gt.Vo.、桜井晴紀Vo.Pf.、田上杜夫Ba.によるサイケフォークロックユニットの昨年リリースされたCDR『ファーストギグ 08112019 at七針』に続く2ndCDR。前作は2019年8月11日の初ライヴの音源だったが、今作は2018年~2020年に様々なロケーションでレコーディングされた音源からなっている(遠隔で音をやり取りして録音された曲もあるが、コロナ禍とは全く関係なく、メンバーが離れて住んでいたためである)。コロナ禍で予定していたレコーディングが延期になったため、代わりとして制作された、いわば寄せ集めである。しかしながらこのCDRは単なるデモ集とかコンピレーションではなく、呟きのような言葉と音楽のようなギター、ピアノ、ベースが滲み合う31分間が、白昼夢の中に漂う煙の如く聴き手の心と体を緩やかな浮遊感の中へと解き放つ、分水嶺の世界が凝縮された<ひとつの作品>である。

分水嶺 シンク PV


宮岡が以前マヘル・シャラル・ハシュ・バズに参加していた経緯もあり、彼らのサウンドにはマヘル(工藤冬里)の不定形スタイルが色濃く反映されている。音楽に安定や完成を求めない、いそうでいないマヘル・フォロワー的な存在と捉えることも可能である。同様のスタイルを持つシェシズ(向井千惠)との交流もある。また、PSFレコード(生悦楽英夫)への愛着・憧れがあることも確かだ。しかし彼らが鳴らす音楽の香りは、過去の抹香を拭い去り、新緑の朝露の馨しさを放っている。あぶくのように消えては生まれる地下音楽の永劫性を証明する心の奥の静かな炎の冷たさに、あらたな地下表現者の目覚めを感じる。


●落穂の雨 Ochibonoame『山猫軒 Yamanekoken』 Homosacer Records HMSD-007


川島誠(アルトサックス)、山㟁直人(ドラム パーカッション)、ルイス稲毛(ベース)からなる即興トリオ、落穂の雨の1st CD。2020年8月9日埼玉県越生町『山猫軒』でのライヴ・レコーディング。筆者が知る限りこれまでソロプレイヤーとして一匹狼のように活動してきた川島が新しいバンドを結成したことは大変興味深い。2020年2月22日に山猫軒で公開録音をしたのが初披露で、その時は「ある理性について」 というユニット名だったが、その日に観に来ていた分水嶺の宮岡永樹の命名で「落穂の雨」になったという(CDジャケットも宮岡が描いた絵画)。川島と山㟁直人はライヴで共演するのを観たことがあったが、Aurat Fit、夜光虫、魔術の庭などのバンドや、ヒグチケイコや宮西計三などとのコラボで活動するベーシスト、ルイス稲毛との繋がりは意外でもあった(もちろん川島の活動を細かく追っている訳ではないので、単に筆者が知らないだけかもしれない)。

2021.2.7 山猫軒


異能プレイヤー3人の演奏が単なるフリー・ジャズやフリー・インプロヴィゼーションになるわけがないと予測していたが、このCDに収録された意外なほど正統派のストロングスタイルの即興演奏に逆に驚いた。スネアを擦るだけのストイックな奏法で知られる(というか筆者はそれしかみたことがない)山㟁の柔軟かつ能弁なドラミング、ロック的なスケール奏法を封印して、アブストラクトな音響をメインに繰り出す稲毛のエレクトリックベース、情念性を抑えようとするように禁欲的な川島のサックス、それぞれが異なる地平に立ちながら、演奏が進むにつれて表情を変化させてダイナミックに響き合ったり静寂に収斂したりしながら同化していくプロセスに、ひとつのバンドならではの魂の共感と進化を感じる。不定形から始まったこのバンドがどのように不定形のレベルを深めていくのか、今後の展開に期待したい。

地下からの
目覚めの気配に
耳澄ます





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【鳴り病まない異端音楽最新リリース】ヒカシュー『なりやまず』/橋本孝之『チャット・ミー』/ドットエス(橋本孝之&サラ)+林聡『アトラス』/ドットエス(橋本孝之&サラ)『カタストロフの器』

2020年12月28日 02時14分42秒 | ネコ動画


異端とは正統又は多数派があるからこそ成り立つ概念だ。それぞれの人間がすべて異なる主義・思想・表現を持っていたら異端という言葉は生まれないだろう。当然ながらあなたと私は違う存在である。ひとりひとり他の誰とも違うはずだ。ところが人間は群れを作りたがる生き物だ。群れるためにはみんなと同じでなければならない。その必要性から正統とか多数とかいう概念が生まれ、群れに収まり切れない存在を異端と規定したのである。しかしながら異端の反対は正統(多数)ではない。異端は他の何とも違うのだから、異端それぞれは別の異端であるはずだ。つまり異端の異端は正統(多数)ではなく異端はいつまでたっても異端なのだ(ただし異端=少数でないことは自明の理であろう)。永遠に異端でいることを運命づけられた者たち、自ら望んで異端でいるのではなく、他と違うことをやりたがるから異端にならざるを得ない異端が筆者の愛する異端なのである。時代が大きく変わらざるを得なかった異端の年2020年末に、我が愛しの異端音楽家二組が揃って新作を発表した。方や不定形即興ロックの大ベテラン、方や大阪アートの震源地から生まれたコンテンポラリーミュージックユニット。彼らの新しい作品を聴きこめば、自粛の果てにこれまで経験したことのない密度の高さに達した音楽欲求の奔出と、それをいかに表現し形(作品)にすることが出来るのか、という課題に関する重要なカギが隠されていることが分かるに違いない。

なお、以下に掲載したのはそれぞれの商品発売情報の写しである。各作品の評伝(レビュー)は2021年1月3日更新の「JazzToyo - Jazz and Far Beyond」に掲載予定なので、ご参照いただきたい。



ヒカシュー/なりやまず
HIKASHU/Eternal Echoes


レーベル:MAKIGAMI RECORDS

品番:mkr-0016
JAN:JAN4571266200160
フォーマット:CD

発売日:2020年12月23日
収録時間 55分

エストニアを旅したヒカシューは コロナ禍を越えた世界遺産クラスの
斬新な歌と繊細な即興演奏によって紡がれる 
ことさらに面妖な その音楽は いつまでもどこまでも 鳴り止まない


曲目
1 なりやまず  作詩作曲 巻上公一
 Eternal Echoes 7:34
2 千羽鶴のダンス  作詩 巻上公一 作曲 巻上公一,坂出雅海
 1000 Kurge Dance 5:59
3 モールメイラ(苦い)  作詩作曲 巻上公一
 Maul Meira (Bitter) 6:51
4 あらゆる知恵から 作詩 巻上公一 作曲 ヒカシュー
 All the Wisdom 9:43
5 黒いパンの甘さたるや  作詩 巻上公一 作曲 ヒカシュー
 How Sweet It Is, Muhu Pagarid 7:42
6 もいちど会いたい 作詩 巻上公一 作曲 ヒカシュー
 Wish Meeting You Again 9:38
7 どこまでも途中 作詩 巻上公一 作曲 ヒカシュー
 Perpetually on the Way 7:31



ヒカシュー

巻上公一 ヴォーカル,テルミン,コルネット、尺八、口琴
三田超人 ギター,エスニックフルート
坂出雅海 ベース

清水一登 ピアノ、シンセサイザー
佐藤正治 ドラムス




橋本孝之 / チャット・ミー
Takayuki Hashimoto / CHAT ME

レーベル:Nomart Editions
品番: NOMART-117
発売日:2020年12月23日
価格:2,000円(税込2,200円)

【Member】
橋本孝之

【Tracks】Total 47:46
01 CHAT ME (Flamenco guitar solo) 21:33
02 CLOUDY BLUE (Alto saxophone solo) 26:13

東京の自宅マンションで独り密かに録音された完全即興演奏の記録。
コロナ時代のホームメイド・ディスカバリー。


2009年コンテンポラリー・ミュージック・ユニット.es(ドットエス:橋本孝之&sara)結成後、2015年元あぶらだこのメンバーからなるkito-mizukumi rouber(キトミズクミロウバー)加入、2016年「グンジョーガクレヨン」新譜への参加、2017年より内田静男とのユニット「UH(ユー)」活動開始、阿部薫へのライナー寄稿等、日本のアバンギャルド音楽界を代表する演奏家となった橋本孝之。

5枚目のソロアルバムとなる本作は、2曲とも、彼の自宅マンションにて録音された完全即興演奏のノーカット音源。前作ソロリリースから3年を経てさらにその活動に注目が高まる中、コロナ時代を象徴するホームメイド・アルバムとして、ますますハードコアな内容となった本作は、大いなる期待を持って受け入れられることが予想される。

【Credits】
Art direction & Produce: 林聡 Satoshi Hayashi
Art work: 山田千尋 Chihiro Yamada
Liner notes: ミシェル・アンリッツィ Michel Henritzi
Translation: 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Design: 冨安彩梨咲 Arisa Tomiyasu




ドットエス(橋本孝之&サラ)+林聡 / アトラス
.es (Takayuki Hashimoto & sara) + Satoshi Hayashi / Atlas


レーベル:Nomart Editions
品番: NOMART-118
発売日:2020年12月23日
価格:2,000円(税込2,200円)

【Member】
.es(ドットエス)
橋本孝之 Takayuki Hashimoto - Alto Saxophone, Shakuhachi(With Reed), Harmonica
sara- Piano, Percussion
+
林聡 Satoshi Hayashi - Laptop

【Tracks】Total 40:26
01 Atlas #1 17:13
02 Atlas #2 23:13

アバンギャルドなサウンド・トリップへようこそ!
生楽器による過激でスピリチュアルな即興演奏と脳内妄想風景の融解音楽。


2009年の結成以来、音楽とアートで革命を企てるコンテンポラリー・ミュージック・ユニットとして独自の存在感を放ってきた.es(ドットエス)。
本作は.es結成時からのコンセプトメーカーにして現代アートのディレクター、またオーディオ専門家としての顔をもつ林聡と初めて3名で演奏したライブ音源をベースに、音響作品として構築されたコンセプト・アルバムです。

*ライナーノーツ(茨木千尋)より引用
.es は、しかし、一連のライブ演奏の各回ごとに不可思議な差異化を遂げる稀有なユニットだ。その時周囲に展示されている現代美術作品との「共演」という理念の深まりをも含め、このAltasでは、十年を超える持続の成果をさらに踏み越え、sara と橋本孝之と、二人して、自身の歴史の新たな局面を開示したと言ってよい程に、より鋭く深い即興演奏を展開しているので、その音響は、2020年という、歴史の後退局面の極みにあって混迷も極まる、まさにこの、焦点の定まらない現在時の、地表下に隠された深層の切迫した騒めきを鮮やかに映し取ると同時にそれ自身の内からひとりでに響き返している様にさえ聴き取れるではないか。

【Credits】
Recorded live at Gallery Nomart, Osaka, 2020.7.18
The solo exhibition “Atlas” by Motonori Inagaki
稲垣元則個展 “Atlas” 会場にて
Remixed by Satoshi Hayashi
Art direction & Produce: 林聡 Satoshi Hayashi
Art work: 稲垣元則 Motonori Inagaki
Liner notes: 田中ゑれ奈 Erena Tanaka / 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Translation: 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Design: 冨安彩梨咲 Arisa Tomiyasu




ドットエス(橋本孝之&サラ)/ カタストロフの器
.es (Takayuki Hashimoto & sara) / Vessel of Catastrophe


レーベル:Nomart Editions
品番: NOMART-119
発売日:2020年12月23日
価格:2,000円(税込2,200円)

【Member】
.es(ドットエス)
Takayuki Hashimoto 橋本孝之 - Alto Saxophone, Harmonica, Guitar
sara - Piano, Percussion

【Tracks】Total 46 : 50
01 Catastrophe #1 21 : 25
02 Catastrophe #2 25 : 25

即興音楽?ノイズ?フリージャズ? サックス、ピアノ、
ハーモニカ、エレキギター…自由な精神で描かれた美しき即興抽象絵画的音像。


2009年の結成以来、音楽とアートで革命を企てるコンテンポラリー・ミュージック・ユニットとして独自の存在感を放ってきた.es(ドットエス)。
本作は2020年9月のライブを臨場感そのままに収録した、最も新しくスリリングな.esの完全ライブ収録盤(ノーカット・無編集)。

*ライナーテキストより引用
世界の不穏が否応なしに日常へと流れ込む今、 ただそれを悲劇や災禍と耐え忍ぶのか?
直視する、受け入れる、そして契機とする態度でありたいー
カタストロフ(突然の大変動, 大きな破綻)は崩壊だけではなく、希望を含んでいる。
2020年9月12日(土)、ギャラリーノマルでの黒宮菜菜個展「カタストロフの器」最終日、
ギャラリーの空間へ.es(ドットエス)が描いた、次なる時代への絵画的音像。

【Credits】
Recorded live at Gallery Nomart, Osaka, 2020.9.12
The solo exhibition “Vessel of Catastrophe” by Nana Kuromiya
黒宮菜菜個展 “カタストロフの器” 会場にて
Art direction & Produce: 林聡 Satoshi Hayashi
Art work: 黒宮菜菜 Nana Kuromiya
Text: sara
Translation: 茨木千尋 Chihiro Ibaraki
Design: 冨安彩梨咲 Arisa Tomiyasu

年の瀬に
類稀なる
異端音楽

HIKASHU/Kajad ei peatu ヒカシュー/なりやまず


.es(ドットエス) 結成10周年記念ライブ “Miracle” 2019/10/13 Gallery Nomart
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【イベント情報】2020年最後の盤魔殿はDJバトル大会!!!!~12/13盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 vol.36@阿佐ヶ谷TABASA

2020年12月07日 00時17分55秒 | ネコ動画


盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 vol.36
2020年12月13日(日)
阿佐ヶ谷TABASA https://tabasaasagaya.tumblr.com/
19:30 open/start
1000 Yen + 1 drink別 

2020年最後の盤魔殿は、DJ二人組によるDJバトル大会。熾烈なバトルになるか、平和なコラボになるかは、当日のお楽しみ!


タイムテーブル発表!(各組45分)
19:30 DJ Ipetam a.k.a. Rie Fukuda vs DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
20:15 DJ Keroppy a.k.a. ケロッピー前田 vs DJ Qliphoth a.k.a. 宇田川岳夫
21:00 DJ Bothis a.k.a. 山田遼 vs DJ Vaby a.k.a. 大場弘規


*人数制限があるので来場ご希望の方は、Facebookイベントページで参加表明いただくか、Twitter: ひろミサ✰剛田武@mirokristel にリプまたはDMでご連絡ください。

【聴かせどころ】
●DJ Qliphoth a.k.a. 宇田川岳夫
冥丁, Christof Heeman, Louise Landes Devi, S.A.P.T, Unhuman, Ancient Methods, 等 Dark, Ritual Magick な路線で Other World Musick です。

Unhuman - The Internal Route [IOD025]



●DJ Keroppy a.k.a. ケロッピー前田
「Forth World(フォース・ワールド/第四世界)」
 この言葉は、ジョン・ハッセル/ブライアン・イーノのアルバム『Fourth World, Vol. 1: Possible Musics』(1980)のタイトルだ。イーノの証言によれば、ハッセルは、カンのホルガー・シューカイと同じく、シュトックハウゼンのもとで「電子音楽」を学び、テリー・ライリーの『In C』(1968)のレコーディングに参加し、インド古典声楽家プラン・ナート(Pran Nath)からラーガの教えを受けている。「フォース・ワールド」とは、西洋の現代音楽と世界の民族音楽を電子音楽機材を用いて融合させることをいう。さらに、ハッセルはマイルス・デイビスの70年代の電化ジャズに触発されてエレクトリック・トランペットを吹いている。それもトランペットを通して声を発することで独特な音色を生み出している。「フォース・ワールド」はハッセルの独特な演奏方法も含め、現代のプリミティブミュージックの方向性を示してくれている。あなたも自分自身の原始音楽を鳴らせ!

Chemistry - Jon Hassell / Brian Eno — Possible Musics (1980)



●DJ Ipetam a.k.a. Rie Fukuda
POPとは何か、俗とは何か、そして大衆とは⁈下世話でベタベタにメロウに!その存在意義を問うバトルロワイヤル!!

恋人 森山良子 1969



●DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
国籍・年齢・性別・宗教・政治思想etcに関係なく盤魔殿的POPをキーワードにお届けします。

XTC - This Is Pop (1978 - best upload by far)



●DJ Vaby a.k.a. 大場弘規
今回は久し振りに国内、国外、メジャー、マイナー問わずインダストリアルミュージック全般で、DJ Bothis氏に立ち向かっていこうと思います。さてさてこの勝負の決着は如何に?とは言うものの年末らしく楽しくハッピーになれるマテリアルを多数ご用意致しますので是非是非遊びに来て楽しんで下さいまし。


Einleitungszeit‎ _ Eschaton



●DJ Bothis a.k.a. 山田遼
今回はバトル相手の大場さんがインダストリアルを取り上げるということで、自分も同じくインダストリアルでいこうと思っていますが、自分の場合はこの文化に対して後追いで解釈している部分があるので、そういった差異を出していければと思っています。
VAGINA DENTATA ORGAN



いらっしゃい
本年最後の
盤魔殿

★盤魔殿本編は最後ですが、オマケのイベントがあります。こちらもよろしくお願いします。


《哲学者の薔薇園》+盤魔殿
Collaboration Deeplistening Event Musica Rosarium

12月21日(月)
四谷三丁目 喫茶茶会記
1000 Yen+オーダー
Open 15:00 / Start 18:30

出演
DJ Qliphoth 
DJ AURA NOIR
DJ SubRosa
DJ BEKATAROU
Lower Than God(マーク・ロウ+剛田武)

タイムテーブル
18:30-19:00 DJ AURA NOIR
19:00-19:30 DJ Qliphoth
19:30-20:00 DJ SubRosa
20:00-20:30 Live Lower Than God
20:30-21:00 DJ BEKATAROU
21:00-21:20 冬至の儀(MONT★SUCHT)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『事 ある 事』灰野敬二、吉田隆一、SOON KIM@渋谷公園通りクラシックス 2020.10.26 mon

2020年10月28日 01時32分42秒 | ネコ動画


『事 ある 事』~灰野敬二、吉田隆一、SOON KIM

開場:19:00 / 開演:19:30(終演21:30予定)
前売り:3,000円 当日:3,500円 1ドリンク別

灰野敬二 (g,vo,etc)
吉田隆一 (baritone sax)
SOON KIM (alto sax)



灰野敬二が日本の個性派ミュージシャンとコラボレートする『事 ある 事』と題されたコンサート。タイトルの意味については説明がないが、「事」=人、ミュージシャン、出来事、演奏、音楽と考えると、「事」と「事」が出会うことにより足し算「事+事」や掛け算「事×事」ではなく、「ある」(在る・有る・或る)=存在が介在することにより別の在り方=「事 ある 事」が可能ではないのか?という謎かけではないかと想像する。以前『NO NOT JAZZ』というタイトルでナスノミツルとデュオ公演を行ったことを思い出す。ナスノのベースと灰野のスネアひとつだけで演奏した驚異的にストイックで苦行に似たライヴ経験だった。
『NO NOT JAZZ』灰野敬二+ナスノミツル@渋谷LUSH 2018.10.24 (wed)

共演のふたりのリード奏者はいずれも灰野との共演歴がある。
吉田隆一は2012年8月に初共演している。灰野がギターの他ドラムやフルートを演奏し、轟音がクラッシュする激しいライヴだった。
灰野敬二+吉田隆一@入谷なってるハウス 2012.8.21 (tue)

SOON KIMは2017年に2回灰野とデュオで共演した。対決ではなく共調を感じさせるオーソドックスな即興演奏が、逆に音楽の自由度を感じさせる共演だった。
灰野敬二+SOON KIM@下北沢Lady Jane 2017.3.18 (sat)
灰野敬二 × SOON KIM@大岡山Goodstock Tokyo 2017.6.9(Fri)

ちなみに吉田隆一とSOON KIMは『Jazz Artせんがわ』でのセッションで共演したことがあるそうだ。これまで別々にデュオでコラボした三人がひとつの場で会(在・有)って、「事」を成すことで、未知の「事」の在り方が示されるかもしれない。そんな期待が渋谷の半地下にある公園通りクラシックスの空間を満たしていた。

1stセット。冒頭でいきなり灰野のギターの地鳴りのような爆音が空気を振動させる。金属(スプーン)を使ったプレイだった。KIMはハイトーンのメロディ、吉田は循環呼吸によるドローンを奏でる。灰野はダフ(大型のタンバリン)からドラムへと移り、二つのリード楽器の隙間を断続する打音で切り取る。吉田はバスフルートの不穏なメロディが印象的。後半灰野はギターに戻りナチュラル・ディストーションでサックスを脅かす。それに動じずKIMは気持ちよさそうに流麗な旋律を吹き続ける。35分の短いセットだったが、事の始まりの予感に満ちた演奏だった。

2ndセットは「事」の前にある程度流れを決めていたようだ。KIMと吉田がロングトーン中心に演奏し、灰野が低いヴォイスで唸る形でスタート。灰野はマイクから離れて跪き、KIMのサックスのベルの中に声を吹き込む。低い唸りがハイトーンの叫びに転じ、サックスの旋律とハーモナイズする。吉田は金属の鐘でリチュアルな雰囲気を醸し出す。灰野はギター~タンバリン~ドラムと演奏し、最後はマイクを掴みはっきりした声で歌う。哀感たっぷりのサックスの伴奏で「だいじょうぶ」と歌うエンディングは慈愛と安らぎに満ちていた。覚醒するような閃きの言葉のアンコールで「事」(ライヴ)は終焉を迎えた。



即興という言葉を好まない灰野だが、3人の人間がその場でひとつの音楽を作り出す過程は本当の意味での即興と呼ぶのが相応しい。KIMと吉田の演奏に含まれるジャズの要素が、灰野の非ジャズの表現と交わることで、ジャズでなくジャズでもある何か(ロック、インプロとしても同じ)が生まれたように思う。それが『事 ある 事』の意味なのかどうか、今後のゆくえを見定めて行きたい。

人 ある 人
音 ある 音と
歌 ある 歌

●次回のコラボレーションはドラムとチェロ。


2020年11月15日(日)  東京 渋谷 公園通りクラシックス
『事 ある 事』~灰野敬二、外山明、森重靖宗
有観客ライヴ(配信無し)

開場:19:00 / 開演:19:30(終演21:30予定)
前売り:3,000円 当日:3,500円 1ドリンク別

灰野敬二 (g,vo,etc)
外山明 (drums)
森重靖宗 (cello)

予約:公園通りクラシックス
03-6310-8871
http://koendoriclassics.com/
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【地下ジャズDisc Review】46分無変化の嵐!!!!独逸発ミニマル・ドローン・ハードコア・ビッグバンド~ザ・ドーフ / フィル・ニブロック『バオバブ / エコーズ』

2020年10月10日 00時32分36秒 | ネコ動画


『The Dorf / Phill Niblock ‎- Baobab / Echoes』
CD/DL : Umland Records 31
text by 剛田武 Takeshi Goda

The Dorf:
Marie Daniels – vocals
Hanna Schörken – vocals
Maika Küster – vocals
Oona Kastner – vocals/ keys
Julia Brüssel – violine
Martin Verborg – violine
Ludger Schmidt – cello
Emily Witbrodt – cello
David Heiss – trompete
Moritz Anthes – posaune
Max Wehner – posaune
Adrian Prost – posaune a
Lex Morsey – tuba
Sebastian Gerhartz- saxofon
Felix Fritsche- saxofon
Florian Walter- ewi/ saxofon
Stefanie Heine- saxofon
Luise Volkmann- saxofon
Andreas Wahl – gitarre
Christian Hammer – gitarre
Raissa Mehner – gitarre
Serge Corteyn – gitarre
Oliver Siegel – synth
Guido Schlösser – keys
Fabian Neubauer – keys
Anja Kreysing – keys
Gilda Razani – theremin
Achim Zepezauer – electronic
Kai Niggemann – electronic
Johannes Nebel- bass
Volker Kamp – bass
Simon Camatta – drums
Marvin Blamberg- drums
Jan Klare – saxofone airmovement
Denis Cosmar – sound

Disc 1 : Baobab
1. Baobab

Disc 2 : Echoes
1. Rich
2. F-Lan
3. Split

Baobab by Phill Niblock
Rich/ F-lan/ Split by Jan Klare
Recorded at Domicil, Dortmund on September 19, 2019
Recorded and mixed by Denis Cosmar
Graphic design by Achim Zepezauer

The Dorf公式サイト
The Dorf bandcamp

ドイツの異能集団即興ビッグバンドのミニマル・ドローン・ハードコア
ザ・ドーフ The Dorfは2006年にサックス奏者・作曲家のヤン・クラーレ Jan Klareを中心にドイツのルール地方(ドルトムント~エッセン)の即興演奏家の集合体として結成された。毎月ドルトムントのクラブDomicilでセッション・コンサートを開催するうちにメンバーが固定され定期的に活動する大規模編成のビッグバンドになった。2017年に初来日したサックス奏者フローリアン・ヴァルター Florian Walterも2010年からこのバンドに参加しており、彼から30人のビッグバンドと聞いたとき(⇒インタビュー)、”ドイツ版渋さ知らズ・オーケストラ”とか“21世紀のGlobe Unity Orchestra”というイメージが頭の中に浮かんだ。しかし、試聴サイトで彼らの演奏を聴いてみて、渋さのお祭り感覚やGlobe Unityの集団即興とは全く異なる、静的でシリアスなサウンドに驚いた。ジャズや即興音楽というより、コンテンポラリー/現代音楽の要素を強く感じさせるスタイルは、同じドイツのベルリンを拠点に活動する実験音楽アンサンブル、ツァイトクラッツァー Zeitkratzerに近い。1997年に結成され、クラシック/現代音楽/フォークミュージック/ロック/ノイズといった様々なジャンルと並列に取り組み、スタイルやジャンルを超越したコラボレーションを実践する10人組のツァイトクラッツァー(⇒ライヴレポート)と同じように、30人編成のザ・ドーフもジャンルを横断したユニークな試みを追求している。

Covid-19のため配信ライヴとして開催された今年のメールス・フェスティヴァルでは、初日の2番手として登場し、ベートーベン250周年に因み、交響曲第5番「運命」を大胆にデフォルメした演奏で、コロナ禍で苦しむ世界をカリカチュアライズしてみせた。密を避けるべく30人のミュージシャンがステージエリアに微妙な距離を保ちながら、クソ真面目な表情で逸脱したパフォーマンスを繰り広げる映像から、”Social Distancing”という標語を逆手に取ったレジスタンス精神が伝わってきた。緊急事態宣言真っただ中の日本から観ると、遥か彼方の異世界の非日常的な光景に感じられて、コロナ禍以前の日常が崩れつつある現実に改めて気づいた瞬間であった。

自粛解除後初のザ・ドーフの新作が、2017年に自ら設立したレーベルUmland Recordsからリリースされた(ドイツ語でDorfは「村」、Umlandは「周辺」という意味)。2019年9月19日ドルトムントDomicilでのライヴ録音で、アメリカの前衛作曲家/映像作家フィル・ニブロック Phil Niblockの作品を素材とした2枚組90分の大作である。1933年に生まれ、60年代からデューク・エリントン、サン・ラからジョン・ケージ、オノ・ヨーコまで先鋭的な音楽家とコラボレーションするニブロックは、世界的なミニマル/ドローン・ミュージックの大御所として知られる。

Disc 1は、ニブロックが2011年にオーケストラのために作曲した23分のドローン組曲「Baobab」を、なんと倍の46分に拡大したライヴ・パフォーマンスを収録。筆者はヘッドフォンで聴取した。当然我々は録音された音源で聴くわけだから、ライヴ会場と違って長時間ほとんど変化のないドローンが続く間、神経を研ぎ澄まして演奏だけに集中することは難しい。最初の内は視界に入る日常風景や周囲のノイズに気が散っていたが、次第に嵐や地響きのような音のクラスターが頭の中で反響しはじめ、20分を過ぎた辺りから耳たぶが熱くなり、思考回路に雲がかかり、意識が朦朧としてくる。演奏されていないはずのサイレンや汽笛や雷鳴や地鳴りや叫び声の幻聴。その心地よさに身を任せるが不思議と睡魔は感じない。40分を過ぎたころから、今度は終わりが来るのが楽しみになってくる。そして唐突に音が消えると、頭の中にピーッという残響だけが残された。コンサートの場でこの演奏を体験するとまた違った感慨があるだろうが、人体に与える幻覚効果は同じかもしれない。

The Dorf/ Phill Niblock - Baobab (The Dorf & Umland)


20分の休憩のあと、第2部では「Baobab」にインスパイアされて、ヤン・クラーレが作曲した楽曲が3曲演奏された。つまり「Baobab」の「残響=Echoes」という訳である(Disc 2)。M1「Rich」はスタッカート音の断続的なループ演奏。「Baobab」の人力リミックスといった趣向。M2「F-Lan」も同じく断続音のループだが、非連続的なリズムと音程の変化により、エモーショナルなダイナミズムを持っている。ヴォーカルを交えたミニマルオペラは、CANやファウスト、NEU!などクラウトロックに通じる。M3「Split」はさらにスピードと音数を増し、フィリップ・グラス『浜辺のアインシュタイン』のパンク・ヴァージョン、もしくはミニマル版Mass Projection(集団投射)のように感じた。

かねてよりドローン・ミュージックは究極のストイシズムだと感じていたが、ザ・ドーフによるエネルギーあふれる解釈により、究極のハードコアでもあることを実感した。単なるジャンルの越境や融合に留まらず、音楽の本質を露わにするザ・ドーフの思索的諧謔精神が今後世界にどんな幻覚効果を与えるのか、興味は尽きない。(2020年7月4日記)
*初出:JazzToyko 2020年7月4日

動不から
有無ランド経由
鈍ロック

【特報】The Dorf & Umland Festival 2020開催!
10/15 thu. Domicil, Dortmund (Camatta/Amadou/Illvibe live und Torgeir Vassvik & Ludger Schmidt live)
10/16 fri. Zeche Carl, Essen (The Dorf live)
10/17 sat. Steinbruch, Duisburg (WIR HATTEN WAS MIT BJÖRN und The Unwetter und The Umland Session Band live)

The Dorf & Umland Festival 2020 (Official Trailer)

*ストリーミングの有無は確認中です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【灰野敬二ライヴ情報】10/13(wed) 灰野敬二とPhewのコラボレーション・ライブが、人数限定有観客ライブ+アーカイブなしのライブ配信で開催!

2020年09月29日 01時29分30秒 | ネコ動画


日本のパンク/ニューウェイヴの先駆者Phewと、70年代から一貫して音楽の本質を追求する灰野敬二。
日本ロック界の2大レジェンドがコラボレーションする歴史的なイベントが決定した。
人数限定有観客ライブ+アーカイブなしのライブ配信。まさにこの日この時この場所でしか体験できない一期一会の邂逅を見逃すな!


【詳細】
にじのつきeden vol.2
Phew 灰野敬二


2020年10月13日(火) 東京・下北沢440 
440web ( http://440.tokyo/events/20201013/)

有観客ライブ(40人限定)+有料ライブ配信(アーカイブなし)

開場 19:30 / 開演 20:00
入場チケット:前売¥3,500(1D別)/ 当日¥500up ※要TIGET予約、店頭販売なし
 TIGET※受付 9/28 20:00〜 URL:(https://tiget.net/events/104580)

 入場:整理番号順、開場直前まで整列はお控え下さい。

配信開始:20:00〜(※アーカイブなし)
配信チケット:¥2,000+投げ銭
 ZAIKO:(https://440-fourforty.zaiko.io/_item/330718)
 販売期間  9/28 20:00〜 10/13 20:00
 配信期間 10/13 20:00〜 10/13 23:00(終演まで)


【プロフィール】

Photo by Masayuki Shioda

Phew(フュー)
1978年にパンクバンドAunt Sallyで活動をスタート。バンド解散後はソロとして、国内外の数々のミュージシャンとコラボレーションを行なう。
現在は、2013年からはじめた電子音楽のソロユニットとパンクバンドMOSTを中心に活動している。

Phew - Vertigo KO




Photo by 船木和倖

灰野敬二 Keiji Haino
1952年、千葉県生まれ。1970年、エドガー・アラン・ポーの詩から名を取ったグループ「ロスト・アラーフ」にヴォーカリストとして加入。また、ソロで自宅録音による音源制作を開始、ギター、パーカッションを独習する。1978年にロックバンド「不失者」を結成、ハードロックに全く新しい強力で重層的な次元を切り開く。80年代後半からソロのほか不失者、滲有無、哀秘謡、静寂、Vajra、サンヘドリン、Nazoranai、Hardy Soulなどのユニット、Experimental Mixture名義でのDJやセッション、他ジャンルとのコラボレーションなど多様な形態で国際的に活動を展開。170点を超える音源を発表し、確認されただけでも1500回以上のライブ・パフォーマンスを行なっている。
http://www.fushitsusha.com/

Keiji Haino @ Playfreely Festival, Singapore, November 28 2019


出会いとは
突然現れ
吹き荒ぶ

★本日9月29日(火) 22:00までアーカイブ視聴可能!
THE HARDY ROCKS
無観客・配信ライブ at LUSH


電子チケット ¥2000+(投げ銭)
チケット購入URL
https://qumomee.toos.co.jp/products/0922lush
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【私のポストパンク禁断症状#8】グロリア・マンディ『反逆の狼火』『ザ・ワード・イズ・アウト』~世界の栄光を掴みそこねた狼煙の行方

2020年06月08日 01時36分09秒 | ネコ動画


1976年中学2年でロックを聴き始めたときこそキッス、エアロスミスなど『ミュージック・ライフ』や『音楽専科』の表紙を飾るバンドを聴いていたが、77年にパンクにハマるとセックス・ピストルズやクラッシュと言った有名バンドも好きだったが、もっとマニアックなバンドに惹かれるようになった。例えばリチャード・ヘル&ヴォイドイズ、ハートブレイカーズ(ジョニー・サンダース)、ミンク・デヴィルといったニューヨーク・パンク勢、ラジエーターズ・フロム・スペース、レジロス、アドヴァ―ツと言ったロンドン・パンク第二世代のバンドである。そんなバンドの中でも筆者が特に強い思い入れがあるがのグロリア・マンディ Gloria Mundiである。

GLORIA MUNDI fight back !


高校時代(79~81年)にやっていたバンドのヴォーカルが医者の息子で、パンクの日本盤LPが出ると買っては貸してくれた。時々彼がよくなかったよ、と言いいながら貸してくれたレコードもあった。テレヴィジョンやリチャード・ヘルなどNYパンクがダメだったようだが、特に「これはひどい、最悪」と言ったのがグロリア・マンディの『反逆の狼火 I, Individual』だった。テレヴィジョンやR.ヘルなど彼が嫌いなレコードは、逆に筆者のお気に入りになる場合が多かったが、グロリア・マンディは一回聴いただけで生涯のフェイバリット・アルバムになるほどの衝撃を受けた。40年近く経った今でも聴くと鳥肌が立つようなスリルを感じる。当時パンク雑誌『ZOO』に見開きで記事が出ていたし、日本盤の解説はZOO関連ライター3名連記。ZOOライターの友人が英国滞在時にヴォーカルのエディ・マイラヴに英語を習っていたという縁で、日本で大きく(と言ってもZOOだけかも)展開されたのだろう。

●Gloria Mundi ‎/ I, Individual(反逆の狼火) (RCA Victor ‎– PL 25157 / 1978)


パンキッシュでありながらもドラマチックな陰影に満ちたサウンドが、エディとキーボードのサンシャインの男女ヴォーカルが綴る私小説を映像化している。映画的な手法ではあるが、芝居がかったメロドラマではなく、モノクロームのフィルム・ノワール。エディの生徒だった件の友人により歌詞が本人の意図通りに翻訳されているので、日本語対訳を読みながら聴くとイメージが膨らむ。日本盤の解説では三者三様にデヴィッド・ボウイの影響を強調している。アルバムの裏ジャケはボウイの『ステーション・トゥ・ステーション』の裏ジャケのパクリだし、白塗りメイクで歌うエディや中性的なサンシャインのルックスは、グラム時代のボウイに似ている。おそらく本国イギリスでもボウイを引き合いにして評価されたのだろう。

実は筆者はデヴィッド・ボウイの意図する世界観やイメージは嫌いじゃないが、ボウイ本人の音楽にはどうしても興味が持てない。あまりに高く評価されているので今更、という気持ちがないわけではないが、最大の問題は声や歌い方が好きじゃないことだと思う。なんか軽く感じるのだ。近い存在ではルー・リードやロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーの歌は好きなのだが。。。これは生理的なものと言うしかない。だから、グロリア・マンディがボウイの影響を受けているかどうかは、筆者にとってはどうでもいい。グロリア・マンディの音楽は彼ら自身の音楽でしかない。アルバム・タイトル・ナンバー「I, Individual」では、”I, Individual, I, It was me(俺、俺自身の俺、それは俺なんだ)”と繰り返される。自分が自分であることを証明することが彼らのロックだった。自分自身の世界の栄光(Gloria Mundi)を手に入れるために。

Gloria Mundi ‎/ I, Individual



●Gloria Mundi ‎/ The Word Is Out (RCA Victor ‎– PL 25244 / 1979)


1stアルバムはイギリスでセールス的に苦戦したようだが、日本でも売れなかったに違いない。1年後にリリースされた2ndアルバムは日本盤は出なかった。当時輸入盤店でジャケットを見た記憶はあるが、指紋が顔になったグロテスクな1stのジャケットに比べて、電話ボックスの中年男性の写真のジャケットは意味ありげだがありがちな感じがして手が伸びなかった。実際に聴いたのは5年後の84年である。ジャケに感じた不安が的中、70年代末のニューウェイヴ然とした凡庸なサウンドに正直言って失望した。歌詞をよく読むと、存在の不安、人格分裂、自殺、自己欺瞞、虚言癖と言った社会心理的テーマを歌っているのだが、曲調が明るく軽すぎて浮ついて聴こえてしまう。プロデューサーはロキシー・ミュージックやジャパン、そしてドクターズ・オブ・マッドネスなどを手掛けたジョン・パンターなので、聴き直してみると、他のニューウェイヴやゴシックパンクに比べてパラノイア性のあるサウンドで決して悪くないが、大傑作の1stと並べると平凡と言わざるを得ない。とはいえ歌詞の解読を含め深層分析に値する作品といえよう。

Gloria Mundi ‎/ The Word Is Out



●Gloria Mundi


Eddie Maelov - vocals
Sunshine Patteson - keyboards, vocals
Beethoven - guitar
c.c. - sax
Mike Nichols - drums
Ice - bass
(after 1st album:)
Nigel Ross-Scott - bass
Kirby - guitar

名前の由来はラテン語で「世界の栄光」という意味。これは "Sic transit gloria mundi (世界の栄光はこうして過ぎ去っていく)"というラテン語の言い回しにちなむ。

75年にエディ・マイラヴとサンシャインを中心に結成。それ以前にエディはUltravoxの前進バンド、Tiger Lilyをバックにパントマイムを演じていたという。ギターのベートーヴェン(本名 Peter Vos)は75年にセックス・ピストルズの2人目のギタリストのオーディションを受けた(そして落ちた)経験の持ち主。ドラムのマイク・ニコルス、サックスのc.c.、ベースのアイス(本名 Roland Oxland)で初期ロンドン・パンク・シーンで活動し、77年にRCAと契約(デヴィッド・ボウイの所属レーベル)。78年にシングル『Fight Back / Do It』とアルバム『I, Individual』をリリース。79年ギターがカーヴィ、ベースがナイジェル・ロス=スコットにメンバーチェンジし、2ndアルバム『The Word Is Out』をリリースするが、同年解散。

解散後、エディとサンシャインはシンセポップデュオ、Eddie and Sunshineとして活動し、アルバム『Perfect World』(83) と数枚のシングルをリリース。サンシャインは後年Sunshine Gary名義でサウンド・インスタレーション作家として活動した。サックスのc.c.はUltravoxの「Hiroshima Mon Amour」にサックス・ソロで参加。ドラムのナイジェル・ロス=スコットはBruce Woolley and The Camera Clubを経て、Re-Flexのメンバーとして成功を収める。

グロリア・マンディのステージ・パフォーマンスは、独創的なビジュアルイメージと、孤独、個性、セクシュアリティ、意味、攻撃性をテーマにしたストーリーの両面で革命的だった。ゴシック・パンクの先駆者としてバウハウスに影響を与えたと言われている。



グロリア・マンディのアルバムはCD再発されていない。動画も一切公開されておらず、革命的とされるライヴ・パフォーマンスを観ることもできない。ポストパンクの再評価が何度も行われている中で、忘れられているとは思えないので、再発を拒む何らかの理由があるのかもしれない。権利関係はいかんともし難いが、このまま忘却の彼方に消え去るには惜しいバンドである。未発表曲でもライヴ演奏でも何でもいいので、彼らが残した爪痕を拝みたいという飽くなき希求心が、数年に一度私を悩ませる”グロリア・マンディ禁断症状”なのである。

栄光は
世界の闇に
消えるのみ






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【5月25日誕生日のふたりのアーティスト配信動画観戦記】サン・ラ・アーケストラ(マーシャル・アレン)/バラナンブ(山崎怠雅)

2020年05月26日 01時44分29秒 | ネコ動画


2020年5月25日コロナウィルス感染防止のための緊急事態宣言が全国で解除されることが発表になった。まだ第二派感染が起こる危険があるだけでなく、ライヴハウスの自粛要請が解除される見込みはかなり先になりそうなので、決して喜んだり安堵したりする気分ではない。しかしながら、そんな5月25日に誕生日を迎える二人のマイ・フェイヴァリット・アーティストが奇しくも揃って前日に配信したライヴ動画を観たら、引きこもりも解除も関係なしにオレのコロロはウキウキモードで舞い上がった。ひとりは90代のアメリカのジャズ・ミュージシャン、マーシャル・アレン。もう一人は40代の日本のサイケデリック・ロッカー、山崎怠雅。タイプの異なる二人だが、音楽の歓びと安堵感を伝えるパワーは世界一。これこそ音楽の力である。

●バラナンブ


バラナンブ × 四谷Outbreak! 配信ライブ‬
2020 ‪5/24(日) 19時~ 
ライヴハウス・四谷アウトブレイク無観客ライブ、映像配信。チケット500円



藤井政英(Vo,G)、南部輝久(Dr)、山崎怠雅(B,Cho)からなるヘヴィ・サイケデリック・ロックバンド。昨年夏に1stCD『ファズ、光線、花』をリリース。日本のロックの妖しさを現代に継承するスタイルは音楽面だけでなく、ヘア、メイク、ファッションも徹底している。初めて観た時は時代錯誤感がマニア心をくすぐったが、3年経ってみてレトロ感よりも現在進行形のロックバンドのリアリズムが輝きを増している。ロックンロール誕生から70年近く経ったが、語源である「卑猥」「バカ騒ぎ」「妖しさ」をそのままに継承するバラナンブは間違いなく「正統派」である。
真っ赤なバラの花束を飾ったライヴ配信は恐ろしいほどの高音質でファズギターとヘヴィなビートと泣きのヴォーカルが生々しく迫るエモーショナルなパフォーマンスだった。



‪1.孤独の創造‬
‪2.箱よ‬
‪3.サテツ‬
‪4.漂泊‬
‪5.フェザージャニュアリー‬




●サン・ラ・アーケストラ


Celebrate Sun Ra & Marshall Allen's Earth Arrival Days
5月24日(日)~26日(火)
ドネーション
The Sun Ra Arkestra Under the Direction of Marshall Allen | Sounds of Justice
March 4 at The Town Hall



サン・ラ・アーケストラとニューヨークの前衛芸術団体アーツ・フォー・アートの支援オンライン・イベント。5月22日生まれの故・サン・ラ亡きあと5月25日に96歳の誕生日を迎えるマーシャル・アレンの指揮の元、世界中で公演活動を続けるフリージャズ・オーケストラ、サン・ラ・アーケストラが、コロナウィルス感染爆発直前の3月1日にニューヨークのタウン・ホールで開催されたアーツ・フォー・アート主催イベント「サウンド・オブ・ジャスティス」でのライヴ全編の動画を限定公開。さらに誕生日前夜5月24日夜にはZOOMによるマーシャル・アレンとのチャット・インタビューも行われた(日本時間早朝のため観れず残念)。



ハープと弦楽2名を含む18人編成のアーケストラを飄々と指揮するマーシャル・アレンは、大柄の女性ヴォーカル、タラ・ミドルトンと並ぶと対比が面白い。それにしてもアーケストラのメンバーの異様な風体に改めて驚く。6~70年代ニューヨークのロフトジャズ・シーンのヒッピーや芸術家崩れのブラック・カルチャーを思わせるスタイルは、地なのか装いなのか?現代のブラック系の若者はジャズよりもラップ・ヒップホップに惹かれる傾向が強いと言われて久しいが、アーケストラのメンバーになろうとする若者は多いのだろうか?いずれも高度な演奏テクニックを持ちながら、サン・ラの誇大妄想的な音楽をマーシャル・アレンの気紛れ(に見える)ディレクションに従って演奏する気持ちはどうなのだろうか。作曲と即興の境目のない自由空間の音楽に酔いながら、そんなことを考えていた。



The Sun Ra Akestra at Sounds of Justice:
Music & Lyrics by Sun Ra
Marshall Allen - director, arranger, alto sax, flute
Tara Middleton - vocals
D. Hotep - guitar
Melanie Dyer - viola
Gwen Laster - violin
Nina Bogomas - harp
Knoel Scott - vocals, saxes
Robert Landham - alto sax
James Stewart - tenor sax
Michael Ray - trumpet
Dave Davis - trombone
Emmett McDonald - trombone
Robert Stringer - trombone
Vincent Chancey - french horn
Elson Nascimento - percussion, surdo
Ron McBee - percussion
Tyler Mitchell - bass
Wayne A. Smith - drums
Marvin Bugalu Smith - drums

Guest visual artist: William Mazza - live painting & video



ニューヨーク生まれのヴィジュアル・アーティストWilliam Mazzaのライヴ・ペインティングが動画では全貌がわからなかったのが仕方がないとはいえ残念。やはり生でライヴを観たいものだ。音楽を体験できる場を解放することが何よりも緊急である。

誕生日
配信ライヴと
太陽と薔薇

サン・ラ / 太陽の薔薇色のマンション
Sun Ra - The Rose Hue Mansions of the Sun


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする