A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

坂本龍一vs大友良英etc.@後楽園ホール 2012.3.21 (wed)

2012年03月23日 00時27分47秒 | 素晴らしき変態音楽


『BOYCOTT RHYTHM MACHINE VERSUS LIVE 2012』というイベント。
昨年末から「坂本龍一vs大友良英」というフライヤーが配布されtwitterなどで話題になっていた。これは「音楽による異種格闘技戦」というコンセプトのCD+DVD作品「BOYCOTT RHYTHM MACHINE II VERSUS」が2006年に発表されたのをきっかけに、そのライヴ・バージョンとしてこれまで2009年と2010年に行われたイベントである。ダイジェスト・ビデオと今回のイベントのCMビデオをご覧いただきたい。





今回は「格闘技のメッカ」とも呼ばれ、ライヴ・イベントの開催は20数年ぶりとなる後楽園ホールのセンターステージにて実施された。坂本龍一vs大友良英、いとうせいこうvs Shing02、DJ KENTARO vs Open Reel Ensembleの3組の対決にゲストとして相対性理論のやくしまるえつこが出演。後楽園ホールは初めてだが、格闘技のポスターや歴代ボクサーの写真が飾ってあり、とてもライヴ会場とは思えない雰囲気。場内は真ん中にリングが設置してあり四方に客席がある。20年前両国国技館でスタイル・カウンシルのライヴを観たことがあるが、国技館の伝統的で落ち着いた雰囲気に比べ、より戦闘的で殺伐としたムードに満ちている。夜な夜な激しい格闘技戦が開催され熱狂した観客の怒号が飛び交うのだろう。


客層は老若男女様々でやはり坂本教授のファンが多いようだが、若いロック/ヒップホップ・ファンの姿も目立つ。私の席は南側の最前列だったが、ステージは北側向きにセッティングされているので、ステージ裏から観る形になった。

開演時間前にオープニング・アクトの千住宗臣氏vs服部正嗣氏のドラム対決が始まっていた。天井の高いホールに響くドラムの連打がこれから始まる対決の気分を盛り上げる。

最初にやくしまるえつこ嬢が登場、詩の朗読に続き対戦の開始を宣言する。まずは世界最大のDJ バトル「DMC 2002」をギネス記録で制したターンテーブルニスト、DJ KENTARO氏とオープンリール式電気録音機を使用したエレクトロ・ユニット、Open Reel Ensembleの対決。ステージ後ろにオープンリール・デッキが乱立していてDJ KENTARO氏の姿は見えなかったが、オープンリールの多重的な変調ノイズにターンテーブルでダンサブルなビートを加え、なかなか刺激的なテクノイズを聴かせた。

セット・チェンジでステージ上の機材が全て撤収され、四角いマットのジャングルが露わになる。80年代に作家/クリエイターとして活躍したいとうせいこう氏と現代のラップ/ヒップホップのトレンドセッター、Shing02との対決。いとう氏が政治的メッセージを持った詩を朗読し、そこにDJがヒップホップ・ビートを重ねる。次にプロレスのマスクをかぶって登場したShing02が即興のラップを披露。交互にラップすることで「言葉」によるバトルを展開。個人的には興味の範囲外のラップ/ヒップホップだが、この二人の対決はスリリングでとても面白かった。ずっと椅子に座ってパフォーマンスしていたいとう氏に対して「せいこう立てよ!」と野次が飛び正に格闘技そのものの雰囲気に。最後に握手して終了。矢吹丈と力石徹が死闘を繰り広げた後楽園ホールに相応しいパフォーマンスだった。



やくしまる嬢のメインエベント紹介に続き、待望の坂本教授と大友さんの対決が始まる。このふたりは昨年フェスティバルFUKUSHIMAで詩人の和合亮一氏を交えたトリオの演奏を観た。和合氏の直截的な詩の朗読を前衛的な演奏で引き立てるふたりの演奏は素晴らしいものだった。今回は初のガチンコ対決ということで丁々発止の即興が繰り広げられることを期待したが、結果的には肩透かしに終わった。教授がピアノ、大友氏がパーカッションとギター2台(1台はテーブル・ギター)を演奏。教授の静かなピアノに合わせて大友氏がヴァイオリンの弓でシンバルや金物を擦り音を重ね静謐でアンビエントな演奏が続く。大友氏がフィードバック・ノイズを鳴らしたり、ギターをシンバルに擦りつけたりして挑発するのだが、教授はそれに対峙しようとはせず、せいぜい50年前から使い古されたピアノの内部の弦を弾く奏法を繰り返すばかり。しまいにはお得意の安っぽいメロドラマ風ピアノ演奏でお茶を濁す有様。まるで敵前逃亡、全てが予定調和のまま演奏終了。これじゃとても「対決」と呼べるものじゃない。自分目当てに観に来たお客へのサービスのつもりだったのかもしれないが、教授のジョン・ケージで停止したままの古臭い感性はこの「音楽の異種格闘技戦」には全く相応しくないものだった。はっきり言わせてもらえば、坂本龍一(敢えて呼び捨て)はもう実験的・前衛的な音楽からきっぱり足を洗い、軟弱な”癒し系売音家”としての活動に専念してもらいたい。こちらの世界には不要な人物である。



終演後、妙な流れでDJ KENTARO氏を含め関係スタッフの人たちと飲みに行くことに。話はDJ界の裏話から男女関係の与太話まで広がる。教授の演奏なんかより飲み会の方がよっぽど楽しかった。

格闘技
勘違い野郎
どっか行け

たぶんあの演奏で満足した人の方が圧倒的に多いのだろうけどネ。


<告知>
飲み会でご一緒したToastie(熱海宝子)嬢が参加するフリージャズ・ユニット「秘宝感」がツアーを行う。
3/24(sat) 新宿ピットイン 昼の部「昼ピで昼ビ」
3/30(fri) 大阪ROYAL HORSE
3/31(sat) 名古屋jazz inn Lovery
まだライヴを観たことはないが動画を観る限りは刺激的な若手バンドである。坂本某の弛緩した演奏を聴くよりも”現在進行形”の音楽を体験したいならぜひ行ってみて欲しい。


コメント (4)
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