A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

エレガントで曖昧な家具の音楽~新生ペンギン・カフェ来日に思う

2012年06月28日 00時34分51秒 | こんな音楽も聴くんです


新生ペンギン・カフェの来日が静かな話題になっている。
1973年にロキシー・ミュージックを脱退し、2作のロック・アルバムをリリースしたブライアン・イーノは、70年代半ばから前衛的な現代音楽、ニューエイジ的な作風を展開するようになり、自らの知名度を活かしてそれまで光の当たらなかった音楽を世に紹介する活動を始めた。その第1弾がOBSCUREレーベルだった。1976年に設立されたこのレーベルは現代音楽、実験音楽界の知られざる作品を集めた個性的なコンセプトのレーベルで、全部で10作のアルバムがある。イーノ自身はもちろん、ギャヴィン・ブライヤーズ、ジョン・ケージ、デヴィッド・トゥープ、ジョン・アダムス、マイケル・ナイマン、ハロルド・バッドといった現代音楽家の作品が、黒地の街の俯瞰写真に一部小窓が開いている統一されたイメージのジャケットに包まれ発表された。一枚買うと他のLPも買いたくなるアナログ時代ならではのジャケット・コンセプトが秀逸だった。その中にサイモン・ジェフズという作曲家を中心としたペンギン・カフェ・オーケストラによる「ペンギン・カフェへようこそ(Music From The Penguin Cafe)」というLPがあった。当初はレーベル・コンセプト通りの黒地のジャケットで何故かこれだけは小窓がなくシリーズの中で最も地味なアートワークだった。イーノ肝入りのシリーズということでサブカル系のリスナーがこぞって買い込んだ10枚の中で最もオシャレでとっつきやすいサウンドを提示していたのが彼らだった。坂本龍一氏と細野晴臣氏が影響を受けイエロー・マジック・オーケストラ結成のヒントになったとも言われている。日本では順番が前後するが2ndアルバムの大ヒットに続いて1982年にペンギン・キャラクターのイラストのジャケットに変更され国内盤がリリースされた。

OBSCUREレーベルはその10作品で任務を終えたが、キング・クリムゾン、ロキシー・ミュージック、ELPなどのマネージメント会社EGマネージメントのレコード部門のEditions EGの第1弾として1981年にペンギン・カフェ・オーケストラの2ndアルバム「ペンギン・カフェ・オーケストラ」がリリースされた。ペンギン頭のユニークなキャラクターのポップ性も幸いして、アンビエント、ミニマル、テクノなどの音楽が注目を浴びた80年代に、お洒落な環境音楽/サブカルチャーの旗手として一世を風靡し、多くの先鋭的アーティストから支持され、フォロワーを生んだ。何度か来日し数々の映画や舞台、CMで楽曲が使用された。その影響で吉祥寺や国立、その他日本各地に「Penguin Cafe」という喫茶店がオープンした。また当時日本のアングラ・ミュージシャンが集まり”ペンギン・カメ・オーケストラ”と名乗ってゲリラ活動をしていた覚えがある。誰に尋ねても正体は判らないが確かにいたことは間違いない。アングラ系の駄洒落ネタにされるほどポピュラーな存在だった証である。



1997年にサイモン・ジェフズが脳腫瘍で死去して以来、実質的な活動を中止していたが、イギリスで2007年にジェフズ没後10周年コンサートが行われた。日本では同年に坂本龍一氏のレーベル commmonsより、伊藤ゴロー氏プロデュースのベスト盤と坂本龍一、高橋幸宏、嶺川貴子、Steve Jansen、高野寛など豪華ミュージシャンによるトリビュート盤「PENGUIN CAFE ORCHESTRA-tribute-」がリリースされ再評価が高まった。2009年、サイモンの実子であるアーサー・ジェフズを中心に、メンバーも一新して新生「ペンギン・カフェ」として活動を再開。2011年には18年ぶりとなる新作「ア・マター・オブ・ライフ...」をリリースし、今年10月に来日公演が決定した次第である。

先日DOMMUNEにアーサー・ジェフズが出演、トーク+パフォーマンスがUstream中継された。仕事の合間に観ていただけだが、落ち着きのある芸術家然としたアーサーの父への愛情の籠った語り口や舞台芸術・映画音楽への思い入れ等サイモンの遺伝子が継承されていることを実感した。後半のパフォーマンスではアーサーのミニマルなピアノと伊藤ゴロー氏のアコギとのエレガントな演奏に10月の来日公演への期待が膨らんだ。



3日間の公演では日替わりで個性派ミュージシャンがサポートするが、何といっても最終日の相対性理論との対バンは売り切れ必至。プロモーターのオフィシャル・サイトで予約できるので興味のある方は今すぐアクセスすることをお勧めする。

エレガント
昔モーリア
今ペンギン

この機会にペンギン・カメ再結成なんて如何か?

▼サイモン・ジェフズが音楽を担当し、ディヴィッド・ビントレーが振付をしたRoyal Ballet Covent Garden公演の映像。


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