A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【追悼】セシル・テイラー&トニー・オクスレー『アイランザス/アルティッシマ:二つのルート・ソングの両極間距離』

2018年04月07日 00時16分33秒 | 素晴らしき変態音楽


Cecil Taylor & Tony Oxley
Ailanthus / Altissima: Bilateral Dimensions Of 2 Root Songs


2LP) Triple Point Records - TPR 037

Cecil Taylor (p)
Tony Oxley (ds)

Disc 1. Ailanthus
A Untitled 23:09
B1 Untitled 5:02
B2 Untitled 12:36

Disc 2. Altissima
C1 Untitled 10:37
C2 Untitled 9:51
D1 Untitled 12:24
D2 Untitled 9:56

Recorded live at the Village Vanguard NYC, November 6 and 9 2008.

Triple Point Records Website
Audio Sample



天国の樹が生い茂る即興音楽の桃源郷

2009年に設立されたTriple Point Recordsは、フリー・ジャズの貴重音源をアナログ盤オンリーでリリースする希少なレーベルである。フランク・ロウの未発表ライヴ2枚組LP『OUT LOUD』やニューヨーク・アート・カルテットの5枚組LPボックス『Call It Art』を含めこれまで3タイトルをリリースしている。その最初のリリース作品が、現時点(執筆時)でのセシル・テイラーの最新録音作にあたるこの2枚組LP。

英国生まれのドラマーにしてINCUSレーベルの設立者のトニー・オクスレーとテイラーは80年代から何度も共演しているが、21世紀に入ってからは、ほぼレギュラーの共演者としてデュオで公演を行っている。9歳違いの英米前衛音楽の闘士はお互い老境に差し掛かった現在、最良のパートナーとして行動を共にすることを選んだのである。2013年にテイラーが京都賞受賞式レセプションのために来日した時、オクスレーと一緒に演奏することを望んだが、病気のためにそれが叶わなかったという逸話もある。

本作に収録された81分の演奏は、2008年11月NYヴィレッジ・ヴァンガードでの2週間に亘るデュオ公演の10時間を超える録音テープの中から二人が選曲したという。タイトルの『Ailanthus Altissima』とは、別名「Tree Of Heaven」と呼ばれるニワウルシという落葉高木のこと。二分割した「Ailanthus」と「Altissima」という単語が各LPに割り振られている。「二つのルート・ソングの両極間の距離」というサブタイトルは、両者の間の国籍・人種・文化・教育・個性の違いを指すと考えられる。両極間に距離があるからこそ、二人が一緒に奏でる音楽は素晴らしい。当時79歳のテイラーと70歳のオクスレーの演奏は、20年前の1989年にベルリンで録音されたデュオ・アルバム『Leaf Palm Hand』の丁々発止のクロスプレイと比べれば遥かに丸くなったが、魂の奥で結びついた両者の共感の深みが醸し出す世界は、即興演奏の辿り着いた桃源郷を提示しているのかもしれない。

音楽に留まらず、テイラーは詩人、オクスレーは画家としてアートの分野でも名を成す二人のコラボレーションは、詩と絵画から成るジャケットと美麗カラー・ブックレットで完結する。まさに二人のエッセンスを凝縮したトータル・アート作品といえる。シリアル・ナンバー入り475枚完全限定盤。
(2015年8月17日記 剛田武 - 初出:JazzTokyo 2015.8.30)

Cecil Taylor & Tony Oxley, 24 Sep 2009, Amsterdam


ニワウルシ
さよならセシル
ピアニズム

Cecil Taylor Piano at Ornette Coleman Memorial
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする