A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【私のB級サイケ蒐集癖】第21夜:朝日も霞む燻し銀のまどろみカントリーサイケ『モーニング Morning』

2019年03月06日 08時32分52秒 | 素晴らしき変態音楽


朝起きて最初に聴く音楽は何がいいだろう。平日ならば元気の出るパンクやアイドルソングでもいいが、休日の朝はまったりしたい。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコの「日曜の朝 Sunday Morning」は気怠くていいけど「僕は待ち人 I'm Waiting For The Man」や「毛皮のヴィーナス Venus in Furs」や「ヘロイン Heroin」になると朝っぱらからバッドトリップして仕舞う。そんなソフトサイケな朝を過ごしたいあなたに、その名も「モーニング Morning」というカリフォルニア州ロサンゼルス出身のバンドをおススメしたい。

筆者が彼らのレコードに出会ったのは1985年吉祥寺トニーレコードだった。この店のことは以前も書いたが、神保町に本店があったトニーレコードは中古盤店の老舗で、アメリカからセカンドハンドのレコードを箱単位で仕入れていたらしく、6,70年代のアメリカンポップスやロックの在庫が豊富だった。灰野敬二がSilver ApplesやNightcrawlersなどサイケのレア盤を見つけたのは神保町店の安売り箱だったと聞いたことがある。筆者がレコード店に足繁く通いはじめた80年代半ばでも見たことも聞いたこともない謎のレコードが売れないまま置いてあった。
灰野敬二の黒の音楽サロン@代々木ミューズ音楽院 2014.8.25(mon)
【極私的名盤】ダグラス・ファー『ハード・ハートシンギン』~”全員号泣”サイケ・ブルース・バンド
【私のB級サイケ蒐集癖】第13夜:バーバラ・キース、サイケからカントリーフォーク経由ハードロックへの転身

そんな中にモーニングの『Morning』というアルバムを見つけた。当時洋書で購入したサイケレコードのガイド本に写真が載っていたのを思い出した。朝焼けの筈だがどう見ても世界の終わりにしか見えない紫色の空、手前の沼は緑色に汚染され、投身自殺した亡霊のようなメンバーの顔が浮かんでいる。ハヤカワSF文庫のゴシックホラーサイエンスフィクション小説の表紙にしても垢抜けない。聴いてみると、サウンドの方も垢抜けないカントリーロック。分かり易いサイケを期待していたので肩透かしだったが、何処か懐かしい田舎臭さに愛着を感じ何度か聴くうちに、漂うようなコーラスワークの浮遊感に魅了され、微妙にチューニングがズレたピアノの音にアシッド風味を感じるようになった。特に「眠たい瞳 Sleepy Eyes」は知られざるアシッド・フォークの名曲である。

Morning 1970 Sleepy Eyes


90年に下北沢にあったサイケのプレミア盤が多い中古盤店WINDで2ndアルバム『Struck Like Silver 銀のように打たれて』を手頃な価格で手に入れた。真っ黒な山肌に大きな銀の延べ棒。山の向こうから陽の光が差しているが、白い雲に覆われ暮夜けてしまっている。裏ジャケの左下隅にメンバー3人の写真が山下りするように置かれている。いまひとつ晴れないカントリー/フォークロックに磨きがかかったが、70年代の土臭いレイドバックとは異なる、葉っぱ臭いユルい陶酔感がある。

Morning - And Now I Lay Me Down


朝起きてマリファナを一服、吐き出した紫の煙で日光が屈折し乱反射している。すでに魂は桃源郷に遊び、空っぽの頭蓋と楽器を奏でる手足は月面のように軽い重力で宙に浮かんだまま夜を待つ。「朝」ならぬ「大麻(あさ)」の香りに満ちたまどろみの音楽である。

●モーニング Morning

Members:
Jay Lewis - guitar, banjo, vocals (1970-72)
Barry Brown - guitar, drums, vocals (1970-72)
Jim Hobson - keyboards, vocals (1970-72)
Jim Kehn - drums, guitar, vocals (1970-72)
Terry Johnson - guitar (1970-72)
Bruce Wallace - bass (1970-71)
Stuart Brotman - bass (replaced Bruce Wallace) (1972)

60年代半ばにロサンゼルスで活動していたガレージバンドThe Coachmen、The Duvals、Wind、Moorpark Intersectionなどのメンバーを中心に70年に結成された。中心メンバーはジェイ・ルイス、バリー・ブラウン、ジム・ホブソン、ジム・カーンの三人。Vaultからアルバム『Morning』(70)とシングル『Tell Me A Story / Easy Keeper』(71)、Fantasyから『Struck Like Silver』(72)をリリースするが解散。メンバーはそれぞれローカルシーンで活動する。詳しいストーリーはhttp://www.nickwarburton.com/wordpress/?cat=13を参照のこと。

麻ぼらけ
眠りの果ての
桃源郷

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする