90年代半ばまでは、海外の60年代のロックバンドの動く映像を観れるのは映画だけだった。有名なバンドであれば『モンタレーポップ』や『ウッドストック』のようなドキュメンタリー映画で観れたが、B級サイケやガレージパンクバンドは、ヒッピーやバイカーといったカウンターカルチャーをテーマにした映画にちょい役で出演した映像でしか観れなかった。名作とされる『イージー・ライダー』は時々名画座で上映されたが、それ以外のヒッピー映画は日本で上映されることはなく、ごくたまに昼か深夜のテレビの映画枠で無様に編集されて放送されることがあるくらいだった。しかも全く関係のない邦題になっていて、タイトルだけ見てもどんな映画か分からなかった。YouTubeはもちろんDVDもなくVHSビデオが主流だった80年代末~90年代に新宿にエアーズという海賊ビデオ店があって、明らかに違法コピーのヒッピー映画やガレージパンクの編集ビデオが販売されていた。粗悪な画像と音だったが、レコードでしか知らないB級サイケバンドが動く姿に興奮した覚えがある。それから30年余り経った今、自分の中では伝説となっているヒッピー映画の数々がYouTubeで簡単に観れる時代になった。当時の自分が知ったら歓びのあまり失禁してしまうだろう。そんなヒッピー映画のサントラLPを久々に聴いて30歳若返った気分に浸るのも悪くなかろう。
●サンセット通りの暴動 / Riot on Sunset Strip (Tower – DT 5065 / 1967)
1966年後半に実際に起こったサンセット通りの夜間外出禁止令に対する暴動が発生してから6週間後に撮影され、1967年に公開された。サンセット通りの暴動が起きた当時の様子を再現するとともに、主人公の少女と離婚した両親との関係が描かれている。ハイライトは彼女がLSDを投与されアシッド・トリップを体験する場面、後に警察の調べによって集団レイプの被害者であることを知らされる場面など。TV放映時の邦題は『青春の罠・性と反抗』。スタンデルズ The Standellsとチョコレート・ウォッチ・バンド The Chocolate watch Bandというロサンゼルス2大ガレージパンクバンドが出演している他、60年代B級映画の首領The Sidewalk Sound(Davie Allan &The Arrows)をはじめ無名のアーティストが参加。サイケ前夜のガレージ/サーフ・ロックを堪能できる。
Riot on Sunset Strip Arthur Dreifuss, 1967
●白昼の幻想 / The Trip (Sidewalk – ST-5908 / 1968)
ジャック・ニコルソンの脚本を「マシンガン・シティ」のロジャー・コーマンが製作・監督した作品でLSDを服用した1人の青年が体験する“幻想の旅”をスクリーンに再現したもの。撮影はアーチ・R・ダルゼルで特殊モンタージュや特殊レンズ、オプティカル処理などを駆使し、妖しく美しい幻想の数々を映像化している。衣裳はリチャード・ブルーノ、特殊セットをディック・バーンとカール・ブレイナードが担当。出演はピーター・フォンダ、スーザン・ストラスバーグ、ブルース・ダーン、デニス・ホッパー、サリ・サッチスほか。音楽はマイク・ブルームフィールド(g)、バディ・マイルズ(ds)、バリー・ゴールドバーグ(key)等からなるバンド、エレクトリック・フラッグ The Electric Flagが担当。ホーンセクションを交えたブルース&ソウル・ロックに、モーグ・シンセとエレクトリック・ヴァイオリンを加えたサイケなサウンドを聴かせる。
The Trip (Trailer 1967)
●嵐の青春 / Psych-Out (Sidewalk – ST-5913 / 1968)
主演はジャック・ニコルソン、スーザン・ストラスバーグ、ブルース・ダーン。文字通りの青春映画であり、LSD文化発祥の地・サンフランシスコのヘイトアシュベリーを舞台に、ドラッグ・カルチャーにのめり込む若者達の生態を描いた映画。旧ビデオ邦題『ジャック・ニコルソンの嵐の青春』、TV放映時の邦題『都会の中の俺達の城』。ロサンゼルスのサイケバンド、ストロベリー・アラーム・クロック The Strawberry Alarm Clockとザ・シーズ The Seedsが出演、他にコーラスグループThe StorybookやスタジオセッションバンドBoenzee Cyyque(ジミヘンの「紫の煙」のパクリ)が参加。『サンセット通りの暴動』に比べてアシッド度数は桁違いに高い。
Psych-Out 1968 (Director's Cut 2015 Blu-Ray Edition) [HD] 1080p
●ヒッピー革命 / Revolution (United Artists Records – UAS 5185 / 1968)
ジャック・オコネルが製作・監督し、1967年にサンフランシスコで撮影されたドキュメンタリー映画。当時のヒッピーたちのインタビューに加え、カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ Country Joe & The Fish、クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス Quicksilver Messenger Service 、スティーヴ・ミラー・バンド Steve Miller Band、ダン・ヒックス Dan Hicks(シャーラタンズ The Charlatans)、オールガールズバンドのエース・オブ・カップス Ace Of Cupsなどの演奏が収録されている。1996年に再編集され『The Hippie Revolution』というタイトルで劇場公開された。サントラ盤にはQuicksilver Messenger Service, Steve Miller Band マザー・アース Mother Earthの3バンドが収録されているが、映画で使われたライヴ音源とは異なるスタジオ録音となっている。
Revolution (1968) - Documentary 1968 (Gonzo) Summer of Love
ヒッピーに
憧れていた
パンク少年
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