A Challenge To Fate

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【地下ジャズDisc Review】アダム・ルドルフ/ゴー:オーガニック・ギター・オーケストラ『レゾナント・ボディーズ(共鳴体)』

2022年01月21日 01時57分55秒 | 素晴らしき変態音楽


Adam Rudolph / Go: Organic Guitar Orchestra 
Resonant Bodies

Meta Records – Meta 026

As heard stereo from left to right(ステレオ再生時に聴こえる左から右の順序):
Liberty Ellman – electric guitar
Nels Cline – electric guitar
Joel Harrison – electric guitar, national steel guitar
Jerome Harris – electric and bass guitar, lap steel guitar
Miles Okazaki – electric guitar
Damon Banks – electric bass guitar
Marco Cappelli – acoustic guitar
David Gilmore – electric guitar
Kenny Wessel – electric guitar

Adam Rudolph – handrumset (on Deneb only)

1. Parallax
2. Albireo
3. Eta
4. Mira
5. Fawaris
6. Dolidze
7. Cygnus
8. Gliese
9. Deneb

Music composed and spontaneously conducted by Adam Rudolph
Interpretation and realization by the ensemble

Recorded live at Roulette Intermedium, Brooklyn, NY on November 23, 2015 by Caley Monahon-Ward
Mixed and mastered by James Dellatacoma at Orange Sound Studio, NJ
Organic arrangements and orchestration by Adam Rudolph

Bandcamp
Adam Rudolph Official Site

六十三弦有機的即興交響楽団による天地創造の試み

ワールド・ミュージックの創始者(NYタイムズ)、パーカッションの達人(Musician誌)と評されるシカゴ出身の作曲家/インプロヴァイザー/パーカッショニスト、アダム・ルドルフがニューヨークの精鋭的ミュージシャンを集めて結成したギター・オーケストラ。ロック・バンドWilcoからオーネット・コールマンやカサンドラ・ウィルソンなどと共演するジャズ/即興系まで、9人のギタリスト/ベーシストが、ルドルフのスポンテニアスな汎民族的コンポジションを自由な解釈で展開する。

アダム・ルドルフは1955年シカゴ生まれ。アフリカ系の住民が多い地区で幼少の頃からブルースやジャズに親しんで育った。10代の頃にハンド・ドラムを演奏しはじめ、シカゴやデトロイトでセッションやライヴ活動をするようになり、1973年にMaulawi Nururdinのアルバム『Maulawi』にコンガで参加する。1978年にアフリカのミュージシャンとともにThe Mandingo Griot Societyを結成、ワールド・ミュージックの先駆者となる。1988年にサックス奏者ユーゼフ・ラティーフと出会いドラマーとして共演するとともにプロデューサーとしてもコラボレーションする。自己のグループAdam Rudolph's Moving Pictures、Hu: Vibrational percussion group、Go: Organic Orchestraなどで活動。これまでにDon Cherry, Jon Hassell, Sam Rivers, Pharaoh Sanders, L. Shankar, A.A.C.Mの共同創始者のFred AndersonとMuhal Richard Abrams, Wadada Leo Smith, Omar Sosaなどと共演している。

ルドルフは2002年から“21世紀の未来型オーケストラ”=Go Organic Orchestraとして様々な編成のビッグバンドによる作品を発表してきた。初期は11人のパーカッショニストと11人のフルート/クラリネット奏者の編成だったが、2005年に弦楽や金管楽器を含む30人編成になり、2015年の『Turning Towards The Light』はギターのみの編成だった。民族楽器も西洋楽器も区別なく取り込み、特定のスコアを使わず個々の演奏者の感性に任せた即興的なアンサンブルを尊重するスタイルは、異文化のミクスチャーとしてのワールド・ミュージックではなく、人類共通の音楽表現から生まれる多様性を包括したヒューマン・ミュージックと呼ぶにふさわしい。

本作はギター編成によるGo Organic Guitar Orchestraの2015年11月23日のファイナル・コンサートのライヴ録音。9人の演奏者合計で63本の弦と108のペダル(エフェクター)を使ったという。ルドルフは演奏者たちに、自分がギタリストではなく、例えばオーボエ、シンガー、モーグ・シンセ、鳥の群れをプレイしていると想像するよう要望した。別の楽器のスタイルやテクニックにインスパイアされて新しい音を生むことができるように。その結果生まれたのは、創造性と多様性に満ちた異次元のアンサンブルだった。楽曲タイトルは白鳥座の星の名前になっている。アルバム・タイトルの『Resonant Bodies(共鳴体)』とはギターのボディであるとともにヒューマン・ビーイング(人間)のボディ(身体)をも指す。ルドルフは語る「サン・ラは“Space Is The Place(宇宙こそその場所)”と語った。さらに私は場所が広がるほど共鳴の余地が増えると付け加えたい。それは物理の領域だけでなく、人間の意識に於いても真実だ」。

#1 Adam Rudolph Go: Organic Guitar Orchestra Live @ FringeArts, Phila 11-22-2015


多様なエレクトリック・エフェクトを通した9つのギターとベースが融合・衝突・調和・分断・接触・分離するブラウン運動のようなサウンドは、手法的にはピエール・シェフェールのミュージック・コンクレートを思わせるが、スチール弦を振動させて発生する物理的なレゾナンス(音響)はギター・アンサンブルであることを強く主張する。いわばフィジカルとメタフィジカルのアンビバレンツ(二律背反)をオーガニック(有機的)に内包する音響体である。それはまさに、同じくコスモス(調和)とカオス(混沌)のアンビバレンツを内包するスペース(宇宙)の縮図であり、レゾナント・レプリカ(音響複製)である。アダム・ルドルフと9人のギタリストが創造した『共鳴体』は、モーゼの『創世記』に描かれた天地創造の再検証と言えるかもしれない。検証結果はこのアルバムを聴いたあなたの心の中に生まれた共鳴の大きさで量るしかない。

十戒の
掟は不要
ギター共鳴体

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