海外のオルタナティヴ・ミュージック・フェスの中でもアーティスト自身がキューレイターを努め、毎回ユニークなラインナップで知られる「All Tomorrow's Parties(ATP)」が10周年を迎え、遂に日本上陸。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのシングル「All Tomorrow's Parties」のB面「I'll Be Your Mirror」をイベント・タイトルにした新シリーズで登場だ。海外勢、日本勢共にかなりマニアックなラインナップだったのでどうなることかと思ったが、蓋を開ければソールド・アウト。新木場の駅前には「チケット譲ってください」の札を持った若者が目立つ。ダフ屋も出ていた。
私の目当ては勿論灰野さん(昨年ロンドンで開催されたATPに出演している)だったが、フェスとしてのATP自体に興味があったし、聴いたことのない海外のアーティストも観てみたかった。
スタジオ・コーストは今までゆらゆら帝国やクロマニヨンズなどのライヴで来たことがある。3000人以上入る都内最大のライヴハウスのひとつだ。タイムテーブルを見るとステージが2つある。ステージ2はどこかと思ったら、メイン会場の裏にある小型のテントだった。これがクラブ・アゲハなのだろうか。
灰野さんを最前列で観ることを最大の目標として、事前にどのアーティストを観るかスケジュールを立てておいたのだが、ステージ進行の遅れや、入場規制で予定通りには観れなかった。でもノー・チェックのバンドが意外に面白かったりしていい感じでイベントを楽しめた。
イベントの幕開けはボアダムズ。ドラムを6台円形に並べて、その真ん中でEYEちゃんが指揮をしながら雄叫びをあげるという演奏。大きなスクリーンにステージを真上から映した映像を投射し遠くからでも演奏者の様子が分かる。映像的にもドラムが円をなす構成が面白かった。トライバルなビートと効果的なライティングが高揚感を生み、極上のトランス状態へ誘う。ずっと聴いていたかったが、途中で灰野さんの出演するステージ2へ移動。
Boredoms @I'LL BE YOUR MIRROR Tokyo
ステージ2の開場と共に入場し最前列を確保。ステージ1に比べて悲しいほどの小ささ。300人も入れば満員だろう。ステージにはマーシャル+ハイワットの2段積アンプが3台、ベース・アンプ、エアシンセを乗せたテーブル、椅子とマイクがセッティングされている。ライヴ友達と談笑しながら開演を待つ。その内ボアダムズが終わったのだろう、観客が次々と集まってきた。開演時間には既に超満員、入場規制が敷かれていた。
灰野さんがふらっと登場。SGを手にする。最初の一音でぶっ飛んだ。覚悟はしていたが地面が振動するほどのハンパ無い爆音! 何でも川を越えて新木場の駅あたりまで聴こえていたそうだから凄い。灰野さんは激しいアクションで暴れまくる。30分くらいギターの豪音に酔った後、三味線の弾き語り。「語り」というより「絶叫」だが。本格的に三味線に取り組みたいと語っていた通り、この古典楽器を完全に自分のモノにしてしまったようだ。♪息をしているまま葬ってやる♪ ギター以上に情念の込もった演奏だった。次にエアシンセ。またしても轟音がテントを揺らす。奏でる灰野さんの悪魔祓いのような動きが美しい。最後にギターに持ち替えて轟音の後に静かな爪弾きで45分のステージが終了。観客から大歓声が上がる。それに応えて灰野さんがガッツ・ポーズ!初めて見た。
Keiji Haino ATP Tokyo
灰野さんにノックアウトされた後は気持ちもリラックスしてフェスを楽しもうというモードになる。前評判のいいFuck Buttonsを観にステージ1へ行くと、進行が遅れていて、その前のAutoluxが始まるところだった。ステージ前列まで行き至近距離で観戦。撮影・録音禁止ではなかったので、観客は写真撮り放題。このおおらかさが海外発のライヴらしくていい。Autoluxは女性ds、男性g、bのトリオで如何にもソニック・ユースに影響されたクールなロックを聴かせる好バンドだった。
Autolux @I'LL BE YOUR MIRROR Tokyo
続いてFuck Buttons。テーブルの上にコンピューターや電子楽器やおもちゃを並べ、クラフトワーク+音響派といった感じの奇妙なエレクトロ・サウンドを聴かせる。観客のノリもいい。しかしずっと立っていて疲れたので一時外へ退避。フード・スペースにビールを持って座り込む。ステージ2ではメルト・バナナが演奏中。入場規制で中へは入れないが音はガンガン漏れて聴こえてくる。昔から変わらぬアヴァン・パンクと言葉を吐き捨てるようなYakoのヴォーカルが懐かしい。会場内はモッシュの嵐だろう。アンコールの2曲だけ会場の中で聴くことが出来た。
Fuck Buttons @I'LL BE YOUR MIRROR Tokyo
Melt Banana ATP Tokyo
ステージ1へ戻るとオーストラリアのvln、g、dsのトリオDirty Threeが演奏中。結構な年配の3人が奏でるジプシー音楽風のサウンドに観客も盛り上がっている。期待してなかったがハチャメチャに楽しいライヴ・バンドだった。
Dirty Three5@I'll be your mirror fest Japan
フェスのトリを務めたのが今回の目玉カナダ出身のGod Speed You! Black Emperor。10年ぶりの来日。「スタジオ・ボイス」のノイズ特集でも紹介されていた彼らのサウンドは、ノイズというよりアンビエント。ギター3人、ベース2人、ドラム2人、ヴァイオリン1人と大人数の割には轟音ではなく静かに盛り上がる幽玄な演奏。ギタリストのひとりが河端一氏そっくりで笑ってしまった。歌は無いがそれが逆に音の表情を豊かにする。静かに始まりじわじわと壮大なクライマックスへ上り詰める構成にピンク・フロイドやタンジェリン・ドリームのようなプログレに通じるものが感じられた。観客は彼らの生み出すゆらぎに身を任せて身体を揺らせている。曲が終わると大歓声。この手のバンドが若者に受けているのが不思議な気がする。2時間に亘る長い演奏だったがこのフェスを象徴するような神々しさに溢れるステージだった。
Moya - Godspeed You! Black Emperor Live@I'LL BE YOUR MIRROR 2.27 2011
のべ8時間のスタンディング・イベントはとても疲れたが、これをきっかけに来年以降もATPが日本で定期的に開催されることになれば嬉しい。出来れば次回は灰野さんをメイン・ステージで観たいなぁ。
新しい
ロックの形
ATP
音楽雑誌でこのフェスはどう取り上げられるだろう。日本の音楽ジャーナリズムの試金石となるイベントだといえる。
私の目当ては勿論灰野さん(昨年ロンドンで開催されたATPに出演している)だったが、フェスとしてのATP自体に興味があったし、聴いたことのない海外のアーティストも観てみたかった。
スタジオ・コーストは今までゆらゆら帝国やクロマニヨンズなどのライヴで来たことがある。3000人以上入る都内最大のライヴハウスのひとつだ。タイムテーブルを見るとステージが2つある。ステージ2はどこかと思ったら、メイン会場の裏にある小型のテントだった。これがクラブ・アゲハなのだろうか。
灰野さんを最前列で観ることを最大の目標として、事前にどのアーティストを観るかスケジュールを立てておいたのだが、ステージ進行の遅れや、入場規制で予定通りには観れなかった。でもノー・チェックのバンドが意外に面白かったりしていい感じでイベントを楽しめた。
イベントの幕開けはボアダムズ。ドラムを6台円形に並べて、その真ん中でEYEちゃんが指揮をしながら雄叫びをあげるという演奏。大きなスクリーンにステージを真上から映した映像を投射し遠くからでも演奏者の様子が分かる。映像的にもドラムが円をなす構成が面白かった。トライバルなビートと効果的なライティングが高揚感を生み、極上のトランス状態へ誘う。ずっと聴いていたかったが、途中で灰野さんの出演するステージ2へ移動。
Boredoms @I'LL BE YOUR MIRROR Tokyo
ステージ2の開場と共に入場し最前列を確保。ステージ1に比べて悲しいほどの小ささ。300人も入れば満員だろう。ステージにはマーシャル+ハイワットの2段積アンプが3台、ベース・アンプ、エアシンセを乗せたテーブル、椅子とマイクがセッティングされている。ライヴ友達と談笑しながら開演を待つ。その内ボアダムズが終わったのだろう、観客が次々と集まってきた。開演時間には既に超満員、入場規制が敷かれていた。
灰野さんがふらっと登場。SGを手にする。最初の一音でぶっ飛んだ。覚悟はしていたが地面が振動するほどのハンパ無い爆音! 何でも川を越えて新木場の駅あたりまで聴こえていたそうだから凄い。灰野さんは激しいアクションで暴れまくる。30分くらいギターの豪音に酔った後、三味線の弾き語り。「語り」というより「絶叫」だが。本格的に三味線に取り組みたいと語っていた通り、この古典楽器を完全に自分のモノにしてしまったようだ。♪息をしているまま葬ってやる♪ ギター以上に情念の込もった演奏だった。次にエアシンセ。またしても轟音がテントを揺らす。奏でる灰野さんの悪魔祓いのような動きが美しい。最後にギターに持ち替えて轟音の後に静かな爪弾きで45分のステージが終了。観客から大歓声が上がる。それに応えて灰野さんがガッツ・ポーズ!初めて見た。
Keiji Haino ATP Tokyo
灰野さんにノックアウトされた後は気持ちもリラックスしてフェスを楽しもうというモードになる。前評判のいいFuck Buttonsを観にステージ1へ行くと、進行が遅れていて、その前のAutoluxが始まるところだった。ステージ前列まで行き至近距離で観戦。撮影・録音禁止ではなかったので、観客は写真撮り放題。このおおらかさが海外発のライヴらしくていい。Autoluxは女性ds、男性g、bのトリオで如何にもソニック・ユースに影響されたクールなロックを聴かせる好バンドだった。
Autolux @I'LL BE YOUR MIRROR Tokyo
続いてFuck Buttons。テーブルの上にコンピューターや電子楽器やおもちゃを並べ、クラフトワーク+音響派といった感じの奇妙なエレクトロ・サウンドを聴かせる。観客のノリもいい。しかしずっと立っていて疲れたので一時外へ退避。フード・スペースにビールを持って座り込む。ステージ2ではメルト・バナナが演奏中。入場規制で中へは入れないが音はガンガン漏れて聴こえてくる。昔から変わらぬアヴァン・パンクと言葉を吐き捨てるようなYakoのヴォーカルが懐かしい。会場内はモッシュの嵐だろう。アンコールの2曲だけ会場の中で聴くことが出来た。
Fuck Buttons @I'LL BE YOUR MIRROR Tokyo
Melt Banana ATP Tokyo
ステージ1へ戻るとオーストラリアのvln、g、dsのトリオDirty Threeが演奏中。結構な年配の3人が奏でるジプシー音楽風のサウンドに観客も盛り上がっている。期待してなかったがハチャメチャに楽しいライヴ・バンドだった。
Dirty Three5@I'll be your mirror fest Japan
フェスのトリを務めたのが今回の目玉カナダ出身のGod Speed You! Black Emperor。10年ぶりの来日。「スタジオ・ボイス」のノイズ特集でも紹介されていた彼らのサウンドは、ノイズというよりアンビエント。ギター3人、ベース2人、ドラム2人、ヴァイオリン1人と大人数の割には轟音ではなく静かに盛り上がる幽玄な演奏。ギタリストのひとりが河端一氏そっくりで笑ってしまった。歌は無いがそれが逆に音の表情を豊かにする。静かに始まりじわじわと壮大なクライマックスへ上り詰める構成にピンク・フロイドやタンジェリン・ドリームのようなプログレに通じるものが感じられた。観客は彼らの生み出すゆらぎに身を任せて身体を揺らせている。曲が終わると大歓声。この手のバンドが若者に受けているのが不思議な気がする。2時間に亘る長い演奏だったがこのフェスを象徴するような神々しさに溢れるステージだった。
Moya - Godspeed You! Black Emperor Live@I'LL BE YOUR MIRROR 2.27 2011
のべ8時間のスタンディング・イベントはとても疲れたが、これをきっかけに来年以降もATPが日本で定期的に開催されることになれば嬉しい。出来れば次回は灰野さんをメイン・ステージで観たいなぁ。
新しい
ロックの形
ATP
音楽雑誌でこのフェスはどう取り上げられるだろう。日本の音楽ジャーナリズムの試金石となるイベントだといえる。
インタビューで灰野さんが「タンバリンの一打で宇宙で一番大きい音を出す」的な事を言っててなんか納得した記憶があります。
I'll Be Your Mirror面白そうですね。フジロックはニ―ルヤング目当てで行った事があるのですが、会場が広すぎて疲れました。
灰野さんの三味線+絶叫はイベントを通して白眉でした。まさに三味線の一撃で宇宙を表現していました。
来週は静寂ワンマンが控えています。灰野さんはかなり気合いが入っているようでとても楽しみ。いつも通り最前列で観るつもりです。