クリス・ピッツィオコスは2022年1月にニューヨークを離れベルリンに移住した。その動機は語られていないが、数年前から何度もヨーロッパをツアーし、特にドイツではメールス・フェスティバルをはじめ各地の音楽フェスやイベントに出演し、現地のミュージシャンとの交流を育んできた。いわばニューヨークとベルリンを拠点として遊牧民のような音楽活動をしてきたと言える。30歳を過ぎてベルリンへ移ることで人生の新しいチャプターへと踏み出したのである。実際に1月以降、ドイツはもちろん、フランス、イタリア、スイス、オーストリアなどヨーロッパ各地をツアーし、忙しくも充実した活動を行っている。
5月中旬に久々にアメリカ大陸を訪れ、カナダで2回、ニューヨークで4回のライヴを行っている。その中で5月21日にブルックリンのサンセット・パークにあるベーシスト、ティム・ダールのスタジオ兼ベニューThe Statueでのライヴ映像がYouTubeで公開された。「Underground music in Sunset Park. On the waterfront.(サンセット・パークの海辺での地下音楽)」と題された対バン・イベントである。
●シット・ポニーII Shit Pony II
Matt Nelson - soprano, tenor saxophone
Michael Coleman - synth
Hamir Atwal - drums
Ross Peacock - synth
ウィーゼル・ウォルターのグループで活動するサックス奏者マット・ネルソンをはじめ、ブルックリン・シーンの実力派による新ユニットのデビュー・ライヴ。ドラムのブラストビートに2台のシンセのエレクトロノイズと流麗なサックスが絡むハードコアなインプロヴィゼーション。
Shit Pony II - live at Statue - May 21 2022
●プルヴェライズ・ザ・サウンド Pulverize The Sound
Peter Evans - piccolo trumpet
Tim Dahl - electric bass, voice, electronics
Mike Pride - drums
ピーター・エヴァンス(tp)、ティム・ダール(b)、マイク・プライド(ds)というNY即興シーンのスーパー・トリオ。グループ名は「サウンドを粉々にせよ」という意味。2015年と2018年にアルバムをリリースしている。エヴァンス持ち前の超絶技巧トランペットを筆頭に、3人がパワー全開で3人が爆走する演奏は、エナジー・インプロの究極である。
Pulverize The Sound - live at Statue - May 21 2022
●クリス・ピッツィオコス Chris Pitsiokos
Chris Pitsiokos - alto saxophone
凱旋公演はアルトサックス・ソロ。最近エレクトロニクス機材の研究をしているクリスだが、ここでは少しルーパーを使うだけで、基本的に生音で勝負。循環呼吸で途切れることなく繰り出されるフリークトーンは、かつてないほど物音的な響きを持ち、人間の感情を交えない「音」の本性を暴き出すように挑戦的に迫る。ピッツィオコスにとってテクニックやスピードは表現手段ではなく、内臓を制御する自律神経と同じような無意識の機能なのかもしれない。
Chris Pitsiokos - solo alto - at Statue - May 21 2022
イベントには他にKim Cass(b) & Sam Ospovat(ds)のデュオも出演した。
ピッツィオコスは5/26までニューヨークでライブを行い、月末にベルリンへ戻り、6月4~6日に開催されるメールス・フェスティバル2022に出演する。
ニューヨーク
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ハードコア
▼最新ソロ・ライヴ・アルバムがダウンロード・リリースされた。
Chris Pitsiokos / Two Live Solos
1. Florence 2018 10:58
2. Berlin 2021 24:13
First solo recorded at Tempo Reale in May 2018 in Florence
Second solo recorded at KM28 in November 2021
Mixed and Mastered by Chris Pitsiokos
All music by Chris Pitsiokos
https://chrispitsiokos.bandcamp.com/album/two-live-solos
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