Nonclassical/Tokyo Vol.1
London x Tokyo x Remix
featuring: アイシャ・オラズバエフ、サム・マケイ、ジェームズ・グリア、灰野敬二、三浦永美子、波多野敦子、網守将平、Nonclassical DJs
ロンドン発のニュークラシックサウンドが日本上陸!かつてThom Yorkeともコラボレーションしたまったく新しいクラシック音楽の潮流その名も”Nonclassical”(ノン・クラシカル)!スティーブ・ライヒ、ヤニス・クセナキスらの楽曲が新しい音楽の血流とともにここに蘇る!スペシャルゲストの灰野敬二(中世音楽DJセット)も必見!
⇒NONCLASSICAL Official Site
筆者が20年程前にクラシック専門クラブDJを夢見た経緯は「爆クラ」の記事に書いたっきりで、結局イベントには行かず仕舞い。最近はクラシックを聴くことも減ってしまった。ところがレコード店のノイズ・アヴァンギャルド・コーナーでは、ノイズや前衛ロックよりも現代音楽や初期エレクトロ系の方が幅を利かせている。これは如何にと思っていたところ、現音ブームの一端を担うイベントが開催された。「非(ノン)クラシカル」というネーミングはそのまんま過ぎる気もするが、変に捻った名前よりストレートでいいのかも。灰野がDJで出演するのも何かの縁か。
⇒DANCE with CLASSIC~爆音クラシック、世界プレミアDJの夢、そして現存する世界最高齢のクラブDJ
●アイシャ・オラズバエフ、サム・マケイ、ジェームズ・グリア
(写真の撮影・掲載については主催者の許可を得ています。以下同)
ノン・クラシカルの中核メンバーのマケイとグリア、そして新進気鋭のヴァイオリニストのオラズバエフによるショーケース演奏。全体的にアンビエントなドローン演奏で、既存のクラシックの枠を超えていない気がした。水を打ったような客席の静けさも、クラブイベントと云うより鑑賞会。最初だから仕方が無い。
●灰野敬二
スクリーンで四方を囲われたDJブースで灰野の中世音楽DJが始まる。DJタイムの気軽さで、リラックスした観客の話の輪が出来る。複数の音源をミックスする灰野のプレイは、じっと聴くと相当ディープだが、背景音と位置づけると、クラブと云う非日常空間の演出に相応しい。
●三浦永美子
「ロンドン×東京×リミックス」というタイトル通りに日本の若手アーティストが出演。ピアニストの三浦はレーベル主催者ガブリエル・プロコフィエフの作品とジョン・リチャーズのエレクトロニクスとのデュオ曲を演奏。正確無比な指さばきは間違いなく音大育ち。その才能を野蛮ギャル度120%に転化する潔さがナイス。
●波多野敦子
もうひとり若手女子演奏家、波多野敦子のビオラ演奏。「フジツボの叫び」(初演)とされるが、即興部分も多いように思えた。会場で入手したチラシによれば、波多野は”オーダーメイドミュージック”として楽曲・音源制作を請け負っている。三浦と同じ野蛮ギャルぶりを発揮した。
●アイシャ・オラズバエフ
会場は満員の大盛況。クラブイベントらしく演奏中もところどころで会話を続ける声がする。音量的には小さい演奏に聴こえるペチャクチャを諌めるべきか許容すべきか、ちょっと心が靄ついた。網守将平のターンテーブル演奏の予定が変更になり、再びアイシャ・オラズバエフが登場してヴァイオリン・ソロ。スティーブ・ライヒ 作曲「ヴァイオリン・フェイズ」はテープとの共演で予定調和的。それはそれでとても面白いが、続く即興的な奇想曲で、彼女本来の自由度と野蛮度と実験度の高い伸びやかな演奏を披露。惚れ惚れするほど素晴らしかった。
次に登場したノンクラシカルDJのチェンバーロック/テクノ/ダンス音楽的なプレイに観客が立ち上がりダンスを始めた。やはりクラブは深夜過ぎなきゃ盛り上がらないのだろう。クラシックでクラブイベント、の神髄を見届けたい気がしたが、終電時間でアウト。
現代音楽が如何にヒップでスマートか、21世紀的センスが発揮されたイベントだった。定期的に開催されるようになれば面白いだろう。
現代音楽
同時代音楽
新時代音楽
主催者のガブリエル・プロコフィエフは作曲家のプロコフィエフの孫。実験打楽器奏者のルーカス・リゲティは、作曲家リゲティの息子である。現代音楽二世三世が活躍する時代になった。