A Challenge To Fate

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【Disc Review】柳川芳命 – 藤田亮 / BURAIHA : YANAGAWA-FUJITA DUO '19

2019年12月17日 02時04分24秒 | 素晴らしき変態音楽


CDR : Buraiha-02
2019/11/06 ¥1,000 (tax included)

柳川芳命 YANAGAWA Homei (alto-sax)
藤田亮 FUJITA Ryo (drums)

1. Duo Improvisation (29:14)  

Sep.28, 2019
Live at SHUYUKAN (酒游館)

無頼派インプロヴァイザーが通った後には波紋が残され年輪となる。

名古屋を拠点とするサックス奏者柳川芳命と大阪のドラマー藤田亮のデュオによるCDR作品第2弾。ファースト『柳川芳命 – 藤田亮 / 無頼派二重奏』は2018年9月8日の録音だったが、本作はほぼ1年後の2019年9月28日同じ滋賀県酒游館でのライヴ録音である。タイトルはローマ字になっているが『何にも頼らず スタイルは自分で創る』無頼派流儀に習い、誰のようでもない、己の即興演奏に挑む二人のコラボレーションである。前作は「抑制が利かない演奏」になりそうなほど自由奔放に楽しむ二人の時に暴走気味の感情が漲っていたが、「この音には年輪がある」と書かれた本作はどちらかと言えば思索的な探究心のある演奏が貫かれている。1年の間にここまで深化した、という訳ではなかろう。柳川・藤田ともに十二分な経験と実力のあるインプロヴァイザーであり、しかも外部の情報に都度都度反応にて色が変化するカメレオンというより、自らのアイデンティティを演奏の中心核に潜ませた上で、相手からの刺激を体内に取り入れかき混ぜて自らの色を加えて放出する、譬えてみれば圧搾機のような屈強な音楽戦士である。両者共に相手を喰い殺すことも可能だし、逆にお互いそっぽを向いて知らん顔を決め込んだフリをして目に見えない交歓模様を描くことも可能である。ここに収められた30分に少し足りない音の重なり合いは、平静に見える大海の水面下で魚類やプランクトンや海藻等無数の生命の営みが繰り広げられる様を思わせる、豊潤な含みを秘めたコンデンスミルクのような濃度の高い時間の営みに他ならない。

海面の波紋は樹木の年輪に似ている。どうりで聴き終えた後の余韻がエコーのようにフラッシュバックする筈だ。筆者の魚群探知機ならぬ無頼感知能力に磨きがかかって来たのかもしれない。


JazzTokyo Disc Review#1574『柳川芳命 – 藤田亮 / 無頼派二重奏』

音楽と
海と年輪
圧搾機

コメント
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