浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

永山事件

2012-11-10 21:48:12 | 日記
 今日岩波書店の『世界』を購入した。現代日本社会のありようを、理性的に考えていこうという雑誌。こうした雑誌は、とても少ない。ほとんどのメディアは、理性にではなく、人間の劣情に依存し、売れれば良いという無責任な放言を繰り返している。

 『世界』は、人間は信頼しうるということを背景にもつ雑誌である。

 特集は「領土問題と歴史認識」であるが、ボクはこの特集についてではなく、まず「永山事件 封印された鑑定記録」について語りたい。

 NHKの唯一の良心的な番組、教育テレビで毎週日曜日22時から放映される“ETV特集”。先月「永山則夫 100時間の告白~封印された精神鑑定の真実」は、重い問題を取り扱った番組であった。1969年、19歳の永山少年が4人を拳銃で射殺するという事件を起こした。第一審は死刑、第二審は無期懲役、最高裁では高裁へ差し戻し、最終的には死刑が確定し、1997年に死刑は執行された。

 獄中で、永山則夫は『無知の涙』(河出文庫)などを著した。極端な貧困の中に育った永山少年が、なぜ凶悪な犯行を侵したのか。

 実は、石川義博氏が永山少年の鑑定を行った。その鑑定を行う中で石川氏は、永山少年の肉声をテープにとっていた。番組は、そのテープをもとに、この事件を、現代の報復的な裁判が横行するなかで、もう一度問いかけようとしたものだ。

 すばらしい番組であった。それは以下で見ることが出来る。

http://www.dailymotion.com/video/xuclhm_yyyy-yyyyyyyy-yyyyyyyyyyyy-1-2-2012-10-14_news

http://www.dailymotion.com/video/xucpx9_yyyy-yyyyyyyy-yyyyyyyyyyyy-2-2-2012-10-14_news

 この番組を制作した堀川惠子氏がこの『世界』に記した文が、またすばらしい。過酷な生育過程をへて、永山は「どうして自分は生まれてきたのか」、「俺は何のために生きてきたのか」という問いを発する。思春期に抱く重大な問いである。人は、この問いに答えられないまま、あるいは問い続けながら生きていく。その問いは、多様な人間関係の中で、あるいは読書経験の中などで問われ続けていくのである。

 だが、永山の場合は、この問いに向かい合う契機を持たなかった。つまりそうした人間関係や読書経験を持てなかったのだ。

 残念ながら、時の経過は、永山少年のような生育過程をなくす方向には動かなかった、児童虐待とかネグレクトなどのことばが多く見られるような時代になってしまった。

 永山事件は、現代に再検証されるべきものである。堀川氏は、いずれ岩波書店で『封印された鑑定記録』を出版されるという。ぜひ読んでみたい。

 この『世界』の文章と、堀川氏が制作した番組も、見て、そして考える価値がある。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【映画】トガニ 幼き瞳の告発

2012-11-10 14:50:10 | 日記
 韓国映画である。
 
 ボクの正義感が、ムラムラと湧き上がる映画だった。聴覚障害者の子どもたちが、校長や教師などから性的迫害や暴行を受けていた。新しく赴任した美術の教師が、その現実に立ち向かっていく。

 しかし、せっかく告発しても、地域の権力基盤を構成している校長等が、カネをばらまくなど様々な手段を講じて執行猶予となる。韓国社会も、日本の社会と同様に、正義はなかなか実現しない。

http://dogani.jp/

 ただ、この映画の原作を読んだり、映画をみた人びとが立ち上がって、犯罪者たちを追及し学校を廃校にさせるなど、正義の実現に向けて闘ったという。

 人間として許せない現場を見たとき、あるいはそういうことを知ったとき、私たちはどういう行動をとるか。見て見ぬふりをするのか、それとも許せないという人間的怒りを持ってたちあがるのか、そういう重要な選択に迫られることがある。後者が選ばれなければならないのは言うまでもないが、しかしその道がとても厳しいこともありうる。
 ボクは思う、後々後悔しないようにするためには、人間的怒りを持って一歩踏み出すことが最良の精神的に安定する生き方である、と。

 映画の中で次の言葉が綴られた。

 私たちが闘い続けるのは、世の中を変えようとしているのではなく、世の中が私たちを変えられないようにするためです

 汚い世の中が、私たちの純粋な気持ちや正義感を曇らせていく。そうさせないのだという決意も必要かと思った。

 見て欲しい映画である。シネマイーラで、16日まで上映している。11時50分~上映(125分)。


 
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする