「バック・トゥ・ザ 江戸絵画~若冲・蕭白・蘆雪・白隠~」 加島美術

加島美術
「バック・トゥ・ザ 江戸絵画~若冲・蕭白・蘆雪・白隠~」
2019/3/21~3/31
 
 
加島美術で開催中の「バック・トゥ・ザ 江戸絵画~若冲・蕭白・蘆雪・白隠」を見てきました。
 
今から300年前の江戸時代中期、いわゆる奇想ならぬ、「際立った個性」(公式サイトより)を放つ絵師たちがいました。
 
そうした絵師を紹介するのが「バック・トゥ・ザ 江戸絵画」で、タイトルにもあるように、若冲をはじめ、蕭白、蘆雪、白隠のほか、岩佐又兵衛に林十江らの約35点の作品が、展示、ないし販売されていました。
 
会場内の撮影の許可を頂戴しました。
 
伊藤若冲「柳に叭々鳥図」
 
まず目立っていたのは、特に人気の若冲で、「柳に叭々鳥図」では、風に吹かれた柳に向かい、叭々鳥が首をくねらせては舞い降りていました。柳の幹や葉は、軽妙でかつ素早い筆致で表していて、濃い墨によって象られた鳥とは対比的な姿を見せていました。ともかく鳥を多く描いた若冲でしたが、叭々鳥に関しては類例が多くなく、金閣寺の襖絵のほか、数点が確認されているに過ぎないそうです。
 
伊藤若冲「雙鶏図」
 
「雙鶏図」は、番いの鶏を双幅に描いた作品で、丸みを帯びて柔らかい雌と、堂々と起立する雄を左右に表していました。まるで書のような勢いのある尾羽などは、いかにも若冲ならではの描写でしたが、墨を細かに散らしたような羽根の表現も興味深いものがありました。
 
伊藤若冲「引千切」
 
その若冲に、風変わりな「引千切」と題した作品がありました。右手へ余白を広く用い、左に丸いものが置かれていて、そもそも「引千切」を知らなければ、何を表しているか分からないかもしれません。
 
結論からすれば、餡と餅で出来、京都のひな祭りや、お祝いごとに用いられるお菓子の引千切を、お盆にのせた様子を表した作品でした。若冲の最晩年の85歳に制作したと伝えられていて、かつては栗とも言われていましたが、緩やかな線は、確かに餅の弾力感を伝えているかのようでした。
 
右奥:長澤蘆雪「躑躅群雀図」
 
蘆雪の「躑躅群雀図」が魅惑的でした。赤々とした花を咲かせた躑躅の周りに雀が群れていて、水浴びをしたり、羽を繕ったりしては、忙しなく活動する雀の容態を巧みに描いていました。またどこか笑っているような、いわば擬人化した表現も面白いかもしれません。
 
円山応挙「雪柳狗子図」
 
この蘆雪の雀に負けないほどに可愛らしいのが、円山応挙の「雪柳狗子図」でした。雪をかぶった柳の木の下で、三頭の仔犬がじゃれあっていて、一頭は雪に戯れるようにひっくり返り、またもう一頭は別の仔犬の背中に乗っては遊んでいました。時に応挙46歳の作品として伝えられています。
 
白隠慧鶴「鍾馗図」
 
白隠の「鍾馗図」も迫力満点でした。鋭い眼光で睨みを利かせた鍾馗を、太く、即興的な筆致で描いていて、足元には剣を覗かせていました。なおこの鍾馗には、隠し文字があると言われていますが、一体、何が記されているのでしょうか。
 
最後に私にとって衝撃的なまでに強い印象を与える作品と出会いました。それが水戸出身で、立原翠軒に才能を見出された、林十江の「虎独風直図」でした。
 
林十江「虎独風直図」
 
一頭の虎が、強い風に向きつつ、咆哮する姿を描いていて、荒々しい筆遣いは、もはや何かに取り憑かれたかのように乱れ動いていました。また咆哮する虎の表情も鬼気迫っていて、あたかも風の向こうに対峙する別の動物を威嚇しているかのようでした。これほど凄みのある動物画もあまりほかで見ることはありません。
 
独学で絵を学んだ林十江は、水戸南画の草創期の絵師として重要な地位を占めたものの、作品が水戸の地を離れなかったこともあり、必ずしも一般に知られませんでした。また37歳にして世を去ったため、残された作品も多いとは言えません。
 
遡ること約30年前、1988年に林十絵の回顧展が板橋区立美術館で開催されたそうですが、再びまとめて作品を見る機会があればと思いました。
 
 
さて「バック・トゥ・ザ 江戸絵画」とは、メインビジュアルからしても明らかなように、アメリカのSF映画、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」をもじって付けられています。
 
 
そして、昨年末、来日中だった、博士役のドクを演じたクリストファー・ロイド氏が来店し、偶然にも、その日に完成したというビジュアルデザインにサインをしたそうです。サイン入りポスターも画廊入口に掲示されていました。
 
 
WEBサイト、及び店頭にて必要事項を記入して申し込むと、展覧会の特製カタログが無料で頂けます。(限定数)ドク博士らしきシルエットが、作品のワンポイント解説を加える趣向で、現在、府中市美術館で開催中の「へそまがり日本美術」の監修を担った、金子信久氏のテキストも付いています。詳しくはギャラリーへお問い合わせ下さい。
 
僅か11日限定の展覧会です。会期中のお休みはありません。
 
3月31日まで開催されています。
 
「バック・トゥ・ザ 江戸絵画~若冲・蕭白・蘆雪・白隠~」 加島美術@Kashima_Arts
会期:2019年3月21日(木)~3月31日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~18:00
料金:無料。
交通:東京メトロ銀座線京橋駅出口3より徒歩1分。地下鉄有楽町線銀座一丁目駅出口7より徒歩2分。JR線東京駅八重洲南口より徒歩6分。
 
注)会場内の写真は主催者の許可を得て撮影しました。
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