都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「目 非常にはっきりとわからない」 千葉市美術館
千葉市美術館
「目 非常にはっきりとわからない」
2019/11/2〜12/28
千葉市美術館で開催中の「目 非常にはっきりとわからない」を見てきました。
アーティストの荒神明香、ディレクターの南川憲二を中心に活動する現代アーティストチームの「目」は、これまでにも資生堂ギャラリーでの個展(2014年)の他、さいたまトリエンナーレ(2016年)などにおいて、空間を大胆に変容させた作品を出展させては、人々の注目や関心を集めてきました。
その「目」による美術館初の個展が「非常にはっきりとわからない」で、「美術館の施設全体の状況をインスタレーション」(美術館サイトより)として展開した作品を公開していました。
*本エントリの内容は、主に美術館の公式サイトやリリースに記された情報、及び会場内撮影可能エリア(1階)の作品の感想で構成しています。メインの7階と8階の展示の具体的内容については触れていません。
ところで現在、千葉市美術館は、2020年の拡張リニューアルオープンに向けて工事中です。美術館の下の階に入居していた中央区役所は、今年の5月に複合施設「きぼーる」へ移転し、跡地にアトリエや美術図書室、常設展示室を開設すべく、整備が進められています。
よってしばらく前から建物外側にも工事用のフェンスが張られ、隣接地では拡張のための空調設備工事の準備も行われていました。
1階エントランスに到着すると、白い防炎シートが辺りを囲っていて、普段とは明らかに雰囲気が違うことが見て取れました。通常、千葉市美術館では、ビルの8階が受付に当たり、その後、8階から7階へと展示室が続いていますが、今回の「目」の個展は、1階のさや堂ホールに受付が設置されていました。
さや堂ホールとは、旧川崎銀行千葉支店の建物を復元保存したもので、8本の円柱が並ぶネオ・ルネサンス様式の天井高のあるスペースは、コンサートなどにも活用されています。
そのさや堂ホールから「目」の展示が始まっていました。受付を済ませ、ホールの内部を見渡すと、ほぼ全面が白く半透明のビニールで覆われていて、奥には高い足場も組まれていました。また雛壇には、美術館のものと思しき備品が半ば散乱するように置かれていました。
そして彫像らしきオブジェも梱包された状態にあり、足元には引越し業者の養生シートが張られるなど、さも展示の設営や準備の作業がそのままの状態で残されているようでした。
透明のビニールで囲まれたホールの出入り口を抜けると、今度は青い養生シートで覆われたエレベーターホールが姿を現しました。もはや展示を終えて、通常、観客は立ち入れない、作品の移設作業の場に立ち会っているかのような錯覚に陥るかもしれません。
この後、エレベーターにて8階、もしくは7階にあがり、「目」の展示を見ていく流れとなっていましたが、これ以上はネタバレに当たるため、伏せておきたいと思います。なお展示は、7階と8階のどちらのフロアからも自由に鑑賞出来るように作られていました。(その旨は案内にて受付されます。)
結果的に私は、7階と8階のフロアにて、約2時間近く滞在していたかもしれません。いずれのフロアも紛れもなく千葉市美術館でありながら、通常とは明らかに異なっていて、何度か上下に行き来すると、自分の立ち位置、あるいは何を見ていて、そして見ていないのかが分からなくなるほどでした。率直なところ、美術館を出た後も、何を見たのか、把握出来たのかが覚束ず、まさにタイトルの「はっきりと分からない」という言葉が強く残りました。
美術館のサイトに「様々な状況が集積されてゆく動的な展示空間」と記されていますが、私がこれまでに接した「目」の展示の中では、確かに最も動きを感じる内容でした。資生堂ギャラリーの個展の際、ギャラリー空間をホテルへと仕上げた「目」でしたが、今回はより美術館という場所や機能を強く意識しては、空間を築き上げていたのかもしれません。その意味ではたとえネタバレがあったとしても、見入る点が多いのではないかと思いました。またチバニアン、すなわち逆転地層という展示の1つのテーマも、作品に反映されているように感じられました。
怪訝な表情で場内を回っている方も少なからず目にしました。率直なところ、すぐに出てしまう方もおられるかもしれません。ともかくひたすらに「気付き」を意識させる展示でしたが、見終わると、「後から気になってきたり、もう一度確かめたくなったり」(美術館リリースより)するような内容ではありました。人の存在や時間も重要な要素でした。
千葉市美術館では初めてパスポート制のチケットが導入されました。一度、チケットを購入すると、会期中、本人に限り、何度でも入場することが出来ます。私も分からなく、見えていない部分を確かめに、改めて出向こうと思いました。
まずは体感しないことには何も始まりません。12月28日までの開催です。おすすめします。
「目 非常にはっきりとわからない」 千葉市美術館(@ccma_jp)
会期:2019年11月2日(土)〜12月28日(日)
休館:11月5日(火)、11日(月)、18日(月)、25日(月)、12月2日(月)、9日(月)、16日(月)、23日(月)。
時間:10:00~18:00。金・土曜日は20時まで開館。
*入場受付は閉館の30分前まで
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
*ナイトミュージアム割引:金・土曜日の19時以降は大学生無料、一般600円。
*期間中、本人に限り何度でも展覧会へ入場可。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口よりC-bus(バスのりば16)にて「中央区役所・千葉市美術館前」下車。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
「目 非常にはっきりとわからない」
2019/11/2〜12/28
千葉市美術館で開催中の「目 非常にはっきりとわからない」を見てきました。
アーティストの荒神明香、ディレクターの南川憲二を中心に活動する現代アーティストチームの「目」は、これまでにも資生堂ギャラリーでの個展(2014年)の他、さいたまトリエンナーレ(2016年)などにおいて、空間を大胆に変容させた作品を出展させては、人々の注目や関心を集めてきました。
その「目」による美術館初の個展が「非常にはっきりとわからない」で、「美術館の施設全体の状況をインスタレーション」(美術館サイトより)として展開した作品を公開していました。
*本エントリの内容は、主に美術館の公式サイトやリリースに記された情報、及び会場内撮影可能エリア(1階)の作品の感想で構成しています。メインの7階と8階の展示の具体的内容については触れていません。
ところで現在、千葉市美術館は、2020年の拡張リニューアルオープンに向けて工事中です。美術館の下の階に入居していた中央区役所は、今年の5月に複合施設「きぼーる」へ移転し、跡地にアトリエや美術図書室、常設展示室を開設すべく、整備が進められています。
よってしばらく前から建物外側にも工事用のフェンスが張られ、隣接地では拡張のための空調設備工事の準備も行われていました。
1階エントランスに到着すると、白い防炎シートが辺りを囲っていて、普段とは明らかに雰囲気が違うことが見て取れました。通常、千葉市美術館では、ビルの8階が受付に当たり、その後、8階から7階へと展示室が続いていますが、今回の「目」の個展は、1階のさや堂ホールに受付が設置されていました。
さや堂ホールとは、旧川崎銀行千葉支店の建物を復元保存したもので、8本の円柱が並ぶネオ・ルネサンス様式の天井高のあるスペースは、コンサートなどにも活用されています。
そのさや堂ホールから「目」の展示が始まっていました。受付を済ませ、ホールの内部を見渡すと、ほぼ全面が白く半透明のビニールで覆われていて、奥には高い足場も組まれていました。また雛壇には、美術館のものと思しき備品が半ば散乱するように置かれていました。
そして彫像らしきオブジェも梱包された状態にあり、足元には引越し業者の養生シートが張られるなど、さも展示の設営や準備の作業がそのままの状態で残されているようでした。
透明のビニールで囲まれたホールの出入り口を抜けると、今度は青い養生シートで覆われたエレベーターホールが姿を現しました。もはや展示を終えて、通常、観客は立ち入れない、作品の移設作業の場に立ち会っているかのような錯覚に陥るかもしれません。
この後、エレベーターにて8階、もしくは7階にあがり、「目」の展示を見ていく流れとなっていましたが、これ以上はネタバレに当たるため、伏せておきたいと思います。なお展示は、7階と8階のどちらのフロアからも自由に鑑賞出来るように作られていました。(その旨は案内にて受付されます。)
結果的に私は、7階と8階のフロアにて、約2時間近く滞在していたかもしれません。いずれのフロアも紛れもなく千葉市美術館でありながら、通常とは明らかに異なっていて、何度か上下に行き来すると、自分の立ち位置、あるいは何を見ていて、そして見ていないのかが分からなくなるほどでした。率直なところ、美術館を出た後も、何を見たのか、把握出来たのかが覚束ず、まさにタイトルの「はっきりと分からない」という言葉が強く残りました。
美術館のサイトに「様々な状況が集積されてゆく動的な展示空間」と記されていますが、私がこれまでに接した「目」の展示の中では、確かに最も動きを感じる内容でした。資生堂ギャラリーの個展の際、ギャラリー空間をホテルへと仕上げた「目」でしたが、今回はより美術館という場所や機能を強く意識しては、空間を築き上げていたのかもしれません。その意味ではたとえネタバレがあったとしても、見入る点が多いのではないかと思いました。またチバニアン、すなわち逆転地層という展示の1つのテーマも、作品に反映されているように感じられました。
本アカウントでは、千葉市美術館で開催中の企画展「目 非常にはっきりとわからない」(11/2-12/28)の鑑賞者の方々から寄せられた「わからない」を発信します。「わからない」は、1階受付付近の「わからない収集BOX」にて収集しています。 #非常にはっきりとわからない #わからない収集プロジェクト pic.twitter.com/pEtAwnU7Va
— 「わからない」収集プロジェクト (@me_wakaranai) November 2, 2019
怪訝な表情で場内を回っている方も少なからず目にしました。率直なところ、すぐに出てしまう方もおられるかもしれません。ともかくひたすらに「気付き」を意識させる展示でしたが、見終わると、「後から気になってきたり、もう一度確かめたくなったり」(美術館リリースより)するような内容ではありました。人の存在や時間も重要な要素でした。
千葉市美術館では初めてパスポート制のチケットが導入されました。一度、チケットを購入すると、会期中、本人に限り、何度でも入場することが出来ます。私も分からなく、見えていない部分を確かめに、改めて出向こうと思いました。
まずは体感しないことには何も始まりません。12月28日までの開催です。おすすめします。
「目 非常にはっきりとわからない」 千葉市美術館(@ccma_jp)
会期:2019年11月2日(土)〜12月28日(日)
休館:11月5日(火)、11日(月)、18日(月)、25日(月)、12月2日(月)、9日(月)、16日(月)、23日(月)。
時間:10:00~18:00。金・土曜日は20時まで開館。
*入場受付は閉館の30分前まで
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
*ナイトミュージアム割引:金・土曜日の19時以降は大学生無料、一般600円。
*期間中、本人に限り何度でも展覧会へ入場可。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口よりC-bus(バスのりば16)にて「中央区役所・千葉市美術館前」下車。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )