「やなぎみわ展 神話機械」 神奈川県民ホールギャラリー

神奈川県民ホールギャラリー
「やなぎみわ展 神話機械」
2019/10/20~12/1



神奈川県民ホールギャラリーで開催中の「やなぎみわ展 神話機械」を見てきました。

1967年に生まれ、「エレベーター・ガール」などの写真シリーズなどで注目を浴びた現代美術家のやなぎみわは、2011年から演劇のプロジェクトを始動させ、ステージ・トレーラーを用いて全国を巡った野外劇「日輪の翼」の上演でも話題を集めました。

そのやなぎみわの写真と演劇に関した作品が一堂に公開されました。前半が「エレベーター・ガール」や「フェアリー・テール」などの写真で、後半に「モバイル・シアター・プロジェクト」と名付けられたインスタレーションの「神話機械」が展示されていました。よって前後半での二部構成の展覧会として捉えても差し支えありません。

もはや代表作と呼んで良い「エレベーター・ガール」や「マイ・グランドマザーズ」などに改めて魅力を感じたのは言うまでもありませんが、今回、私が新たに惹かれたのが、「女神と男神が桃の木の下で別れる」(*)と題した写真連作でした。*チラシ表紙作品。

これは古事記におけるイザナギとイザナミの黄泉平坂(よもつひらさか)のエピソードに着想を得た作品で、イザナギが妻に投げつけたとされる桃をモチーフとしていました。いずれも真夜中の闇を背景に、赤くたわわに実をつけた桃の樹木を捉えていて、福島の果樹園を舞台に大判のカメラで撮影されました。

ともかく妖しいまでに桃が美しく写されていて、それこそ禁断の果実ならぬ、もぎ取るのをはばむかのようでした。桃ばかりが生々しい色彩を放つのを暗い展示室の中で目にしていると、まるであの世へと引き摺り込まれたかのような空想すら誘うかもしれません。これほど桃が恐ろしく見えたのは初めてでした。



一方の「神話機械」は、県民ホールギャラリーで最も特徴的なスペースである、階段のある展示室にて公開されていました。



ここではメインマシン「タレイア」やのたうちマシン「メルポメネー」、それに振動マシン「テルプシコラー」、投擲マシン「ムネーメー」といった、ギリシャ神話の女神の名をつけた4台の機械が展開していて、中には投擲マシンによって投げられたのか、髑髏を模したオブジェの破片も散っていました。そして本来的に4台のマシンは全て自動で動いては、音を鳴らし、光を放ちつつ、無人の演劇空間を構築していくとのことでした。



とは言え、マシンは常に動いているわけではありません。実のところ、私はタイミングを逸してしまい、マシンの演じる様子を見ることは叶いませんでした。


やはりマシンで上演する自動劇ゆえに、可動してこそ作家の意図した光景が現れるのではないでしょうか。これからお出かけの方は、以下の無人公演の時間に合わせて観覧されることをおすすめします。(チケットで観覧可)

【神話機械 上演予定(マシンにより無人公演)】
平日 11:00/15:00
土・日・祝 11:00/14:00/16:00
*上演時間は約15分。



会期最終週には有人のライブパフォーマンスも行われます。(別途チケットが必要)

【神話機械 ライブパフォーマンス ''MM’’】
構成・演出:やなぎみわ
出演:高山のえみ 音楽:内橋和久
日時:11月29日 (金)、30日(土) 19:30開演(19:00受付・上演時間1時間)
場所:神奈川県民ホールギャラリー 第5展示室
料金:全席自由(入場整理番号つき)ベンチ席2000円、立見1500円。
*各回定員100名

11月20日現在、ベンチ席は両日完売、立見席のみ残っているそうです。パフォーマンスの情報、ないしチケット購入については県民ホールギャラリーのWEBサイトをご参照下さい。

なお本展は、今年2月からの高松市美術館(2/2~3/24)に始まり、アーツ前橋(4/19~6/23)、福島県立美術館(7/6~9/1)を経て、神奈川県民ホールギャラリーへとやって来た全国巡回展です。神奈川での会期を終えると、静岡県立美術館へと巡回(2019/12/10日~2020/2/24)します。

それにしても2009年に東京都写真美術館で行われた「やなぎみわ マイ・グランドマザーズ」以来、約10年ぶりの美術館での個展とは驚きました。



私としては旧来からの写真のシリーズに強く惹かれましたが、美術と舞台を「往還」(チラシより)し、ジャンルを超えた1つの物語を紡いでいく、やなぎみわの今の制作を知るにもまたとないチャンスと言えるのかもしれません。



「神話機械」の展示室のみ撮影が可能です。12月1日まで開催されています。

「やなぎみわ展 神話機械」 神奈川県民ホールギャラリー@kanaken_gallery
会期:2019年10月20日(日)~12月1日(日)
休館:木曜日。
時間:10:00~18:00 *入場は閉場の30分前まで。
料金:一般1000円、学生・65歳以上700円、高校生以下無料。
 *10名以上の団体は100円引。
住所:横浜市中区山下町3-1
交通:みなとみらい線日本大通り駅3番出口より徒歩約6分。JR線関内、石川町両駅より徒歩約15分。横浜市営地下鉄関内1番出口より徒歩約15分。
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