「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」 東京国立近代美術館工芸館

東京国立近代美術館工芸館
「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」
2019/9/13〜12/8



東京国立近代美術館工芸館で開催中の「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」を見てきました。


田辺竹雲斎(初代)「柳里恭式釣置花籃」 1900-1920年頃 アビー・コレクション

日本の竹籠や竹の造形作品に魅せられ、約20年以上も収集してきたニューヨークのダイアン&アーサー・アビー夫妻の竹工芸コレクションが、再び海を渡って日本へと里帰りしてきました。


右:飯塚琅かん齋「手付花籃」 1936-1949年頃 アビー・コレクション
左:藤井達吉「銅切透七宝巻雲紋手箱」 1920年 東京国立近代美術館

その数は約200点を超えるコレクションのうちの75点で、竹工芸に限らず、近代美術館所蔵の染織や花瓶などの工芸作品と合わせて紹介されていました。


飯塚琅かん齋「花籃 日朗」 1940年代頃 アビー・コレクション 他

まず会場で興味深いのは、竹工芸作家の作品を東日本と西日本、それに九州といった地域別に展示していたことでした。そもそも日本には600種類以上の竹や笹が存在していて、特に竹は主に日本の南の地方に生育してきました。大分県や山口県、それに栃木県が主な産地として知られています。


「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」会場風景

また西日本の竹は柔らかく、しなり、東日本は固く、九州の竹は水分の含有量が多いという特徴を持っています。こうした竹の性質や、地域によって異なる竹工芸の史的展開などについても解説のパネルなど知ることが出来ました。


藤塚松星「潮」 1978年 アビー・コレクション

現代における竹工芸についても見逃すことは出来ません。ここ十数年、竹工芸は技法や構想においてより多彩である一方、歴史や地域性に対して敬意も示され、伝統と革新の双方を踏まえながら多面的に展開してきました。


生野祥雲斎「竹華器 怒涛」 1956年 東京国立近代美術館

そして近年は美術の素養を持つ作家だけでなく、美術との無関係の分野から竹工芸の道へと飛び込む人物もいるそうです。とはいえ、基礎から技を学ぶには5年から10年、さらに様式を発展させるには「十数年」(解説より)も要するとしています。その精緻でかつ、時に量感のある竹工芸を目にすれば、到底、一朝一夕に作られるとは思えませんが、やはり熟練の手仕事が重要になってくるのかもしれません。


飯塚小かん齋「白錆花籃 雲龍」 1990年 アビー・コレクション

2018年に菊池寛実記念智美術館で行われた「線の造形、線の空間」、それに今年に太田市美術館の「生誕100年 飯塚小玕齋展」(2019年)でも取り上げられた、飯塚琅かん齋や田辺竹雲斎、それに飯塚小かん齋の作品が複数出ていたのにも目を引かれました。実のところ、前者の展覧会が私にとって初めての竹工芸との出会いでもあり、あまり時間をあけることなく、このような形で再び竹工芸をまとめて見られたのも嬉しいところでした。


本田聖流「舞」 2000年 アビー・コレクション

それにしても特に現代の竹工芸に関しては、実用性云々や用途を超え、いわば端的なオブジェとして斬新でかつ、極めて大胆な作品も少なくありません。


長倉健一「花入 女」 2018年 アビー・コレクション

そもそもどのように編み上げたのかすら分からないほど精巧な竹工芸もありました。竹工芸の世界は発見や驚きに満ち溢れていると言っても差し支えありません。


「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」会場風景

アビー夫妻は長年の竹工芸の収集に際し、綿密な研究を元にすることよりも、自らの「鑑識眼と美的嗜好」(解説より)に基づいて購入の決断を下してきたそうです。とはいえ、日本の東西の作品が網羅的にコレクションされていて、竹工芸の多様な魅力に接することも出来ました。


「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」会場風景

これまでにもアメリカ国内の美術館に貸し出されてきたアビー・レクションですが、2017年から2018年にはニューヨークのメトロポリタン美術館で「日本の竹工芸:アビー・コレクション」としてまとめて公開され、約47万名以上を動員するなどして大きな話題を集めました。そして2020年にはコレクションが一括してメトロポリタン美術館へと寄贈されます。


「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」会場風景

作品の撮影も可能でした。(フラッシュ、三脚、動画は不可。)


12月8日まで開催されています。なお東京展終了後、大阪市立東洋陶磁美術館へと巡回(2020/12/21〜2020/4/12)します。おすすめします。

「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」 東京国立近代美術館工芸館@MOMAT60th
会期:2019年9月13日(金)〜12月8日(日)
休館:月曜日。但し9月16日、9月23日、10月14日、11月4日は開館し、翌火曜日は休館。
時間:10:00~17:00 
 *入館は閉館30分前まで
料金:一般900(700)円、大学生500(350)円、高校生300(200)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *本展の観覧料で当日に限り、本館所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可。
場所:千代田区北の丸公園1-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩8分。東京メトロ半蔵門線・東西線・都営新宿線九段下駅2番出口より徒歩12分。
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