2019年11月に見たい展覧会【ラスト・ウキヨエ/大浮世絵/目(mé)】

今年の秋は東日本を中心に、度重なる風水害に見舞われ、各地で甚大な被害が起きてしまいました。関東では、収蔵庫が浸水した川崎市民ミュージアムや、水害により電気設備に影響の発生したホキ美術館が、今も活動を再開出来ない状況に置かれています。特に川崎市民ミュージアムは、被害の全容すら明らかになっていないだけに、再開には相当の時間がかかると思われます。コレクションの状態も大いに懸念されます。

10月は上野の2つの展覧会に混雑が集中しました。1つは東京国立博物館の「正倉院の世界」展で、平日休日を問わず、長蛇の列となり、会期半月にして早くも10万名の入場者を記録しました。また上野の森美術館の「ゴッホ展」も、土日を中心に入場に際しての待ち時間が発生しています。

今月も多くの興味深い展覧会がスタートします。気になるものをリストアップしてみました。

展覧会

・「不思議の国のアリス展」 そごう美術館(~11/17)
・「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」 練馬区立美術館(~11/24)
・「辰野金吾と美術のはなし 没後100年特別小企画展」 東京ステーションギャラリー(11/2~11/24)
・「おかえり 『美しき明治』」 府中市美術館(~12/1)
・「線の迷宮〈ラビリンス〉3 齋藤芽生とフローラの神殿」 目黒区美術館(~12/1)
・「やなぎみわ展 神話機械」 神奈川県民ホールギャラリー(~12/1)
・「描く、そして現れる―画家が彫刻を作るとき」 DIC川村記念美術館(~12/8)
・「ラウル・デュフィ展―絵画とテキスタイル・デザイン」 パナソニック汐留美術館(~12/15)
・「カミーユ・アンロ|蛇を踏む」 東京オペラシティ アートギャラリー(~12/15)
・「金文―中国古代の文字―」 泉屋博古館分館(11/9~12/20)
・「東山魁夷の青・奥田元宋の赤―色で読み解く日本画」 山種美術館(11/2~12/22)
・「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち―悳俊彦コレクション」 太田記念美術館(11/2~12/22)
・「建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」 Bunkamuraザ・ミュージアム(~12/23)
・「鹿島茂コレクション アール・デコの造本芸術 高級挿絵本の世界」 日比谷図書文化館(~12/23)
・「江戸の茶の湯 川上不白 生誕三百」 根津美術館(11/16~12/23)
・「目【mé】 非常にはっきりとわからない」 千葉市美術館(11/2~12/28)
・「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」 横浜美術館(~2020/1/13)
・「アジアのイメージ―日本美術の『東洋憧憬』」 東京都庭園美術館(10/12~2020/1/13)
・「ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華―大様式の形成と変容」 東京富士美術館(10/5~2020/1/19)
・「ニューヨーク・アートシーン-滋賀県立近代美術館コレクションを中心に」 埼玉県立近代美術館(11/14~2020/1/19)
・「北斎没後170年記念 北斎 視覚のマジック 小布施・北斎館名品展」 すみだ北斎美術館(11/19~2020/1/19)
・「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」 江戸東京博物館(11/19~2020/1/19)
・「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション展」 三菱一号館美術館(~2020/1/20)
・「山沢栄子 私の現代」 東京都写真美術館 (11/12~2020/1/26)
・「奈良原一高のスペイン――約束の旅」 世田谷美術館(11/23~2020/1/26)
・「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」 東京国立近代美術館(11/1~2020/2/2)
・「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界」 東京国立博物館・東洋館(11/6~2020/2/9)
・「MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影/ダムタイプ|アクション+リフレクション/ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」 東京都現代美術館(11/16~2020/2/16)
・「ミイラ~永遠の命を求めて」 国立科学博物館(11/2~2020/2/24)
・「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」 21_21 DESIGN SIGHT(11/22~2020/3/8)
・「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命―人は明日どう生きるのか」 森美術館(11/19~2020/3/29)

ギャラリー

・「藤元明 陸の海ごみ」 ギャラリーA4(~11/14)
・「竹村 京 Madeleine. V, Olympic, and my Garden」  タカ・イシイギャラリー東京(~11/22)
・「中岡真珠美 個展 : SCALE PUZZLE」 アートフロントギャラリー(11/7〜12/1)
・「O JUN展 途中の造物」 ミヅマアートギャラリー(11/13〜12/14)
・「三宅信太郎 ふと気がつくとそこは遊園地だった」 小山登美夫ギャラリー(11/16〜12/14)
・「167人のクリエイターと京都の職人がつくる ふろしき百花店」 クリエイションギャラリーG8(11/26〜12/21)
・「ジェイ・チュン & キュウ・タケキ・マエダ セレクションによるグループ展」 資生堂ギャラリー(~12/22)
・「舘鼻則孝 It's always the others who die」 ポーラ ミュージアム アネックス(11/22~12/22)
・「みえないかかわり イズマイル・バリー展」 メゾンエルメス8階フォーラム(~2020/1/13)
・「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(11/28~2020/1/18)
・「αMプロジェクト2019 東京計画2019 vol.5 中島晴矢」 ギャラリーαM(11/30~2020/1/18)

今月は2つの浮世絵の展覧会に注目です。まずは太田記念美術館にて「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち―悳俊彦コレクション」が始まります。



「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち―悳俊彦コレクション」@太田記念美術館(11/2~12/22)

これは「最後の浮世絵師」と呼ばれる月岡芳年や小林清親をはじめ、明治から大正時代にかけて活動した浮世絵師37人に着目するもので、洋画家であり、コレクターとしても知られる悳俊彦(いさおとしひこ)氏のコレクションが一堂に公開されます。


タイトルに「ラスト・ウキヨエ」とありますが、「継ぐ者たち」と定義することで、一般的に衰退したとされる明治の浮世絵を肯定的に捉える意味もあるそうです。おそらくは知られざる浮世絵師に思わぬ優品があるに違いありません。出来れば前後期の展示替えを追いかけたいと思います。

2014年の「大浮世絵展」の続編が約5年の時を超えてやって来ました。江戸東京博物館にて「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」が行われます。



「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」@江戸東京博物館(11/19~2020/1/19)

この「大浮世絵展」は、文字通り、歌麿、写楽、北斎、広重、国芳にスポットを当てたもので、前回のように網羅的に通史を紹介するのではなく、いわば浮世絵師5人のグループ展的な内容となります。


国内のみならず、海外からも優品が出展されるそうです。「誰もが知っており、そして誰もが見たい」とありますが、とりわけ人気の浮世絵師の揃う展覧会だけに、早々から多くの人で賑わいそうです。

ラストは現代美術です。現代アーティストチーム「目」の個展が、千葉市美術館にて開催されます。



「目【mé】 非常にはっきりとわからない」@千葉市美術館(11/2~12/28)

近年、各地の国際芸術祭などでも活動する「目」は、2014年には資生堂ギャラリーで個展を開き、まるでホテルと見間違うようなミステリアスな空間を築いては、多くの注目を浴びました。


その「目」は今回の展示に際し、市原市で発見された地球磁場逆転地層、チバニアンを訪ね歩き、1つの着想のヒントとしたそうです。千葉市美術館のスペースをどのように変容させるのでしょうか。

11月に入って一気に冷えてきました。身体に気をつけてお過ごし下さい。

それでは今月もよろしくお願いします。
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