都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」 神奈川県立近代美術館 葉山館
神奈川県立近代美術館 葉山館
「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」
2021/1/9〜4/11

神奈川県立近代美術館 葉山館で開催中の「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」を見てきました。
イギリスを拠点に活動した20世紀の画家、フランシス・ベーコンは三幅対シリーズなど独自の人物画などで知られ、ピカソと並び称されるほど高く評価されてきました。
そのベーコンの初期の油彩画、素描や資料を紹介するのが「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」で、いずれも日本初公開の約130点の作品が展示されていました。
まず冒頭に並んでいたのが「Xアルバム」と呼ばれる11点の作品でした。これらは19世紀後半の写真用の古いアルバムを元にしたもので、切り離したアルバムの各ページにベーコンがドローイングやコラージュを施していました。
いずれも両面に人物などのモチーフが即興的なタッチで表現されていて、中にはベラスケスの絵画に着想を得た「叫ぶ教皇」といった油彩画のモチーフも含まれていました。ただ油彩の準備段階として描かれたのか、完成後に画面を再現したのかは分かっていないため、油彩画との関連は明らかではありません。会場では1点1点の作品が独立して展示されていたため、360度の角度から両面を鑑賞することもできました。
著名人の雑誌や新聞の写真を元にしたドローイングも興味深いのではないでしょうか。ここではミック・ジャガーやエルヴィス・プレスリー、またジョージ5世やケネディ兄弟の写真などに多様な線や色を加えていて、映画「戦艦ポチョムキン」の乳母をモチーフとした作品もありました。線は写真を傷めるように鋭かったり、また人物を檻で囲むように描いていて、ベーコンの内面的な情念が被写体へとぶつけられているかのようでした。
一方でボクシングや自転車競技のスポーツ写真に線描を施した作品では、選手に合わせて体の主軸を描いたりしていて、動きをより強調するような表現も見られました。ともかく「Xアルバム」シリーズのドローイングと同様、線や色は素早く自在に震えるようで、もはや痙攣しているとさえ思うほどでした。
初期に描いたキュビズムやシュルレアリスム風の10点の油彩画も見どころかもしれません。ベーコンは展覧会にて作品が評価されなかったことから、初期の絵画の大半を破棄したとされていて、今回の出品作は死の直前にアトリエに残されていたものでした。
バリー・ジュールは1978年にベーコンと出会ってから親しく交流していた人物で、ベーコンが亡くなる10日前に手元に残していた2000点もの作品や資料を譲り受けました。それこそ画家の内面を探り出すような秘蔵のコレクションと言って良いかもしれません。

神奈川県立近代美術館 葉山館は、新型コロナウイウイルス感染症対策に伴う「特措法に基づく緊急事態措置に係る神奈川県実施方針」のため、1月12日から3月22日まで臨時休館しました。よってベーコン展も予定通り1月9日に開幕したものの、僅か3日間のみ開催した後、1月12日から展示休止となりました。

現在、緊急事態宣言の解除を受けて3月23日より展示が再開しています。しかし次に渋谷区立松濤美術館(4月20日〜6月13日)への巡回を控えていることもあり、会期の延長はありません。4月11日に閉幕するため、実質的に会期は大幅に縮小されました。

既に葉山を諦めて松濤での展示を待つ方も多いかもしれませんが、葉山では同時開催中の「コレクション展 イギリス・アイルランドの美術—描かれた物語」も合わせて見ることができます。こちらもウィリアム・ブレイクやリチャード・ハミルトンの作品などが充実していてかなり見応えがありました。
展示再開後はベーコン展とコレクション展ともにオンラインでの予約制が導入されました。予約方法等の詳細は同館のWEBサイトをご覧ください。

4月11日まで開催されています。
「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」 神奈川県立近代美術館 葉山館(@KanagawaMoMA)
会期:2021年1月9日(土)〜4月11日(日)
休館:月曜日。但し1月11日は開館。
時間:9:30~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200円、大学生1050円、65歳以上600円、高校生100円。中学生以下無料。
*同日に限りコレクション展「イギリス・アイルランドの美術—描かれた物語」も観覧可。
場所:神奈川県三浦郡葉山町一色2208-1
交通:JR線逗子駅より京浜急行バス「逗11、12系統(海岸回り)」(3番のりば)、及び京急線逗子・葉山駅より京浜急行バス「逗11、12系統(海岸回り)」(南口2番のりば)に乗車し、三ヶ丘・神奈川県立近代美術館前で下車。
「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」
2021/1/9〜4/11

神奈川県立近代美術館 葉山館で開催中の「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」を見てきました。
イギリスを拠点に活動した20世紀の画家、フランシス・ベーコンは三幅対シリーズなど独自の人物画などで知られ、ピカソと並び称されるほど高く評価されてきました。
そのベーコンの初期の油彩画、素描や資料を紹介するのが「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」で、いずれも日本初公開の約130点の作品が展示されていました。
まず冒頭に並んでいたのが「Xアルバム」と呼ばれる11点の作品でした。これらは19世紀後半の写真用の古いアルバムを元にしたもので、切り離したアルバムの各ページにベーコンがドローイングやコラージュを施していました。
いずれも両面に人物などのモチーフが即興的なタッチで表現されていて、中にはベラスケスの絵画に着想を得た「叫ぶ教皇」といった油彩画のモチーフも含まれていました。ただ油彩の準備段階として描かれたのか、完成後に画面を再現したのかは分かっていないため、油彩画との関連は明らかではありません。会場では1点1点の作品が独立して展示されていたため、360度の角度から両面を鑑賞することもできました。
著名人の雑誌や新聞の写真を元にしたドローイングも興味深いのではないでしょうか。ここではミック・ジャガーやエルヴィス・プレスリー、またジョージ5世やケネディ兄弟の写真などに多様な線や色を加えていて、映画「戦艦ポチョムキン」の乳母をモチーフとした作品もありました。線は写真を傷めるように鋭かったり、また人物を檻で囲むように描いていて、ベーコンの内面的な情念が被写体へとぶつけられているかのようでした。
一方でボクシングや自転車競技のスポーツ写真に線描を施した作品では、選手に合わせて体の主軸を描いたりしていて、動きをより強調するような表現も見られました。ともかく「Xアルバム」シリーズのドローイングと同様、線や色は素早く自在に震えるようで、もはや痙攣しているとさえ思うほどでした。
【新着】画家フランシス・ベーコンの日本初公開のコレクションを見逃すな。 https://t.co/B55N2x2BsX
— Pen Magazine (@Pen_magazine) April 5, 2021
初期に描いたキュビズムやシュルレアリスム風の10点の油彩画も見どころかもしれません。ベーコンは展覧会にて作品が評価されなかったことから、初期の絵画の大半を破棄したとされていて、今回の出品作は死の直前にアトリエに残されていたものでした。
バリー・ジュールは1978年にベーコンと出会ってから親しく交流していた人物で、ベーコンが亡くなる10日前に手元に残していた2000点もの作品や資料を譲り受けました。それこそ画家の内面を探り出すような秘蔵のコレクションと言って良いかもしれません。

神奈川県立近代美術館 葉山館は、新型コロナウイウイルス感染症対策に伴う「特措法に基づく緊急事態措置に係る神奈川県実施方針」のため、1月12日から3月22日まで臨時休館しました。よってベーコン展も予定通り1月9日に開幕したものの、僅か3日間のみ開催した後、1月12日から展示休止となりました。

現在、緊急事態宣言の解除を受けて3月23日より展示が再開しています。しかし次に渋谷区立松濤美術館(4月20日〜6月13日)への巡回を控えていることもあり、会期の延長はありません。4月11日に閉幕するため、実質的に会期は大幅に縮小されました。

既に葉山を諦めて松濤での展示を待つ方も多いかもしれませんが、葉山では同時開催中の「コレクション展 イギリス・アイルランドの美術—描かれた物語」も合わせて見ることができます。こちらもウィリアム・ブレイクやリチャード・ハミルトンの作品などが充実していてかなり見応えがありました。
展示再開後はベーコン展とコレクション展ともにオンラインでの予約制が導入されました。予約方法等の詳細は同館のWEBサイトをご覧ください。

4月11日まで開催されています。
「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」 神奈川県立近代美術館 葉山館(@KanagawaMoMA)
会期:2021年1月9日(土)〜4月11日(日)
休館:月曜日。但し1月11日は開館。
時間:9:30~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200円、大学生1050円、65歳以上600円、高校生100円。中学生以下無料。
*同日に限りコレクション展「イギリス・アイルランドの美術—描かれた物語」も観覧可。
場所:神奈川県三浦郡葉山町一色2208-1
交通:JR線逗子駅より京浜急行バス「逗11、12系統(海岸回り)」(3番のりば)、及び京急線逗子・葉山駅より京浜急行バス「逗11、12系統(海岸回り)」(南口2番のりば)に乗車し、三ヶ丘・神奈川県立近代美術館前で下車。
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