『宮永愛子 詩を包む』 富山市ガラス美術館

富山市ガラス美術館
『宮永愛子 詩を包む』 
2023/11/3~2024/1/28



「変わりながらあり続ける」をテーマに活動を続ける現代美術家の宮永愛子は、ナフタリンや樹脂、ガラスの彫刻などを用いた作品を手がけ、国内外の展覧会にて発表してきました。

その宮永の富山市ガラス美術館での個展が『詩を包む』で、水や空気、そして歴史を内包するというガラスの新作のインスタレーションなどを展示していました。



まず冒頭に並んでいたのは「くぼみに眠るそら」と題したシリーズで、宮永が16年ぶりに故郷の京都へ戻り、曾祖父にあたる陶芸家の宮永東山の使用していた石膏型をナフタリンで薄く象った彫刻の作品でした。



時計や猫、それに大黒様といった型によるナフタリンの彫刻は、時間とともにケースの中で移り変わっていて、美しくもはかないすがたを見せていました。



これに続くのが樹脂の中にナフタリンの彫刻を納めた「waiting for awakening」のシリーズで、壁掛け時計や椅子などの彫刻が文字通りに樹脂の中に入っていました。



またいずれの作品にも日付が印字されたシールで封がなされていて、シールを剥がすと樹脂の中に留まるナフタリンが気化していくように作られていました。



今回のハイライトを飾っているのが「くぼみに眠る海」と題したインスタレーションで、いずれも曾祖父が100年前に使っていた陶彫の型を用いたキルンキャストにて制作されたガラスの彫刻でした。



それらは仔犬や猫に鳩、お雛様や恵比寿様などさまざまでしたが、時に片耳のない招き猫や小槌を手にしていない大黒などもあり、可愛らしくも不完全なすがたを目の当たりにできました。



また一連の彫刻がいわば美術館の備品である台座に置いていたのも興味深かったかもしれません。普段ガラス作品を飾っている台座が宮永のガラス作品を載せて独特の景観を築いていました。



このほかドローイングの一つとして行なっているという写真の作品をはじめ、表面に朧げな文字で大潮暦を刻んだガラスの本の「Strata」、さらには釉薬の収縮率の違いにより発生する貫入音に着目した「そらみみみそら」なども展示されていて、宮永の多様な創作を楽しむことができました。



なお富山市ガラス美術館は、能登半島地震の影響により臨時休館していましたが、施設の安全が確認されたため、1月15日より開館しました。

間もなく会期末です。1月28日まで開催されています。

『宮永愛子 詩を包む』 富山市ガラス美術館
会期:2023年11月3日(金・祝)~2024年1月28日(日)
休館:第1・3水曜日(1/3(水)は開場)、1/10(水)、年末年始(12/29~1/1)。
時間:9:30~18:00
 *金・土曜日は20時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、大学生1000(800)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。
 *常設展も観覧可。
住所:富山市西町5番1
交通:富山駅から市内電車環状線にて約12分「グランドプラザ前」下車、徒歩約2分。富山駅から市内電車南富山駅前行きにて約12分「西町」下車、徒歩約1分。
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