『遠藤利克』 SCAI THE BATHHOUSE

SCAI THE BATHHOUSE
『遠藤利克』 
2022/3/8~5/14



SCAI THE BATHHOUSEで開催中の『遠藤利克』を見てきました。

1950年に生まれた彫刻家の遠藤利克は、鉄や木、それに火や水といった素材を使って作品を制作し、国内外の美術館やギャラリーにて作品を発表してきました。

その遠藤のスカイザバスハウスとしては7年ぶりの個展が今回の展示で、会場には主に2つの『空洞説』の彫刻が公開されていました。


床:『空洞説ー鏡像の柩』(2022年) 、壁:『空洞説ー鉛の柩』(2022年)

まず否応なしに目を引くのが、床に置かれた『空洞説ー鏡像の柩』で、直方体の木のオブジェが黒焦げになったすがたを見せていました。またちょうど受付にて彫刻が燃える様子がタブレットにて映されていましたが、それこそ作品を焼成した時の記録映像かもしれません。


『空洞説ー鉛の柩』 2022年

そして床の柩を見下ろすように壁に設置されたのが、鉛の板で出来た『空洞説ー鉛の柩』でした。こちらは同じく柩とあるものの、中はがらんと空いていて、何も置かれていませんでした。

『空洞説ー鏡像の柩』にて興味深いのは、素材に木と火、それに鏡と記されていることでした。しかし黒く炭化した作品のどこを見ても鏡の存在は分からず、そもそも中がどのように作られているかわかりませんでした。



実際のところ『空洞説ー鏡像の柩』の内部に鏡が用いられているとのことでしたが、そもそも作家本人しかすがたを見たことがなく、他の誰かが確認することは叶いませんでした。まさに見る者の想像力に委ねられている作品なのかもしれません。


『空洞説ー鏡像の柩のためのプラン9』 2022年

しかし『空洞説ー鏡像の柩のためのプラン9』とした小品では、棺の上部が空いていて、中に溶けたような鏡が散っていることが見て取れました。言ってみれば、このプランと題する作品こそ、『空洞説ー鏡像の柩』の内部を想像させるものなのかもしれません。

遠藤の展示として思い出すのは、2017年に埼玉県立近代美術館にて開かれた『遠藤利克展ー聖性の考古学』と題した個展でした。


そこでは直径4メートルほどの円筒状の作品や、展示室外の吹き抜けにも舟のようなかたちをした作品を展示していて、あたかも空間を支配するかのような圧倒的な量感を見せていました。

実に関東では26年ぶりの美術館での個展とのことでしたが、改めて大きなスペースにて作品を見る機会があればと思いました。


『空洞説ー鉛の柩のためのプラン7』 2022年


Penオンラインにも展示の様子を寄稿しました。

黒く焦げた柩と鉛の空体に込められた意味とは?日本を代表する彫刻家、遠藤利克の個展が開催中|Pen Online

予約は不要です。5月14日まで開催されています。

『遠藤利克』 SCAI THE BATHHOUSE@scai_bathhouse
会期:2022年3月8日(火)~5月14日(土)
休廊:日・月・祝。
時間:12:00~18:00
料金:無料
住所:台東区谷中6-1-23 柏湯跡
交通:JR線・京成線日暮里駅南口より徒歩6分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩7分。
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