2013.1.28(月)雪
盃状穴を探して旅の写真を調べていると面白い石造物が出てくる。
福島県本宮市の阿武隈川沿いで見つけた、山守神と馬繋ぎ石である。
山守神はその台石に穴があいており、その穴に手を入れて祈願をすると安産の願いが叶うという。産守神ともじったわけだが石の穴に手を入れる行為はお産そのものを表しているのだろう。
右手の台座にこぶし大の穴があいている。(2006.10.29)
神社の石段などに個人的な祈願のために穿つのを二義的盃状穴という。実は今、実験的に盃状穴を創っている。神社に行って やるわけにもいかないので、軟らかそうな砂岩にあけているのだが、これがなかなか大変である。
石で石の穴をあけるというのは実に大変。
つまり個人的な祈願といっても、相当の想いがなければ出来ない行為だと思うのである。病気快癒、安産、家内安全、五穀豊穣など祈願の種類は様々あれど、我々が初詣で祈るような柔な祈願では盃状穴まで穿たないと思うのだ。そういう意味で安産に対する祈りは盃状穴を穿つ行為に最も近いのではないかと想像する。
元々盃状穴が性シンボルという理由もあるが、盃状穴が再生を象徴する祈りの一種であることが、人間の生死が穴にはじまり、穴に終わるという考えに関連しているのではないだろうか。
お産は昔も今も大変なことである。安産に対する祈りというのは強烈なものがあるだろうし、山守神のおまじないや盃状穴穿ちに頼る行為は納得がいくのである。
さて、山守神と同じように阿武隈川沿いに置いてある馬繋ぎ石であるが、穴が貫通していたか確認していない。その時撮った写真では解らないのだ。もし貫通していたら馬繋ぎ石だろうしそうでなければなにかの軸受けとか考えられる。
穴は貫通しているのかな?。(2006.10.29)
馬繋ぎ石というのは名のとおり馬を繋いでおくための石であり、各地でお目にかかるものである。最も多いのが石の上部に小さな穴があいているもの、次が柱状のものにくびれが付いているもの、そして石に鉄輪を取り付けたものの三種が大方のものである。
最もオーソドックスな馬繋ぎ石が平戸市田平町の資料館に展示されていた。しかも土田古弓という弓の名人の鍛錬石、つまり弓の練習用の石として展示されていた。古弓が鍛錬用に使ったことは事実かも知れないが、この石の本来の用途は馬繋ぎであろうと思うのだが。
弓の鍛錬石、元々は馬繋ぎ石だと思う。(2007.4.1)
いずれにしても石造物というのは永久的に残ってゆく、そこに穴があるとなんらかの信仰につながる。薬師様のお堂に必ずぶら下がっている穴のあいた石も見慣れていても一体何のためのものかよく解らない。耳に似ているから耳の病気にご利益があるなんてのもあるが、そんな事だけでは済まないものがあるように思う。
つづく
薬師堂には多くの穴あき石が奉納されている。
【今日のじょん】:積雪は10cm程度、好評につき雪ボールぽんぽこぽんのオンパレード。