晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

穴虫考(122) 葬送習俗語彙 10/2

2014-10-02 | 地名・山名考

2014.10.2(木)曇り

 「葬送習俗語彙」は柳田國男氏が分類民俗語彙として12冊の発行をされたものである。
農村、山村、婚姻などのように12の分野について語彙、つまりことばを収集、分類整理されたものである。
ことばに日本人の過去の生活、文化、風習を探ることが出来るという意図で書かれたようだ。またそこには
「今書いておかないと、言葉の意味も解らなくなり、言葉そのものも消えてしまう」という
危機感のようなものもあったのではないだろうか。
 現実に今、知らない言葉、意味の解らない言葉がほとんどだから、本書は大変貴重なものとなっている。
 本書を読むきっかけとなったのは、中世の古文書にあった「穴」という言葉が残っているかという
ことである。
 「葬送習俗語彙」等が発行されたのは昭和10~20年の間ということで、つまり戦前までの
間に「穴」という言葉があったかどうかと言うことである。
 1,200あまりの語彙とその意味が書かれており、おそらく葬送に関する言葉は
そのすべてが網羅されていると思う。

本書の他に中世の葬送、墓制に関する本を読んでいる。
 穴に関しては、穴仕舞、穴場、穴掘リ酒、穴掘リ役、穴廻リ、穴拝ミの6っつの言葉が見られる。
実はこのすべてが、土葬、埋葬に関する言葉なのである。
 わたしの知りたいのは穴と言っても火葬場を意味する穴であって、この結果は意外なものであった。
語彙は35の分野に分類されているのだが、その一八、火葬の中にはヤマジマイ、ノノヒト、ムセヤなど
23の言葉が載っている。それを読むだけで、かつての火葬の様子がわかるほど詳細に書かれているのだが
「穴」という言葉は表れなかった。ホドが火葬の穴のことである、という穴を表す言葉として出てくる
のみである。
 火葬場を意味する語彙は、ムセヤ、ネフタ、カマバ、ビョウショ、ジフモンジ、ヒヤ(ミマヒ)などがある。
 他の分野の項にも火葬に関係する語彙もしばしば出てくるのだが、穴=火葬場をにおわせる文は
見られなかった。
 この本を見る限り、火葬場としての「穴」という言葉は時代の中で消滅してしまったと考えられる。
もし、わたしの仮説「穴虫は火葬場のある地のことである」というのが真を得たならば、
消えてしまった言葉の発見ということにもなるのだろう。

【今日のじょん】かみさんがビョーインとビヨウインに行ったので一日不在。玄関出るまで
知らん顔してるのに、車庫から車出すとこうやって見てるんだぜ。

コメント
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