2014.10.13(月)雨
釘貫(くぎぬき)とは妙な地名である。福井県の小字一覧で見つけた地名で
そう数は多くないのだが、所々に存在する。葬送に関する関する書物の中で
「棺桶に関して何かすることを釘貫という」のをうろ覚えで憶えていたので
それが地名に出てきたときにドキリとしたわけだ。ところが如何なる内容だったか
如何なる本に書かれていたかさっぱり思い出せない。
中世の葬送墓制の本を読んでいると、おなじみの「餓鬼草紙」の絵が出てくる。
平安時代末期から鎌倉時代あたりの墳墓の様子がよく描かれている。高級な墓
から遺棄葬とも思われる状況まで描かれていて、当時の様相がよく解る。
高級な墓には塔や五輪塔などが設置され、周囲は木の柵で囲いがなされている。
これが釘貫といわれるものである。杭が立てられて、横に貫がとおっているもの
を釘貫と言い、関所の門などは釘貫門といわれるそうだ。
杭貫が訛って釘貫になったのかと思われるが、有名な石像寺の釘抜地蔵は
苦抜きから来ているそうで、釘貫とは関わり無さそうだ。
福井県以外にも分布しており、綾部市、舞鶴市にも1ヶ所存在する。
釘貫が葬送墓地地名だとは言わないが、この釘貫という柵自体が地名として
各地に残っているのは不思議である。例えば京都の御土居(おどい)のような
大規模で恒久的な建造物ならいざしらず、数年で朽ちてしまうような木の柵が
地名として残るのはやはり不自然である。釘貫に何か他の意味があるか、釘貫に
囲まれた何かが当時の人びとにとって特徴的な何かであるということではないか。
そう考えたとき、餓鬼草紙にあるように墓地である可能性がなきにしもあらず
と思うのである。
「葬送習俗語彙」に釘念仏と釘餅がある。
前者は、佐渡で葬式の出た後、村の人たちがこの念仏を唱えるという。塔形版木に
梵字が書いてあって、その周囲に釘を打つという。
後者は佐賀地方で、四十九日の仕上げの餅を釘餅と言うそうだ。この法事を
「四十九日のクギヌギサン」と呼ぶ。
何かありそうだが、現実の釘貫を訪ねてみたい。
【今日のじょん】最近なぜか散歩の帰りに、福井電工さんの倉庫の周囲を廻りたがる。
結構高いのだが、高所は大丈夫のようだ。