日本酒の蔵元直営店のはしりといえば『樽平』であろう。銀座と神田に直営店を持ち、新宿にもこれに準じる店を持っていた。銀座の店は何しろ太田和彦氏の名著『精選東京の居酒屋』(1993年草思社)の一軒めに載っている店である。ただ、2017年に区画整理に引っかかって閉店、今は神田店のみとなった。
樽平酒造は山形県東置賜郡川西町にある300年以上の歴史を持つ酒造メーカーで『樽平』『住吉』のブランドに加え、山田錦を使った大吟醸『雪むかえ』など新たな商品開発にも余念がない。
樽平神田店は神田駅西口から徒歩1分のところにあり、戸を開けるとコの字カウンターが広がり、その周囲に2〜4人席、2階にも部屋がある模様である。
予約して18時半に入るとカウンターは7分の入り、私の席はカウンターから近い2人席、銀行時代の同僚Yさんと久しぶりの一献である。まずはビールで乾杯、お通しは切り昆布となかなか渋い。
頼んだ『芋煮』と『カツオの刺身』が来たところで金の『樽平』を2合冷でもらう。確か、以前は常温だったはずだが、冷たく冷えていて美味い。
独特の日本酒らしさがいい。芋煮は肉が少ないのがやや不満だが、芋も他の野菜も美味しく、山形らしい味(?)がする。
2人で呑んでいるとあっという間に徳利が空になる。大阪時代によく呑んだ店の話などで盛り上がる。
再び2合と併せて『串カツ』『さつま揚げ』『だし巻き』を注文する。山形の郷土料理に来たはずが、単なる居酒屋と同じような注文になる。
まあ、熱々の串カツに辛子とソースを掛けて頂くが、しっかりした樽平は負けることなく美味い。さつま揚げ然り、だし巻き然りである。
3回目の注文の際に同じ酒ばかりでは芸がないと『生吟醸・雪むかえ』をお願いする。ついでに『ししゃも』『〆さば・トリガイ刺身』も注文。
雪むかえは上品で今流行りの酒に近い。樽平の後だと少し物足りないが、呑めば美味い。また、〆さばは酒に合うことを今更ながら実感する。
もう1本の思ったが、2人とも酒は十分ということで『漬物盛り合わせ』を頼むが、赤かぶの甘酸っぱさ、ナスの旨さなど流石に漬物大国山形県だけある。これだけ頂き、2人とも大満足。
ただ、山形県らしい料理は芋煮と漬物だけだったが。ご馳走さまでした。
樽平神田店
千代田区内神田3ー13ー2
0332514140