3月から開催していた面白そうな展覧会をようやく観に行った。そのタイトルが『へそまがり日本美術〜禅画からヘタウマまで』、場所は府中市美術館。
場所もよくわからないため、ネットで調べるとはっきり言って不便、京王線東府中駅から徒歩17分、府中駅からはバス便が複数。あまり道に迷うのも嫌だし、府中駅からのバスにする。コミュニティバスが1番便利で安いが30分に1本、待つのが嫌で先に来た遠いバス停から7分歩くことを選択。美術館通りのハナミズキが咲く道を550m歩いて無事に美術館に到着。
しかし、中に入ると異様な雰囲気。何と長蛇の列となっていた。やむなく最後尾につくが、それから延々と30分も待たされて入場。さらに拍子抜けたのは展覧会はそんなに混んでいない。国立美術館なら待ちなし、の程度。まあ、良心的なんだろう。
中に入ると初めの方は禅画がずらり、墨一色で書いた布袋や寒山拾得、達磨などみんな真剣に考えてみている。私もへそまがりだからなのかもしれないが、中学の頃の教科書にあったあの難解な寒山拾得が本当にわかっているのだろうか?それを真剣に見ている中高年の夫婦を見ている方がよっぽど面白い。
コーナーが変わり、応挙と蘆雪の犬が並んでいるあたりはかなり面白い。さらに小川芋銭の『山色新』と大きく字で書いた絵や銘の方が絵より大きい絵などだんだん面白くなってくる。ヘタウマと書いていたが漱石の絵はまさにその通り。
そのうち国芳が出てきて、次に糸井重里、蛭子能収。まあこんなものかなと思い始めた頃、注目を集めている徳川家光の『木兎』『ウサギ』、さらに息子の家綱の『鶏』などが登場。これらは見ているだけで笑ってしまうが、これらを下賜された大名は何と言ったのだろうと考えると余計に可笑しくなる。
村山槐多の『スキと人』、児島善三郎『松』は純粋に絵として感銘を受ける。しかし、その先はまた寒山拾得、達磨ばかり、こんなの何が面白いのだろう。祇園井特という人の書いた『お菊幽霊図』や蕭白の『後醍醐天皇笠置潜逃図』は目を引いたが、驚くほどのものはなかった。
多少収穫の無さにガッカリして、会場を後にしようとした時に観たかった絵を見ていないことにようやく気づく。たしか、『涅槃図』の筈と図録を辿るとようやく発見。実物は小さな掛け軸であったのだ。涅槃図であるから、お釈迦様が亡くなったことを色々な動物や龍、ワニ、魚などが嘆き悲しむ姿なのだが、これがその表情も含めて興味深い。
しかも釈迦や周りの弟子たちも顔が描かれておらず、さらに赤鬼ときてはやる気なさげにしゃがんでいる。何を描きたかったのかは分からないがとにかく面白い絵であった。私は学がなく、描いた風外本高という人も知らないが、作風は面白い。ただ、個人蔵のため、もう見る機会もなかなかないだろうが、この絵を見るだけに今日来た価値があったと思う。
この展覧会も5月12日まで、個人的には行って損はないと思います。