懐かしい店を本当に久しぶりに訪れた。以前の職場にいた頃、それも最後に訪れたのは2003年だろうからもう16年ぶりにもなる。場所は神田小川町駅から歩いて5分ほどのところにある『龍水楼』という中華料理屋さんである。
実はこの店はランチは普通の中華料理屋さん、しかし、夜は予約専門の羊のしゃぶしゃぶ(シュワンヤンロー)を食べさせてくれる東京では数少ない店である。
ガランとした一階に入ると二階に案内され、6人で円卓を囲む。まずは前菜というか、4品の冷菜。砂肝、豆腐の干したもの、寒天、湯葉とセロリ、これを食べながらビールを飲むのだが、昔と全く変わらず、女将さんに追い立てながら食べる。
するとエビ団子の揚げたものが登場、胡椒と塩だけで頂くのだが、身が甘く、また、香ばしくて美味い。
ここで急いで残っている料理を取り分けてメイン料理を待つ。まずは10種類の薬味が登場、右からにんにく、生姜、豆板醤、腐乳、パクチー、ニラ、ネギ、芝胡醬、ごま油、紹興酒。並んだところで大きな火鍋が運ばれてくる、燃料は炭で、大きな火鍋は煮えたぎっている。ここでご主人登場、随分お年は召されたようだが、名調子は相変わらず。まずはタレの作り方、酢と醤油に10種類の薬味を混ぜて作ること、次に羊のしゃぶしゃぶが中国ではメジャーな高級料理であることなどの説明。
そして脂があまりない薄くスライスした羊肉が各自に4〜5切れ乗ったものが配られ、いよいよスタート。時が止まったようにあの時の旨さが復活、なんて美味い肉なんだろうか。アッサリしているのに旨味があり、これを好みの味付けで食べる贅沢さ。
他のメンバーも絶賛、肉の後には野菜、さらに水餃子、中華麺と続く。忙しいのが玉に傷かも知れないが、これでないと終わらない。次がお待ちかねのデザート、三不粘という卵のデザート。皿につかない、箸に付かない、歯につかないという不思議な甘味。簡単に言うと卵で作った暖かいスライムのような菓子である。
作り方は卵、デンプン、砂糖をラードでじっくり混ぜながら練っていくらしい。北京の居という店で出すのだが、そちらの方がかなり甘いのだそうだ。三不粘を食べるのが楽しみで有吉佐和子は中国に行ったエピソードも昔のままである。
さらに杏仁豆腐、こちらの杏仁豆腐は牛乳でなく、杏の種の中から抽出したもので作った本物。たしかに香りが違う。
そんなこんなで楽しい話を聞きながら2時間、いや、美味かった。そして伝説の湯島聖堂で修行をされたご主人が元気で嬉しかった。御馳走さまでした。
龍水楼
千代田区神田錦町1ー8
0332921001