三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「ゴンドラ」

2024年11月03日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「ゴンドラ」を観た。
映画『ゴンドラ』

映画『ゴンドラ』

<セリフなし映画>の名匠ファイト・ヘルマー待望の最新作。山の谷間の古い2つのゴンドラが、世界をすこし幸福にする物語。11月1日(金)新宿シネマカリテ、アップリンク吉...

 いろいろな意味で象徴的な作品だと思う。
 ゴンドラの乗務員は労働者の代表で、高圧的な駅長は、資本家の代表だろう。サボタージュとストライキ、駅長による横恋慕、差別される身障者、無賃乗車しようとする老婆など、搾取と差別と利己主義が、何度も往復するゴンドラの周囲で象徴的に描かれる。
 そんな中で、乗務員の女性が繰り広げる遊びや芸術的な活動が、人間の自由として楽しく披露される。信頼と優しさ、思いやりは、非情な状況の対比だろう。時間の経過とともに人が移り変わり、子供たちが未来を担う。
 昼と夜。身障者の復権は、たくさんの人々が彼を応援し、デートの夜は、たくさんの人々が女性ふたりの愛を支える。
 現代社会の悲惨さと希望が同居しているような印象の作品で、あっという間の85分だった。唯一のセリフは「OK」である。ひとつのセリフで全人類を肯定している気がした。