FX妻が告白! 夫に言えない1000万円消滅 プレジデントフィフティプラス 2009年6月18日
http://president.jp.reuters.com/article/2009/06/18/3E5AA68A-5637-11DE-9196-D2203F99CD51.php
一時は投資総額が数百億円、数千億円とも噂された為替市場のミセス・ワタナベ。FXブームに乗った日本の主婦たちの異名だ。相場の大逆流に飲み込まれたとき、彼女たちは……。
「2005年から07年度はずいぶん儲けてたんですけど……昨年1月までは、FX(外国為替証拠金取引)はほんとに凄かったんですよ」
愛知県名古屋市内の喫茶店で、筆者の前に腰掛けた市井昌代さん(仮名、53歳)。持ってきたカバンから、テーブルの上に薄茶色の封筒の束がバサリと広がった。膨れ上がった封筒の表側には、どれも地元の税務署の名が入っている。
「パソコンの画面上でしか儲かっていないのに、ここ1~2カ月で120万円以上税金を取られた。現金化してなくても、画面上の儲けから税金を計算するんだって。あちこちに相談したけど、ダメ。もうほんとに腹が立って。新聞でFX投資家を保護する法案のことが出ていたけど、早く通ればいいなあ」
どうやら、確定申告を怠っていたご様子。一時は1000万円以上の利益を上げていたというから、ペナルティを考えただけで空恐ろしい。取材中、何度も、「そちらは税務署と関係ないでしょうね?」と念を押すのも無理はなかった。
割り増しされた税金3年分に加え、08年は何と1000万円超が吹き飛んだ。ここ数年、地方に単身赴任中の夫(55歳)はまだこのことを知らない。堅い大企業に勤め、投資そのものを嫌悪している夫に「とても言えませんよ」と身を硬くするが、「悔しい。今さらやめられますか?」と躍起になっている。
「土・日以外はパソコンから離れられないから、週末には温泉でリフレッシュする」という市井さん。事業で成功した実父から毎年前借りする遺産100万円を元手に、4年前からFX投資を始めた。
「メールについていた広告で、“商品券がもらえる”という謳い文句に釣られたんです。主婦ですよねえ」
家族の名義で100万円ずつで口座を開設した。ドル・円を取引する。朝は4時半に起きてパソコンを開け、為替変動のチャートを見ながら作戦を練る。新聞は地元紙の一紙だけじっくりと読む。毎日のパートの就業時間中も、デスクの下の携帯電話でチラチラと相場をチェック。
どれだけ残業しようと、自宅に戻ってからは、入浴の時間以外は夜12時~2時頃までパソコンと首っ引きだ。子供2人はすでに独立。家事などそっちのけだから、当然家の中は「ぐちゃぐちゃ」。
「最初はやり方が全然わかんなくて、1日5000円稼いだくらいで喜んでたんですが、画面を見ながら、24時間フリーダイヤルで証券会社の人に徹底的に聞いたんです。自分で本を読んで勉強するよりもずっとよくわかります。そういう他人の迷惑を顧みない人じゃないと、FXなんてできっこないですよ」
その甲斐あってか、1年以上経つと、チャートをじいーっと見ていればその後の動きがわかるように。証券マンのアドバイスよりも当たるようになった。
急激な円安に乗じて大儲け。取引業者や口座も、多いときは10社、10口座以上あったから、一時はスワップポイント(2国の通貨の金利差でつく儲け分)だけで1日1万2000円稼げた。「ホクホクだったんですよ」。当時の手帳にはその日ごとの稼ぎが6万数千円、7万数千円などと蛍光ペンで書き込んである。1日30万円以上を稼ぐ日もあった。
「夜中もふっと目が覚めて、ケータイで儲けを確認して、ふふっと笑ってまた寝るとか(笑)」
しかし、08年2月末から状況が一変する。いわずとしれたサブプライム問題と、それに伴うアメリカの景気後退への懸念が急浮上した。数日間に5~6円という凄まじい円高の進行中に、円安を見込んで大きく賭けていた市井さんは、この頃に限ってチャートのチェックを怠っていたのだ。
「3月17日の月曜日でした。前週末に、しばらく口座を見ていなかった業者から警告メールがきたんです。ヤバイ! と思って追い金をネットバンクから各口座に振ったんですけど、朝9時にそれが間に合わず……一瞬で、涙も出なかったです。画面にゼロ。何これ、ポジション何にもない! みたいな」
月・火の2日間に約1000万円が消滅。主な取引業者の一つが、監査中で業務をしていなかった不運も重なった。
「調子のいいときに1円も現金に換えてなかったから、儲けは画面の中だけ。大きな買い物なんかしてないのに、全部消えちゃった……バカみたい」それ以降、手帳への書き込みはない。
6000万円の投資信託も4000万円に目減り。FXと合わせて約3000万円が消えた。「証券マンの口車に乗って損切りしたんです。ベンツか中古マンションが買える額ですよね……」。
取引業者のいくつかが倒産し、口座の大半を解約した。今は、銀行から預貯金を下ろして税金を納める毎日だ。「05年度以降の過少申告加算税が15%。ほかにも延滞税、無申告加算税。それ以外にも市・県民税の請求が十何万もきているし……」何のためにパートをやってるのか、悲しくなっちゃう……と力なく笑った。
FXについては、『1日○万円儲かった』とか、美味しい話ばかりがとかく注目されがちですが、ロイターがこんな興味深い記事を載せていましたので、当ブログでも紹介したいと思います。
人間 『自分だけは大丈夫』と、とかく自信過剰になりがちですが、こんな実体験の大失敗談を聞くと、やはり個人がFXをやる必要性やレバレッジ倍率の規制についていろいろと考えさせられるものがありますし、本業のお仕事に影響したり、朝早くから深夜までパソコンに向かうことを強いられたり、税金の督促に怯えてまで行なうことなのかな…という気がしますね。
(私はレバレッジ否定派のFPなので、多少割り引いて聞いて頂いて結構です)
http://president.jp.reuters.com/article/2009/06/18/3E5AA68A-5637-11DE-9196-D2203F99CD51.php
一時は投資総額が数百億円、数千億円とも噂された為替市場のミセス・ワタナベ。FXブームに乗った日本の主婦たちの異名だ。相場の大逆流に飲み込まれたとき、彼女たちは……。
「2005年から07年度はずいぶん儲けてたんですけど……昨年1月までは、FX(外国為替証拠金取引)はほんとに凄かったんですよ」
愛知県名古屋市内の喫茶店で、筆者の前に腰掛けた市井昌代さん(仮名、53歳)。持ってきたカバンから、テーブルの上に薄茶色の封筒の束がバサリと広がった。膨れ上がった封筒の表側には、どれも地元の税務署の名が入っている。
「パソコンの画面上でしか儲かっていないのに、ここ1~2カ月で120万円以上税金を取られた。現金化してなくても、画面上の儲けから税金を計算するんだって。あちこちに相談したけど、ダメ。もうほんとに腹が立って。新聞でFX投資家を保護する法案のことが出ていたけど、早く通ればいいなあ」
どうやら、確定申告を怠っていたご様子。一時は1000万円以上の利益を上げていたというから、ペナルティを考えただけで空恐ろしい。取材中、何度も、「そちらは税務署と関係ないでしょうね?」と念を押すのも無理はなかった。
割り増しされた税金3年分に加え、08年は何と1000万円超が吹き飛んだ。ここ数年、地方に単身赴任中の夫(55歳)はまだこのことを知らない。堅い大企業に勤め、投資そのものを嫌悪している夫に「とても言えませんよ」と身を硬くするが、「悔しい。今さらやめられますか?」と躍起になっている。
「土・日以外はパソコンから離れられないから、週末には温泉でリフレッシュする」という市井さん。事業で成功した実父から毎年前借りする遺産100万円を元手に、4年前からFX投資を始めた。
「メールについていた広告で、“商品券がもらえる”という謳い文句に釣られたんです。主婦ですよねえ」
家族の名義で100万円ずつで口座を開設した。ドル・円を取引する。朝は4時半に起きてパソコンを開け、為替変動のチャートを見ながら作戦を練る。新聞は地元紙の一紙だけじっくりと読む。毎日のパートの就業時間中も、デスクの下の携帯電話でチラチラと相場をチェック。
どれだけ残業しようと、自宅に戻ってからは、入浴の時間以外は夜12時~2時頃までパソコンと首っ引きだ。子供2人はすでに独立。家事などそっちのけだから、当然家の中は「ぐちゃぐちゃ」。
「最初はやり方が全然わかんなくて、1日5000円稼いだくらいで喜んでたんですが、画面を見ながら、24時間フリーダイヤルで証券会社の人に徹底的に聞いたんです。自分で本を読んで勉強するよりもずっとよくわかります。そういう他人の迷惑を顧みない人じゃないと、FXなんてできっこないですよ」
その甲斐あってか、1年以上経つと、チャートをじいーっと見ていればその後の動きがわかるように。証券マンのアドバイスよりも当たるようになった。
急激な円安に乗じて大儲け。取引業者や口座も、多いときは10社、10口座以上あったから、一時はスワップポイント(2国の通貨の金利差でつく儲け分)だけで1日1万2000円稼げた。「ホクホクだったんですよ」。当時の手帳にはその日ごとの稼ぎが6万数千円、7万数千円などと蛍光ペンで書き込んである。1日30万円以上を稼ぐ日もあった。
「夜中もふっと目が覚めて、ケータイで儲けを確認して、ふふっと笑ってまた寝るとか(笑)」
しかし、08年2月末から状況が一変する。いわずとしれたサブプライム問題と、それに伴うアメリカの景気後退への懸念が急浮上した。数日間に5~6円という凄まじい円高の進行中に、円安を見込んで大きく賭けていた市井さんは、この頃に限ってチャートのチェックを怠っていたのだ。
「3月17日の月曜日でした。前週末に、しばらく口座を見ていなかった業者から警告メールがきたんです。ヤバイ! と思って追い金をネットバンクから各口座に振ったんですけど、朝9時にそれが間に合わず……一瞬で、涙も出なかったです。画面にゼロ。何これ、ポジション何にもない! みたいな」
月・火の2日間に約1000万円が消滅。主な取引業者の一つが、監査中で業務をしていなかった不運も重なった。
「調子のいいときに1円も現金に換えてなかったから、儲けは画面の中だけ。大きな買い物なんかしてないのに、全部消えちゃった……バカみたい」それ以降、手帳への書き込みはない。
6000万円の投資信託も4000万円に目減り。FXと合わせて約3000万円が消えた。「証券マンの口車に乗って損切りしたんです。ベンツか中古マンションが買える額ですよね……」。
取引業者のいくつかが倒産し、口座の大半を解約した。今は、銀行から預貯金を下ろして税金を納める毎日だ。「05年度以降の過少申告加算税が15%。ほかにも延滞税、無申告加算税。それ以外にも市・県民税の請求が十何万もきているし……」何のためにパートをやってるのか、悲しくなっちゃう……と力なく笑った。
FXについては、『1日○万円儲かった』とか、美味しい話ばかりがとかく注目されがちですが、ロイターがこんな興味深い記事を載せていましたので、当ブログでも紹介したいと思います。
人間 『自分だけは大丈夫』と、とかく自信過剰になりがちですが、こんな実体験の大失敗談を聞くと、やはり個人がFXをやる必要性やレバレッジ倍率の規制についていろいろと考えさせられるものがありますし、本業のお仕事に影響したり、朝早くから深夜までパソコンに向かうことを強いられたり、税金の督促に怯えてまで行なうことなのかな…という気がしますね。
(私はレバレッジ否定派のFPなので、多少割り引いて聞いて頂いて結構です)