防衛省は、こともあろうに中沢剛連隊長を見せしめに左遷した。陸上自衛隊第6師団第44普通科連隊の連隊長の職を解いて、陸自研究本部の主任研究開発官に追いやったのである。先月、宮城県で開かれた米陸軍との共同訓練開始式での訓示について、北沢俊美防衛大臣が腹を立てたからだ。「信頼という言葉だけでは、同盟関係は維持されない」と語っただけで、不当な仕打ちを受けたのである。鳩山由紀夫首相がオバマ大統領に「トラストミー」と語ったのを揶揄したと思われたのだろう。鳩山首相の場合は、本心ではなく口先だったことがばれて、それで顰蹙を買ったのである。小室直樹が「軍隊は国家に属し、警察は政府に属する。これは両者の原則的差異の根本的差異である。軍隊は政府とは一体ではなく、組織として一定の距離を置く。半ば自律的なプロ集団である。国家の要請が政府の命令に矛盾する場合には、政府の命令に服しないこともあり得る」(『国家権力の解剖』)と書いているように、警察と軍隊とは一緒にすべきではない。北沢防衛大臣が、上司が部下を処分するような簡単なことで、自衛隊を掌握できると思ったらば、とんでもない間違いだ。小室が指摘しているように、軍隊は国のことを考えて行動するわけで、場合によっては、時の政府に刃向かうこともありうる。ヒトラーの暗殺計画は八回も企てられたといわれるが、そのうちの六回は軍部が関与したといわれる。それだけに、文民統制が大事なのはいうまでもないが、今回の場合は、中沢連隊長が軍人としての決意表明をしたに過ぎない。いちいち目くじらを立てるのは、自分たちが疚しいからであり、単なる嫌がらせであり、恥の上塗りだ。文民統制を徹底させようと思うならば、まず鳩山首相が言葉に責任を持つことだ。
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