鳩山由紀夫首相や民主党が今一番問題なのは、交渉ごとがまるっきりだめだということだ。鳩山首相は、米国がきっと理解してくれるだろうという思い込みだけで、相手の立場になって考えようとしていない。そして、日本側がこれだけ悪戦苦闘しているのだから、手を差し伸べてくれるはずだ、との希望的観測だけで発言している。山本七平が『比較文化論の試み』のなかで、日本人の精神的弱点について取り上げ、「ひとりよがりで同情心がない」ことを問題にしていた。その例として挙げたのが、日本人の宗教に対する考え方であった。「自分は何も信仰はしていないが、何かを信仰している人たちを否定するつもりはない」という言葉を口にするのは、最初から相手の立場になることを放棄している。これでは、相手の主張と衝突することもないし、相手がなぜそのように考えるかについて、思いめぐらすはずもない。鳩山首相は、それこそ山本に言わせれば、自分の感情を相手に移入しているだけなのである。本当の同情ということであれば、相手のために何ができるかというのが問われるべきなのに、それが抜け落ちている。「ひとりよがりで同情心がない」とオバマ大統領を怒らせてしまうのは、そのせいなのである。鳩山首相は「開かれた日本」を目指すそうだが、それと裏腹なことをやっているから、国益をそこなってしまうのである。今回の普天間基地の移設をめぐる外交交渉で、なぜつまずいたかを、よくよく考えてみるべきだろう。
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