時間のしずく time drops 

たいせつなもの。すきなこと。

街の音

2010-11-18 | essay

   

むかし、英語の学校に通っていたとき、通勤途中に密閉型の大きな黒いヘッドフォンを

いつも耳に当てて歩いている先生がいた。ちょっとトボケタ、気さくなアメリカン。

ある日、駅までの帰り道に出逢った先生に “いつもなにを聴いているの” と尋ねたら、

すぽっとわたしの耳にヘッドフォンをかぶせた。

「?」

突然、街の喧騒が消えて、プールの底にたゆたうような気持ち。。。

 

 そう、彼は聴いているのではなく

 何も聴いていないのだった。

 

その時のフシギな感覚はいまでもわたしの耳に残る。

街の音を遮断すると何か別のものが見えてくる。

“このほうが考えごとに集中できるんだよ” と彼は微笑んだ。

街の中の雑多なニホンゴが煩わしかったのかもしれないね。

 

彼は今でもああして街を歩いているのだろうか。

  

 

 


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