昔々のドレミファブックのB面にはそれぞれお話がひとつ入っていて、小さい頃、ひとりレコードをかけて
絵を眺めながらお話に聴き入る のんびりとした時間がとてもすきだった。
でも。。。ドレミファブックのなかで、子どもの頃にひとりきりでは聴けなかったお話がある。
第11巻の「うちゅうせん ペペペペラン」谷川俊太郎作
どこからともなく現れた しろいひげのおじいさんが、子どもたちに語る「うちゅうせんペペペペラン」のお話。
妙にリアルなストーリー、静かな静かな語り。
お話の中に吹く風までもが、自分にもつめたく吹いてくるように感じるほどのすごい臨場感。
怖くてひとりではとてもレコードに針を落とすことができなかったんだ・・・。
ペペペペランは、国という制度がなくなって世界がひとつになっている未来の地球の宇宙船。
ペペペペランに乗船しているのは子どもだけ。
目的地アンドロメダへは何十年かかるか分からないほど長い旅。
大人では歳をとって死んでしまうため、子どもたちだけなのだという。
男の子は14人、女の子は13人。宇宙船のなかで子どもたちは大人になり、次々に結婚してゆく。
ひとりぽっち、余ってしまう、よわむしロン。。。
そして事故が起き、外で修繕をしていたロンを置き去りにして飛び立つ、ペペペペラン。(ひどい、ひどすぎる~)
コンピューターが壊れていてどうすることもできなかったんだよ・・・と言うおじいさん。
ひとりきりで宇宙に取り残された よわむしロン・・・。
ロンの絶望感、寂寥感が小さかったわたしのココロをぎゅっとしめつける。。。
いったいロンはどうなってしまったのか。
ペペペペランはその後アンドロメダに着くことができたのか。
謎を残したまま、いつのまにか消えてしまう しろひげのおじいさん・・・。
おじいさんは、いったい何処からやってきたのか。
おじいさんは、ペペペペランに乗っていた男の子のひとりだったのか?
おじいさんこそが、ロンだったのか・・・?
すべてが霧にのみ込まれ、煙にまかれたまま、レコードは終わる。
今改めて聴いても、やっぱりすごいよ。
謎めいた数枚の抽象画も、子どもゴコロにしっかり焼き付いている。
あの頃、いつかしろひげのおじいさんが、遊んでいるわたしのところにも現れるんじゃないかと、怖かったのです。
怖いけれど・・・魅せられてしまう、まぼろしの名作です。
(この書体もすきだなあ。)