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軽い気晴らしに、借りてきた小話はいかが?
「ビジネススクールのケーススタディー」
「RCグローバル社」の場合
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「ターンアラウンドCEO」たち、つまり「死に体」になった巨大組織に、新しい生命の息吹を吹き込んで蘇生させる、カリスマ経営者とでも言いましょうか。IBMのルー・ゲルストナー、フィアットのセルジオ・マルキオンネ、そしてアップルのスティーブ・ジョブズなどがその典型です。彼らの成功の秘訣を分析し、それに学ぶゼミは、一流ビジネススクールに欠かせない必須教科です。
ここへ来て、ハーバードのビジネススクールは、「RCグローバル社」をたった1年で見違えるように立て直した新しい最高経営責任者ホルヘ・ベルゴリオ(CEO)をゼミの新たなケース・スタディーのテーマに加えなければならなくなりました。
エッ?IBMやフィアットやアップルなら知っているが、「RCグローバル社」なんて聞いたことがない、ですって?あなたは最も暖簾が古く、世界最大を誇るこの企業のことをご存知なくて、それでよくもまあビジネスマンが勤まりますね!深刻な経営危機に見舞われていたこの業界最古の巨大企業を知らないようでは、完全にモグリですよ。
などと言って、人をからかうのはこの辺にしておきましょうか。
「RCグローバル社」とは、世界宗教「ローマン・カトリック教会」のことで、その総本山のローマのCEO(最高経営責任者)ホルヘ・ベルゴリオとは、1年前に生前引退したベネディクト16世の後を受けて選ばれた、教皇フランシスコの本名のことです。
アメリカ資本のプロテスタントのライバル企業ペンテコステ社は、新興国でのRCグ社のマーケットシェアーをものすごい勢いで食い荒らしています。かつてラテンアメリカで、アルゼンチン支社を経営していたベルゴリオ社長のお膝元でも、それは例外ではありませんでした。スキャンダルは顧客(信者)離れを招き、営業部門(神父たち)の士気は低下し、今の厳しい経済環境の中では珍しい終身雇用制を保証しているにも関わらず、新入社員(司祭希望者)のリクルートは一向にはかどりません。
会社の財政状況も滅茶苦茶です。漏洩機密文書からは、バチカン銀行が腐敗と無能さのるつぼであることが発覚しました。その経営陣は分裂し弱体化していました。教皇フランシスコの前任者のベネディクト16世は、システィーナ重役会議室の壁を飾る年老いた髭面の創業者兼会長(天地万物の創造主なる神のことだろうか?)の介入で黒い噂のさ中に解任されました。
預言者的経営者の誕生
たった1年で事業は大幅に信頼を回復しました。この新しい最高経営責任者は大変な人気です。非常に辛口の観客であるアメリカのカトリック信者の85%が彼を支持しました。RCグローバル社の小売部門の業績は回復基調です。営業マン(神父)たちは今や「フランシスコ効果」の話でもちきりです。70代半ばのアルゼンチン出のお爺さんが、いったいどうやってこの世界で最も野暮ったい豊満企業を生き返らせることに成功したのでしょうか。
第一は、古典的な資質の初心に帰ることでした。フランシスコは彼の組織を再び一つの使命に集中させました。それは貧しい人たちを助けるという視点です。彼の最初の決定は、教皇の宮殿を棄てて、他の50人ほどの神父たちや日曜日の訪問者たちと共同で利用する宿舎を自分の住居として選ぶことでした。彼は自分の教皇名として、貧しさと動物たちの友であることで有名な聖人の名前を選びまし。彼は少年刑務所に収容されている12人の若者の足を洗いそれにキスしました。彼はルネッサンス時代から教皇が身に着ける習慣になっていた「毛皮で縁取りした贅沢なビロードの肩マント」を廃止し、ベネディクト16世ご愛用の教皇用の「赤い靴」を普通の黒い短靴に替えました。そして、「フル装備の高級メルセデス・ベンツ」を無視して、使い古したフォードに乗ることにしました。
この新しい焦点は、会社が教義上の議論や、華美な儀式を演出するなどの、「付帯的な業務」に支出する資金を節約することを可能にしました。「貧しさ優先の戦略」は潜在的成長力が最も大きく、また競争が最も苛烈な新しいマーケットに正確に照準を合わせています。
この新しい戦略的焦点に沿って、教皇は二つの効果的な経営手法を採用しました。一つはブランドの再編です。彼は明らかに堕胎やゲイの結婚については伝統的な教えを支持しますが、前任者よりは口うるさくないやり方を取ります(たとえば、「人を裁く私は一体何者か?」と同性愛について自問します)。もう一つは構造改革です。彼は教会の機構・組織を見直すために、教会の管理部門を点検し、バチカン銀行を分解修理するために、いわゆる「ザC8」と呼ばれる枢機卿8人衆の改革グループを任命し、世界4大会計事務所の一角を占めるKPMG(「神のコンサルタント」と呼ばれる)を雇い入れました。
はたしてうまく機能するでしょうか?権威ある批評家で名うての企業乗っ取り屋ルー・シッファーは、それらは全部お線香の煙と虚像に過ぎない、と言いました。他の人たちは、女性のより大きな役割分担を含むさらに大幅な変化が必要だと主張します。会長(神様)の態度は解りません。或るアナリストは、酷い災厄に見舞われていないということは、受け入れられている印ではないかと言います。他の人たちは、奇跡を行う彼の動きは謎めいている、と言いました。
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この文章はもちろん私のオリジナルではありません。知人がメールで送ってくれた英文の記事を、興味本位でざっと訳したものです。誤訳を指摘されても弁解しません。必ずしも原文に忠実でないことも認めますが、この英文の原稿を送ってくれた友人のメールによれば、そのソースは “The Economist on iPad” となっていました。写真もその記事から取ったものです。
英語版の「エコノミスト」の手にかかると、教皇フランシスコとカトリック教会はこういうことになるのでしょう。なるほど・・・、と感心させられました。私は、その書き方が気に入っているわけではありません。ここまで漫画化するのは如何なものか、とむしろ批判的です。
しかし、教会の外で成功しているキリスト教信仰を生きていない大人たちにかかれば、こんな見方をする事も出来るのだ、ということ知る上では参考になると思って、敢えてブログで取り上げました。
軽い気晴らしぐらいのつもりで読み飛ばしてください。これを契機に生真面目な議論をされると、私はドギマギ戸惑うことになりますので、それだけはどうかご勘弁のほどを。
(おしまい)