シャーロック・ホームズ・シリーズの第一作。
ホームズとワトスンの出会いから、その後起こる殺人事件と犯行の歴史を描く。
名探偵ホームズのシリーズは推理小説の古典的な作品だが、子供の頃はホームズより
怪盗ルパンの方が好きだった。
ホームズの推理力よりも、ルパンの行動力の方に魅力を感じていたのを思い出す。
コナン・ドイルの伝記を読んだのを機に、改めてホームズを読んでみようと思った。
おそらく誰もが知っている探偵ホームズは、スマートで完璧な紳士、冷静沈着で
頭脳明晰というイメージだったが、改めて読んでみると全くその通りで、
失敗もするけれどただでは起きないタイプのようだ。ホームズの凄さは観察眼の鋭さだ。
それと記憶力が抜群で、頭の中で現場の詳細を再現してしまう。犯罪に纏わる背景知識も豊富、
言葉も巧みだ。心の中では刑事達を見下しているが、表面上は自然に振舞う世渡りの上手さも
あるようだ。この事件も早々に犯人の姿を見抜いて、彼の思い通りにストーリーが展開する。
犯人の動機の部分も上手く描かれていて、なかなか面白かった。
ホームズはあまりに完璧過ぎて、友人としてはちょっと敬遠したくなるタイプだ。
個人的に好きなのは、外見はイマイチだが頭脳明晰な刑事コロンボ。ホームズの時代と違って、
今はこちらのタイプが主流だろう。外見は良いけれど頭脳が冴えない刑事・探偵は山ほどいて、
だいたい主人公に絡む脇役となる。ちなみに主人公が、どちらもイマイチな場合は、
推理小説ではなく、コメディになってしまうかも。
この小説のもう一人の主人公ワトソンは脇役として適任で、自身の推理力はもう一つだが、
ホームズから話を聞き出すインタビュアーとしての能力が凄い。
(この話はワトソンの語りによるものだから当然だが)彼は探偵の補佐ではなく、
ホームズ付の新聞記者のほうが適任かもしれない。