橘玲による日本社会・経済コラム。昨今の事件や出来事から、独自の視点で日本社会を考察する。バカという言葉が入ったタイトルの本はあまり読まないのが、この本の内容は至って真面目で著者の主張も面白く、いろいろ考えさせられることが多かった。現代社会には、様々な情報が溢れており、受け手の視聴者はそれに瞬時に反応して(感情的に)世論が形成される。しかし、物事の背景にあるものは、他の情報と照し合せたり、視点を変えるなどの方法で見ないと真実は判らないことが多い。メディアの報道には、スロー思考で背景や原因をよく考えて行動することが必要だ。
この本では、近年に起きた数多くの日本の問題が取り上げられている。例えばSTAP細胞の偽論文騒動のようなことも、実は会社では日常的によく起きる問題だ。早く成果を出すために行ったことが、検証精度の不足により、新たな問題を引き起こす。成果主義の弊害は、理化学研究所に限ったことではないだろう。とり上げられている失敗事例を読むと、昔から言う「急いては事を仕損じる」という諺は、今も生きているんだなと改めて感じた。
スピードが求められる時代だからこそ、スロー思考の重要性が増しているのかもしれない。そんな事を考えた。