「クリスマスソングをかけようか?」
「そろそろそういう時間帯ね」
「どこか異国の歌がいいね」
「ワムとかジョンレノンとか?」
「母国語だと言葉を聴いてしまう」
「聴くためにかけるのでしょう?」
「聴くためだけど聴くだけのためじゃない」
「他に何があるというの?」
「クリスマスだけが12月ではないということさ」
「大掃除やお正月の準備もあるということね」
「クリスマスに比べればそれは些細な問題さ」
「クリスマスは1日だけのことでしょう?」
「1日で終わるのは、お正月の方だよ」
「そんな馬鹿な! お正月っていうくらいよ」
「いや一瞬かもしれない。それに比べてクリスマスは……」
「歌詞には興味がないの?」
「母国語だと言葉を追ってしまうからね」
「追うことの何がそんなに問題なの?」
「追っている間に他のことが疎かになってしまう」
「例えば何なの?」
「君は何でも例えなければ理解しないのか?」
「あなたの方にも問題はあると思うけど」
「僕らは12月に追われる身なんだよ」
「どこに向かって追われているの?」
「到達点は境界線だよ」
「もうそろそろね」
「追われる者だけの時間があるのさ」
「さあ、クリスマスソングをかけましょう」
「ああ、クリスマスソングをかけるとしよう」
トナカイがいないせいで物悲しくなるのだろう。12月のファッションショーは、信号の変わり目を待つ12月のライダーも、12月の客足を待つ12月のレジ係もみんな憂いのサンタ一色になる。12月の名残惜しさと12月のLoveを持ち寄った恋人たちが行き交う道を、まちびとは耳に12月のクリスマスソングを当てながら歩くだろう。まちびとは12月のクリスマスソングを愛し、12月の道を愛していたので、そこにしあわせのとりあわせが生まれていた。12月の道の上には種々のhappyなとりあわせが落ちていて、まちびとはそれらを見つける度に、得意になって12月のノートを開いてはリストを1つ更新するだろう。みそとスープ、きつねとたぬき、猫とダンス、苺とショート、キノコとパスタ、コーヒーとミルク、たまごとご飯……。愛するものと愛するものが12月の手を取り合って1つのしあわせのとりあわせを作る。あるいは、1つでは足りないものと足りないものが重なり合って、新しいしあわせのとりあわせとなり得るのだろう。まちびとは冬の散歩道と12月のクリスマスソングをとりあわせて12月のリストに加えると、12月の同期を試みる。
12月の予期せぬエラーが発生しました。
限りられた12月のコンビニエンスストアの中に1度に入ることができるのは1人までで、永遠の愛を誓った12月の恋人たちでさえ、その中に入るためには離れ離れになるしかないのだろう。まちびとは背中に長い12月の列を意識しながら、12月の決断を迫られるだろう。12月の遠足が求めるおやつ、ヨンミーとポリンキー。まちびとは今まで培ってきた感性と12月の決断力で、しあわせのとりあわせを選ぶだろう。
「あなたは遠足に来たのではありません。働くために来たのです。今日からあなたは働き蟻です」
まちびとは12月の誤解の中で、おやつを捨てて12月の蟻にならなければならなかった。
「もうすぐ12月の紅茶が入ります」
まちびとは12月の紅茶に備えて、厚紙の中に納まった12月のスプーンを1本ずつ抜いていく。慣れない作業の中、ひ弱な指先と12月の間に生まれたちょとした心の隙が、まちびとの手を切ってしまうだろう。12月の流血と学び。
「紙で手が切れるということを忘れないように。色々なことを忘れてしまうと思うけど。例えば……」
まちびとは店長の12月の例え話の中で色々なことを思い出し、これから先忘れてしまう数々のことを前もって学ぶだろう。限られた12月の中で、何度か大事なことを忘れて、12月の手を切ってしまうだろう。
12月の水を足せないグラスがあったとすれば、それはグラスごと変えればいい。1度も手をつけていなかった12月の水が、新しいグラスに取り替えられる。それは新しい12月の氷が入った水だ。
「あなたは水について多くを学びました」
「ちょうどいま12月の大臣の席が空いています」
知らず知らずの内に、まちびとは大臣の修業を積んでいたことにようやく気づくのだろう。
「気がついたら、できていました」
そして、まちびとは12月の大臣になった。限られた12月の中でいったい何ができるのか、それはこれから先の課題となるだろう。大いなる期待と、12月の過大な好奇心を持って、もうすぐ12月のテレビ局が大挙して取材に押しかけるだろう。
まちびとは充実した学校生活を送りながら、大臣も頑張っています。
「そろそろそういう時間帯ね」
「どこか異国の歌がいいね」
「ワムとかジョンレノンとか?」
「母国語だと言葉を聴いてしまう」
「聴くためにかけるのでしょう?」
「聴くためだけど聴くだけのためじゃない」
「他に何があるというの?」
「クリスマスだけが12月ではないということさ」
「大掃除やお正月の準備もあるということね」
「クリスマスに比べればそれは些細な問題さ」
「クリスマスは1日だけのことでしょう?」
「1日で終わるのは、お正月の方だよ」
「そんな馬鹿な! お正月っていうくらいよ」
「いや一瞬かもしれない。それに比べてクリスマスは……」
「歌詞には興味がないの?」
「母国語だと言葉を追ってしまうからね」
「追うことの何がそんなに問題なの?」
「追っている間に他のことが疎かになってしまう」
「例えば何なの?」
「君は何でも例えなければ理解しないのか?」
「あなたの方にも問題はあると思うけど」
「僕らは12月に追われる身なんだよ」
「どこに向かって追われているの?」
「到達点は境界線だよ」
「もうそろそろね」
「追われる者だけの時間があるのさ」
「さあ、クリスマスソングをかけましょう」
「ああ、クリスマスソングをかけるとしよう」
トナカイがいないせいで物悲しくなるのだろう。12月のファッションショーは、信号の変わり目を待つ12月のライダーも、12月の客足を待つ12月のレジ係もみんな憂いのサンタ一色になる。12月の名残惜しさと12月のLoveを持ち寄った恋人たちが行き交う道を、まちびとは耳に12月のクリスマスソングを当てながら歩くだろう。まちびとは12月のクリスマスソングを愛し、12月の道を愛していたので、そこにしあわせのとりあわせが生まれていた。12月の道の上には種々のhappyなとりあわせが落ちていて、まちびとはそれらを見つける度に、得意になって12月のノートを開いてはリストを1つ更新するだろう。みそとスープ、きつねとたぬき、猫とダンス、苺とショート、キノコとパスタ、コーヒーとミルク、たまごとご飯……。愛するものと愛するものが12月の手を取り合って1つのしあわせのとりあわせを作る。あるいは、1つでは足りないものと足りないものが重なり合って、新しいしあわせのとりあわせとなり得るのだろう。まちびとは冬の散歩道と12月のクリスマスソングをとりあわせて12月のリストに加えると、12月の同期を試みる。
12月の予期せぬエラーが発生しました。
限りられた12月のコンビニエンスストアの中に1度に入ることができるのは1人までで、永遠の愛を誓った12月の恋人たちでさえ、その中に入るためには離れ離れになるしかないのだろう。まちびとは背中に長い12月の列を意識しながら、12月の決断を迫られるだろう。12月の遠足が求めるおやつ、ヨンミーとポリンキー。まちびとは今まで培ってきた感性と12月の決断力で、しあわせのとりあわせを選ぶだろう。
「あなたは遠足に来たのではありません。働くために来たのです。今日からあなたは働き蟻です」
まちびとは12月の誤解の中で、おやつを捨てて12月の蟻にならなければならなかった。
「もうすぐ12月の紅茶が入ります」
まちびとは12月の紅茶に備えて、厚紙の中に納まった12月のスプーンを1本ずつ抜いていく。慣れない作業の中、ひ弱な指先と12月の間に生まれたちょとした心の隙が、まちびとの手を切ってしまうだろう。12月の流血と学び。
「紙で手が切れるということを忘れないように。色々なことを忘れてしまうと思うけど。例えば……」
まちびとは店長の12月の例え話の中で色々なことを思い出し、これから先忘れてしまう数々のことを前もって学ぶだろう。限られた12月の中で、何度か大事なことを忘れて、12月の手を切ってしまうだろう。
12月の水を足せないグラスがあったとすれば、それはグラスごと変えればいい。1度も手をつけていなかった12月の水が、新しいグラスに取り替えられる。それは新しい12月の氷が入った水だ。
「あなたは水について多くを学びました」
「ちょうどいま12月の大臣の席が空いています」
知らず知らずの内に、まちびとは大臣の修業を積んでいたことにようやく気づくのだろう。
「気がついたら、できていました」
そして、まちびとは12月の大臣になった。限られた12月の中でいったい何ができるのか、それはこれから先の課題となるだろう。大いなる期待と、12月の過大な好奇心を持って、もうすぐ12月のテレビ局が大挙して取材に押しかけるだろう。
まちびとは充実した学校生活を送りながら、大臣も頑張っています。