眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

白舞

2012-12-04 16:32:12 | 2秒小説
プラスティックバッグは胴上げされて雲になりました。
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アマランサス

2012-12-04 04:09:26 | 短歌/折句/あいうえお作文
雨脚は
窓を弾いて
ランナウェイ
幸はいつでも
素通りばかり
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刻みニンジン(やまとなでしこ)

2012-12-04 00:13:13 | アクロスティック・メルヘン
野菜の中には色々あるけれど、
まるで駄目なのは、
トマトではなくてニンジンでした。
なぜかというとニンジンは悪魔の
手先だったからで正義から見れば
宿敵とも言える相手だったから、
金輪際お断りというわけでした。

厄介だったのは意外と近くに敵がいて、
ママは少しずつ少しずつ、
トマトではないニンジンを、
何気ないところに隠し入れては、
哲夫を騙そうとしていることで、
知らん顔をしながらもその機会を
虎視眈々と窺っているのでした。

野球の試合があるとわかった時は、
真っ白いボールをこっそりと
トマトではないニンジンにすり替えて、
ナックルボールを投げさせてみたり、
適時打を打たせてみたり、
渋い送りバントをさせたり、
今週のファインプレーに選ばせたりしました。

野球の試合が終わった後で、
「まんまと騙されてしまったよ!」
「トマトだったらよかったのにね!」
流れ玉に当たってしまった時に、
哲夫は少しの違和感を感じたけれど、
信頼がそれを打ち消して、
腰を押さえながらベンチに帰ったのでした。

ヤフーで検索をするとわかった時は、
真新しい言葉をこっそりと
トマトではないニンジンにすり替えて、
名のある言葉に見せかけてみたり、
適切な説明を加えて見せたり、
史実をでっち上げて見せたり、
言葉添えをして見せたりしたのでした。

ヤフーでの学習が終わった後で、
「まんまと騙されてしまったよ!」
「トマトだったらよかったのにね!」
ナウマンゾウが韻を踏んだ時に、
哲夫は少しの違和感を感じたけれど、
信頼がそれを抑え込んでしまうと、
言葉を呑んで検索窓に帰ったのでした。

夜景を眺めに行くとわかった時は
町の明かりという明かりを、
トマトではないニンジンにすり替えて、
流れ星に見せかけてみたり、
てんびん座の一座に見せてみたり、
しし座流星群の一群に見せかけたり、
神々しさを演出して見せたりしたのでした。

夜景がすっかり砕け散った後で、
「まんまと騙されてしまったよ!」
「トマトだったらよかったのにね!」
流れ星を見上げている時に、
哲夫は何の違和感もなく手をつないだままずっと、
しあわせについて考えていました。
「この時間がずっと続けばいいのに」

夜景が幻と消え去った後で、
ママにすっかり騙されていたことに気づきました。
「取り込まれていたのだ」
流れ星を見上げている時に、
哲夫は強く手をつないだままずっと、
しあわせの行方について考えていました。
「この時間は誰がくれたのだろう」

野菜の中には色々あるけれど、
ママの手口はそれ以上に広々としていて、
「トマトだったらよかったのに……」
何度も口にした言葉を、
哲夫はもう口にしなくなりました。
知らず知らずに与えられていた物の小ささ、
この上ない大きさを、思ってからでした。

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