眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ラーメン・シャッフル

2012-12-05 01:41:44 | 夢追い
 救急車は目的地を選べずに、どこまでもどこまでも運ばれていく。焼き回しの島が雲の隙間から見えてくる、あれはモローの島に違いなかった。広大な大地はモロー自身の体であり、少年はモローの血の滴る筆で大地いっぱいに文字を書いた。それは不用意に島に近づく人々に対する警告だった。

モローは人の心を持たない怪物だと書物に書いてある通り。
ここはモローのメインストリート。モローは決して案内はしない。
大冒険を望んでもモローを海に誘ってはならない。
ようこそ、殺戮と憩いのモロー広場へ!

 実際のモローは人間ではなかったけれど、乱暴な性格ではなく、果物の皮を編んでファンシーグッズを作っていた。背中を駆けても怒らなかったし、一緒に幼稚な遊びをして負けた時もすねたりしなかった。

 先生は適当に曲を持ってきた。長いのや短いのや、激しいのや大人しいのや、様々な曲を持ってきては僕の反応を確かめた。ここが嫌だ、ここが気に入らないと言う言葉を少しずつ聞き入れては、少しずつ傾向に手を入れていく。それが先生の処方箋だった。
「現地についたら、それぞれのラーメンが待っている。それを楽しみにするように」

 具とスープはシャッフルされて、それぞれに当たり外れがあるように作られていた。掲示板に書いた僕の文字が、水気に呑まれて消えていく。
「汗か?」
 議長の鬼が咎めるように言った。そんなものではない。みそじゃないかと僕は言った。
「もう一度書かせて!」
 自分のリクエストが消えてしまってはもったいないと思った。今までは髪型だけかと思っていたが、なかなかやるじゃないかと言う反応が鬼たちの間で起きた。
「油性のペンをくれ!」
 今、僕は自分の意見が言えている。何よりそれがうれしい。
ピリ辛
 1つのリクエストを今度は消えない文字で書いた。
 そして、もう1つのリクエストは……。大事なところで、駄目な自分が戻ってきた。

 誰かがボールを持てば、誰かは遊び、誰かがボールを持てば、誰かが休む、そのようなチームだった。常に数的不利の中で戦っていたので、食べるものには特に気を遣っていた。
「食べれる物を分けておいた」
 キャプテンが言った。取り出してあるのは玉子と大根だけだった。
「新しいのは?」
 他にもまだ新しい具が、たくさん残っているように見えた。どうも駄目なようだとキャプテンは言った。
「食べればわかるよ」
 キャプテンが言うには、みんな黒毛牛の油で駄目になったと言うのだ。何だかもったいない話だった。好みにもよるのだろうが、僕はキャプテンの意見に従って、それらには手をつけなかった。
 ボールが転がってくる……。
 足の裏でしっかりと止めたはずが、滑る……。
 このボールは? 慣れが必要だった。
 老人のキャッチボールに、加わった。
「絶対に勝てない」
 おじいさんは言った。
「あのチームにはあいつがいて、他のチームにはあいつがいないから」
 試合を見てみるとその意味が理解できた。
 あいつとは物語の中の登場人物だった。
 ありえないほど高く飛び上がって、ありえないほどの速さで回転して、足先はもう見えなくなっている。そこから繰り出されるシュートは、台風みたいなもので、すべてをなぎ倒してしまう。
 触れてはいけない……。
 そんな選手がいるチームに、勝てるものか。
「どんな話でしたか?」

 すっかり配置が変わっていた。新旧様々なジャンルが入り交じり、愉快な混乱を作り出していた。平気でお腹を向けているものが気になったので手に取って正した。気になるタイトルを見つけたがそれは茶袋に入っていた。開封することはためらわれたが、密封されているわけでもなく、袋を破らずに取り出すことができた。空になった袋をその辺の隙間に入れて、本を開いた。最初のページが早くも破れていた。男が近づいてくるので、念のために空の袋を引き上げた。リストには未知の作家の名が紹介されている。少し照れながら、胸が高鳴った。何かを探しているのか、男が近づいてくるので、手に本を開いたままでその場を離れた。
 この本を持って旅に出なければ……。そういう本だった。
 化粧品コーナーに行くとまるで違う種類の光や匂いがした。カフェの前を通ると快く招かれるような気配がしたが、それは罠かも知れず気を引き締めた。花の匂いは悪くなかったが、そこは花を見るための場所に違いなかった。家具売り場にはベッドや箪笥やテーブルや椅子があった。僕はしばし椅子に腰掛けて熱心に本を読んだ。
~最初はタイプライターで打った2、3の色のない人形でしかない。それに後からマヨネーズをかけたり、ケチャップをかけたりして味を整える。あたかも朝食を作るようにして……。~流石にそれはうそでしょう。~しかし何かを作るというのは、朝食を作るように台所がちゃんと片付いていてこそ始められるものです。
 僕は自分の部屋のことを思い出して罪悪感を覚えた。次の場所に、移らなければ……。

 どの道、間に合わないからと風呂にでも入ることにした。メリットシャンプーが空っぽで、他のシャンプーを探した。植物油と書かれている、これもシャンプーだろうか。手にとってみると泡立った。さっぱりしてみると小腹が空いて、ラーメンを作った。
 あえてひと気のある方へラーメンを運んで、テーブルの上に置いた。テレビは消え、母は休んでいた。今日は2食ともラーメンだった。これでは駄目だ。
「食べる?」
 母はあまり食べたそうではなかった。多いの?と訊く。
「味が濃い」
 どうにも味が濃いのをがまんしながら、食べ続けた。
 父がどこからともなく現れて、
「うまそうに食べるな」
 と言った。

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白舞

2012-12-04 16:32:12 | 2秒小説
プラスティックバッグは胴上げされて雲になりました。
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アマランサス

2012-12-04 04:09:26 | 短歌/折句/あいうえお作文
雨脚は
窓を弾いて
ランナウェイ
幸はいつでも
素通りばかり
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刻みニンジン(やまとなでしこ)

2012-12-04 00:13:13 | アクロスティック・メルヘン
野菜の中には色々あるけれど、
まるで駄目なのは、
トマトではなくてニンジンでした。
なぜかというとニンジンは悪魔の
手先だったからで正義から見れば
宿敵とも言える相手だったから、
金輪際お断りというわけでした。

厄介だったのは意外と近くに敵がいて、
ママは少しずつ少しずつ、
トマトではないニンジンを、
何気ないところに隠し入れては、
哲夫を騙そうとしていることで、
知らん顔をしながらもその機会を
虎視眈々と窺っているのでした。

野球の試合があるとわかった時は、
真っ白いボールをこっそりと
トマトではないニンジンにすり替えて、
ナックルボールを投げさせてみたり、
適時打を打たせてみたり、
渋い送りバントをさせたり、
今週のファインプレーに選ばせたりしました。

野球の試合が終わった後で、
「まんまと騙されてしまったよ!」
「トマトだったらよかったのにね!」
流れ玉に当たってしまった時に、
哲夫は少しの違和感を感じたけれど、
信頼がそれを打ち消して、
腰を押さえながらベンチに帰ったのでした。

ヤフーで検索をするとわかった時は、
真新しい言葉をこっそりと
トマトではないニンジンにすり替えて、
名のある言葉に見せかけてみたり、
適切な説明を加えて見せたり、
史実をでっち上げて見せたり、
言葉添えをして見せたりしたのでした。

ヤフーでの学習が終わった後で、
「まんまと騙されてしまったよ!」
「トマトだったらよかったのにね!」
ナウマンゾウが韻を踏んだ時に、
哲夫は少しの違和感を感じたけれど、
信頼がそれを抑え込んでしまうと、
言葉を呑んで検索窓に帰ったのでした。

夜景を眺めに行くとわかった時は
町の明かりという明かりを、
トマトではないニンジンにすり替えて、
流れ星に見せかけてみたり、
てんびん座の一座に見せてみたり、
しし座流星群の一群に見せかけたり、
神々しさを演出して見せたりしたのでした。

夜景がすっかり砕け散った後で、
「まんまと騙されてしまったよ!」
「トマトだったらよかったのにね!」
流れ星を見上げている時に、
哲夫は何の違和感もなく手をつないだままずっと、
しあわせについて考えていました。
「この時間がずっと続けばいいのに」

夜景が幻と消え去った後で、
ママにすっかり騙されていたことに気づきました。
「取り込まれていたのだ」
流れ星を見上げている時に、
哲夫は強く手をつないだままずっと、
しあわせの行方について考えていました。
「この時間は誰がくれたのだろう」

野菜の中には色々あるけれど、
ママの手口はそれ以上に広々としていて、
「トマトだったらよかったのに……」
何度も口にした言葉を、
哲夫はもう口にしなくなりました。
知らず知らずに与えられていた物の小ささ、
この上ない大きさを、思ってからでした。

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世界観のせいだ

2012-12-03 23:59:57 | 夜のフットサル
 ある日、自分のチームがなくなったと聞きました。あの時、自分が世界観を誤らず、正しくつないでいたら……。あの時、自分が世界観をちゃんとして、ちゃんとシュートを決めていたら……。ほんの少しの世界観のずれが、チームを壊したのかもしれないと思いました。最初に試合をした時は、1日中勝てなくて、初めて勝ったのはちょうど台風が来て試合会場が急に変更になった日の夕暮れでした。あの時、自分がシュートを決めることができたのか(多分決められなかった)よくは覚えていないのですが、とうとう勝ったということがうれしくなって、ほとんど泣いていたのでした。毎試合出場したというわけでも、中心選手というわけでもなく、ただ自分が名前をつけたというだけで、どこかで自分のチームであるように感じてもいましたし、それが遠くでなくなったと聞いて少しの寂しさを覚えたのでした。
 チームがなくなってから、チームのことは考えないようにしました。元々あってないようなチームだったのですから。チームがなくなっても、コサルという居場所があるのですから。元々チームプレーなどは苦手で、コサルくらいの距離で関わっているくらいで十分だったのですから。
 新しいシーズンが始まる頃、リーグには見慣れたチーム名に交じって、どう呼ぶべきかもわからない新しいチーム名が加わっていました。消滅したチームの代わりに、新しいチームが結成されたり、参加したようでした。その中に、自分のチーム名はありませんでした。きっとチーム名がよくなかったのだと思いました。

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反省ペンギン

2012-12-02 11:39:18 | 2秒小説
叱られて2秒はペンギンになりました。
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化け犬

2012-12-02 11:26:14 | 2秒小説
犬は待ちくたびれてクリスマスツリーになりました。
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磯辺揚げ

2012-12-01 21:23:46 | 短歌/折句/あいうえお作文
いにしえの
ソラシドたちは
変革の
嵐の中で
消しゴムをねる
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