無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

「夜明けのすべて」

2024-02-12 | 2024映画評


「夜明けのすべて」 三宅唱監督 ◯ ☆☆

 人気作家瀬尾まいこの同名小説を実写映画化しました。
 PMS(月経前症候群)の藤沢さん(上白石萌音)は就職した会社で周囲から見ればとんでもないことをしでかし2ヶ月で退社、やっとのことで栗田金属に再就職しました。そこには山添くん(松村北斗)というやる気のない後輩がいました。藤沢さんはPMSの症状で山添くんが炭酸飲料を飲むときのプシュッという音に腹を立ててしまいます。一方山添くんは持病のパニック障害の症状が出たときに藤沢さんに助けられます。ふたりはお互いの病気を知り、友人でもなく恋人でもなく同士として不足を補いあうようになるのでした。

 原作が大変良くできた小説で、パニック障害やPMSについて具体的に理解できる作品です。ある意味難病ものとも言えますが、栗田金属の社長(光石研)はじめ仲間が暖かく、悲壮感はあまりありません。それに山添くんが発病後久しぶりに声を出して笑ったように、二人のちょっと噛み合わない会話や行動におかしみを感じるからです。映画では原作の魅力を映像での表現をうまく取り入れています。特に山添くんがアイロン掛けをしている場面や藤沢さんの乱れた髪が印象的です。
 病気があっても子育てをしていても働きやすい栗田金属のような職場がふえてほしいです。
 原作ファンとしては「ボヘミアンラプソディ」のエピソードは見たかったですが、クライマックスをプラネタリウムにしたことは、映像的にもまた宇宙のロマンが加わり良かったかな。

 タバコは、なし。無煙です。山添くんのかつての上司役で渋川清彦が登場する度に「タバコを吸うのではないか」とハラハラしましたが。


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「一月の声に歓びを刻め」

2024-02-10 | 2024映画評


「一月の声に歓びを刻め」 三島有紀子監督 ✗✗✗

 監督自身の体験をモチーフに過去と向き合う人々の悲しみを三か所を舞台にそれぞれ描きました。
 洞爺湖近くでは高齢のマキ(カルーセル麻紀)がお正月に娘一家の里帰りを迎えます。手作りのおせちはあるものの幼くして亡くなった娘の陰が家中に残っていました。一家はそそくさと帰っていきます。八丈島では都会から妊娠した娘が帰省し父親(哀川翔)は戸惑います。父親は交通事故にあった妻の延命治療を拒否したことを今も悔やんでいました。大阪では幼い頃に受けた性暴力が原因で自己肯定感を無くした女性(前田敦子)が元恋人の葬儀に出席し、帰りがけに一人の男と一夜を共にするのでした。

 共通項は海が近くにあること、過去の痛みを持ち続けていることで大変暗い風景が映し出されます。周囲のエンジン音、風の音、都会の雑音などを丁寧に拾っている割には俳優のセリフが聞き取りにくい、テロップが入っても白い風景に白字なので半分読みにくい、ドキュメンタリーでもないのにカメラがブレブレで映画酔する、内容はともかく映画としてもう少し見やすくしてほしいものです。

 タバコは、「手の込んだタバコ宣伝映画」かと思うくらいタバコネタあれこれでした。冒頭でカルーセル麻紀(1942年生)が画面いっぱいにタバコを吸い、哀川翔(1961年生)も父親のタバコを取り上げた子どものタバコを喜んで吸う、さすがに前田は喫煙はしませんでしたがラストでタバコ状のスナックを食べるシーンがありました。
 高齢俳優に喫煙させるのはセクハラ同様大変問題です。本当に映画を愛しているのならスモークハラスメントというハラスメントも考慮して映画を撮ってほしいものです。


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「映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」

2024-02-06 | 2024映画評


15,「映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」 作田ハズム監督 ◯

 人気キャラクター「すみっコぐらし」の映画化3作目です。
 すみっコたちは森の中で不思議な建物を見つけ中に入ります。そこはおもちゃ工場でした。すみっコたちは、シロクマはミシン、ペンギンは検品などそれぞれが得意なことを分担し、ぬいぐるみを完成させます。工場長のクマは大喜びし、食べ物や寝床を提供してくれます。次の日にはぬいぐるみをもっとたくさん作るよう指示され気を良くしたすみっコたちはみんな頑張って作ります。しかし、だんだん要求が過酷になってくるのでした。

 シンプルなタッチの絵でキャラクターが描かれ、声優も一人(本上まなみ)で物語は展開し、あまりコストをかけず仕上げています。それでいて「大量生産」の問題やいらない物は捨ててしまう「断捨離」ブームへのアンチテーゼをほのめかしている何気ない社会派のアニメです。
 大切なものは破れたらツギハギをして大切にしたいものです。
映画愛も垣間見られるラストが良かったです。

タバコは、なし。無煙です。


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「ポトフ 美食家と料理人」

2024-02-05 | 2024映画評


「ポトフ 美食家と料理人」 トラン アン ユン監督 仏 ✗✗

 19世紀の末、美食家と料理人が料理にかけた情熱を描きます。第76回カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞受賞作です。
 フランスの片田舎で美食家のドダン(ブノワ・マジメル)の考える究極のメニューを料理人のウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)は見事に再現しドダンの仲間の紳士たちに振る舞います。ある時噂を聞いた皇太子から特別なメニューをたのまれますが、ウージェニーが倒れてしまうのでした。

 冒頭の料理をする場面が圧巻です。ひとつ言わせて貰えば動いている対象を撮るときにはカメラを動かさないでほしいです。観客は映画酔します。それくらい無駄な言葉掛けのない、キビキビ動く厨房はドラマチックでもありました。
 その後の話はおまけのようなもので、美食もいいけど鍋や食器を片付けるのは誰なのだろうとか、費用は誰が払うのだろうとか、庶民的な疑問が湧きました。美食も一つのファンタジーかもしれません。
 ドダンとウージェニーの関係が新鮮でした。

 タバコは、紳士たちが食後食堂からサロンへ移動すると食後酒とともにパイプや葉巻を吸っていました。タバコを吸っていて微妙な味がわかるのでしょうか? たいしたグルメではないってことかな。


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「あの花の咲く丘で、君とまた出会えたら」

2024-02-04 | 2024映画評


「あの花の咲く丘で、君とまた出会えたら」 成田洋一監督 ◯

 汐見夏衛原作のベストセラー小説を実写映画化しました。
 高校生の百合(福原遥)は進路で母親と揉め、家を飛び出し雨の中防空壕で雨宿りをしていました。うたた寝をして目を覚ますとなんとそこは1945年6月にタイムスリップしていたのです。親切な兵隊彰(水上恒司)に近くの食堂に連れて行かれとりあえず帰るところもなく住み込みで働くことになります。
 その食堂を一人で切り盛りしているツル(松坂慶子)や常連の兵隊たちから特攻隊の基地について聞かされます。彰は百合を妹のように可愛がりますが・・・。

 「泣ける映画」として観客動員数が極めて高い作品です。戦時中の乏しい食料、悲惨な空襲、その中でも人は恋をする、というさまざまな出来事が織り交ぜられ、いわゆるミレニアム世代とかZ世代には新鮮な内容だったかもしれません。現実的にはあの時代に「日本は負ける」など言ったら即逮捕されていただろうし特攻から抜けることを仲間が見逃す、ということはありえなかったでしょう。
 脚本の改良案として、ラストの資料館見学を冒頭に持ってきてそこで見た「(自分と同名の)百合あての手紙」をタイムスリップのきっかけとする、資料館の特攻隊員の写真をもっとセピア色にする、「日本は負ける」の発言後一晩留置場に入れられ顔に痣を作って帰される、特攻を免れた兵隊は熱病になったことを理由とする、とすると少し評論家の評価も上がるかな。
 軍歌を歌う場面がありますが、ひどい音痴の隊員がいて調子っぱずれになり全く勇ましくないところは好感が持てました。
 タバコは、なし。無煙です。


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