失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫) | |
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先日書き込んだ、「超入門失敗の本質」の元になる本である。これは旧日本軍の組織を作戦の失敗から研究している。作戦とは次の7つだ。その一つ一つに総括がついている。
ノモンハン事件、作戦目的があいまいで、中央と現地とのコミュニケーションが有効に機能しなかった。情報に関してもその受容や解釈に独善性が見られ、戦闘では過度に精神主義が誇張された。
ミッドウエー作戦、作戦目的の二重性や部隊編成の複雑性などの要因のほか、日本軍の失敗の重大なポイントになったのは、不測の事態が発生したとき、それに瞬時に有効かつ適切に反応できたか否か、であった。
ガダルカナル作戦、失敗の原因は、情報の貧困と戦力の逐次投入、それに米軍の水陸両用作戦に有効に対処しえなかったからである。日本の陸軍と海軍はバラバラの状態で戦った。
インパール作戦、しなくてもよかった作戦、戦略的合理性を欠いたこの作戦がなぜ実施されるに至ったのか、作戦計画の決定過程に焦点を当て、人間関係を過度に重視する情緒主義や強烈な個性の突出を許容するシステムを明らかにする。
レイテ海戦、日本的精緻を凝らしたきわめて独創的な作戦計画のものとに実施されたが、参加部隊がその任務を十分把握しないまま作戦に突入し、統一指揮不在のもとに作戦は失敗に帰した。レイテの作戦は、いわば自己認識の失敗であった。
沖縄戦、相変わらず作戦目的はあいまいで、米軍の本土上陸上陸を引き延ばすための戦略持久戦か、航空決戦かの間を揺れ動いた。特に注目されるのは、大本営と沖縄の現地軍に見られた認識のズレや意思の不統一であった。
そして、イデオロギーともいうほど、陸軍は「白兵戦」、海軍は「大艦巨砲」にこだわる。作戦目的の共有化・あいまいさや情報・ロジスティックスの軽視などは共通だ。
そして現代の日本的組織にも当てはまるのは、人間関係の濃密さと責任のなさ、マネジメントサイクルの不徹底である。米軍は、作戦の失敗時は、責任を追及し、当事者を更迭する。そしてPDCSのマネジメントサイクルを回し、次の作戦には必ず対策を立ててくる。日本軍は同じ過ちを繰り返す。
この本は、1991年発行ですが、結構いい本です。お奨め!