照る日曇る日第876回
本書にはカナダの若い作家が10数年に亘って書きためた7つの短編がおさめられている。
陸上競技のランナーの勝負に生きる厳しさと孤独を鮮やかに切り取った「ミラクル・マイル」、表題の「煉瓦を運ぶ」の青春の光と影の一瞬の暗転も、まるで良質な映画のエンデイングをみているようにわが瞼に残る。
しかしもっと私の心につき刺さったのは、少年の出会いと唐突なわかれを描いた小品「良い子たち」だった。
主人公の「僕」には3人の兄弟がいるのだが、そこに突然よそものの少年レジーがやって来る。
はじめはなかなか仲間入りできなかったこのちょっとトロい少年は、やがて兄弟にとってなくてはならない5人目の兄弟になるのだが、予想されたとおりある真夜中に突然の別れが訪れる。
あらすじをかいつまんで取り出せば、ただそれだけの短い話で、作者がこれと同じ体験をしたかどうかは知らないが、この小説を本邦の「竹取物語」などのある種の貴種流離譚と見立てることもできそうだ。
私自身もこれに近い体験をしたのだが、感じやすい少年にとっては生涯忘れらない大事件になって、心の隅の小さな傷のようにながく残るのである。
最後に置かれた「三号線」は自動車事故の悲劇を扱っているが、タカタのエアバッグの事故をさきどりしているようで心が痛む。
餓鬼迷走分裂孤立野党陣営共産党だけがなぜだか大人 蝶人