あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

半蔵門の国立劇場で通し狂言「伊賀越道中双六」をみて

2017-03-14 10:49:08 | Weblog
半蔵門の国立劇場で通し狂言「伊賀越道中双六」をみて


蝶人物見遊山記 第234回


2014年に上演した本興行の再演を見物しました。あの豪傑荒木又右衛門の上野伊賀鍵屋の辻の有名な敵討ちをベースにした5幕7場の通し狂言ですが、そのハイライトはもちろん四幕目の「三州岡崎・山田幸兵衛住家の場」です。

前回と同じく中村吉右衛門、中村歌六、中村雀右衛門の愁嘆場が再現されましたが、右隣の女性があまり涙を絞るので興を削がれてしまいました。

考えてみれば、いくら仇討ちに必要な敵の情報を得るためとはいえ、遥々訪ねてきた細君を極寒の屋外に放置したり、蹴りだしたり、あまつさえ愛児を刺殺して投げ出したりする唐木政右衛門(吉右衛門)の態度には、現代人としては大いなる疑問を覚えるのですが、その封建的なところを超越して観客を泣かせるのが演技の力というものなのでしょうが、今回は月曜日の公演の所為かやや隔靴掻痒の感がありました。

今回は舞台に近い席だったために前回よりは台詞が聴き取りやすかったものの、吉右衛門の高音部の細身の発声は依然として耳に通らず、歌六や菊之助にくらべていささかひけをとるようです。

けれども佐々木丹右衛門と奴・助平の両役を演じた中村又五郎は、それらを補って余りある出色の出来でした。三幕目「三州藤川の 裏手竹藪の場」で、漆黒の闇の中、奴・助平と捕り手たちが、スローモーションのパントマイムで繰り広げる捕り物劇は何度見ても楽しいですな。

  バタバタバタバタバタバタ「ツケ打ち」はすぐにツンボになっちまうだろうな 蝶人


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